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集部日記

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2014-06-16 自分の子どもを東大に入れる方法その3

TBSとWOWOWの共同制作で、北海道ではHBCで放送されてきた「MOZU Season1~百舌の叫ぶ夜~」が6月12日に終了しました。放送前から「テレビドラマとは思えない映像だ」と話題になっていて、私も4月10日の放送開始から全10回、すべて見てしまいました。原作者は逢坂剛。私は、彼がデビューのときから得意としていた“スペインもの”の「カディスの赤い星」しか読んだことがありません。それが出たのが1986年。約30年も前です。その後、公安警察シリーズを書いていたとは知りませんでした。

ドラマ自体は結構、荒唐無稽でそれなりに面白かったのですが、印象に残るのはその内容よりも喫煙シーン。あまりにもタバコを吸う場面が多すぎて「このドラマの提供はJTか、それとも制作者はJTのまわし者か」と思えるほど(笑)。確かに放送当初から喫煙シーンの多さは問題視されていました。しかし、テレビや新聞の大手マスコミは、不思議と問題として取り上げませんでした。そんなこともあるのか、あまり批判はあがらなかったように思います。

個人的な感想は「ムダに過剰な喫煙シーンが連続したドラマ」というほか印象がありません。最終回も、雨の屋上でタバコを吸わせてみたり(どう考えてもタバコは濡れて吸えるわけもない)、ひねもすのたりの海辺の軟禁場所でキーマン3人がプカーとやってみたり(結構、昔の話をする重要なシーン)、大団円の居酒屋のシーンでは、主役2人はもちろん、後ろに映るサラリーマン風の客2人にまでタバコを吸わせるという徹底ぶり。ここまでして喫煙シーンを入れ込むということは、制作者側に何らかのメッセージが込められていると思わずにいられません。

これまでドラマや映画の制作者は世の中の禁煙ブームに押され、喫煙シーンそのものを自主規制してきたと思います。そこに対する挑戦というのが一番腑に落ちる理由ですが、それにしてもやりすぎ。正直、真意は測りかねますね。

話題はガラッと変わりますが、今週の「アエラ」6月16日号はすごいです。「学歴再考」を大テーマに32ページの大特集。表紙、裏表紙を含めた総ページ数は80ページ。うち企画広告などが16ページ。表紙を含めた純粋な記事は64ページですから、まさに編集記事の半分を1つの特集で埋めるという潔さ。その総合リードは次の通りです。「東京大学といえば言うまでもなく、ニッポンの最高学府。この東大を頂点とする『学歴』というヒエラルキーに、日本人は長く縛られてきた。ある場面では影響力を強める『学歴』を、自らの意思で飛び越えた人たちがいる――」

「朝日新聞社」には東大卒の社員が多いと聞きます。その子会社で、アエラを出している「朝日新聞出版」にもきっといるでしょう。その彼らがこうした特集を組む。すべて署名記事で、書き手は全員、女性でした。もちろん“東大信仰”のアンチテーゼという意味はあるのでしょうが、結局、東大を取りあげることで“東大礼賛”の意味も含んでしまうと思います。いずれにせよ親に「おたくお子さんは東大と慶應、どっちにでも入れますが、どうしますか」と聞かれたら、やっぱり東大と答える人のほうが多いのではないでしょうか。中身はどうあれ、やはりブランドとしては東大に優るものはありません。

ですから、世の中には子どもを東大に入れようとする親がいるのです。しかし、こればっかりは親の思い通りにはなりません。親の所得が高くて、家庭教師はつけられる、塾も行かせられる、有名私立高校に通わせられる、確かにそういう環境の子どもは東大に入りやすいと思います。でも、入った後、その子たちはどうするのでしょうか。親が導かなければならないのは、その先のことです。

私は学歴とは無縁の世界で生きてきました。公務員だった時代もありますが、中央の官僚か道庁職員でもない限り、仕事と学歴はほとんど関係ないと思います。私の社会人としてのスタートは公務員でした。約6年半勤めて退職し、その後いろいろな職に就きました。もちろんアルバイトです。夜のススキノ、議員秘書、土木作業員、清掃員、警備員、病院厨房、ビルの窓拭き、フリーライター等々、いま考えれば「恐いもの知らずだったなあ」とつくづく思います。夢があるから、なんのためらいもなく次々と職を変えられました。別に嫌になってやめるわけではありません。その場その場で、自分でやれることを懸命にやっていましたから悔いもないし、やめるときは必ず引き止められました。

自分が経験した職場を蔑むわけではありませんが、世間から見れば底辺と思われる業種でしょう。でも、そこを知らずして何が語れるというのでしょう。私の働いたところが、たまたまよかったのかどうかわかりませんが、どの職場にも必ず尊敬できる人がいました。技のすばらしい人、人間味のある人、その仕事に誇りを持っている人……。本当によくわかったのは、社会に出れば学歴などまったく関係がないということです。

私の夢は「ものを書くことで食べていけるようになろう」ということでした。新聞記者は大学を出ていないのでなろうとも思いませんでしたが、30歳を目前に、運よく道内の出版社に入ることができました。営業兼記者です。記者は、人に会って話を聞くのが仕事です。政治家だろうが、官僚だろうが、首長だろうが、社長だろうが、犯罪者だろうが、関係ありません。そこでわかったことも、社会に出れば学歴などまったく関係がないということです。

少なくとも私は、そういうことを経験上理解していますから、子どもに対して「いい大学にいけ」などと言ったことはありません。息子が東大を意識し始めたのは高校1年生のときでした。動機はまったく単純。そのころ息子はなぜかクイズにはまり、日本テレビでやっている「高校生クイズに出る」と心に誓ったようでした。そこで解答している高校生の大半は、東大に行くような連中です。カッコよく見えたのでしょうか。とにかく何かが琴線に触れ、それなら自分も東大に行こうと思ったようです。

やると決めたら、その際の集中力たるやすさまじく、連日、飽きもせずクイズの研究です。高校生クイズ初出場の高校1年では、道内の最終予選まで残りました。高2では念願の全国大会出場を果たしベスト4。テレビに出て「北のダークホース」などと形容され、親としてもなんだか複雑な気持ちでした。高校最後の出場は全国のベスト8で敗退しました。

息子が高校生のとき、親の私がどれほど東大進学を意識していたかというと、まったくしていません。それどころか「東大なんてちっぽけなことを言わず、ハーバードでも行けばいいんじゃないのか」と言っていたくらいですから。それが冗談かというと半分は本気でした。以前にもこの日記で書きましたが、息子の個性からするとなかなか日本の社会では受け入れ難い。それならさっさと世界に出たほうがいいと思っていましたからね。もちろん、妻は大反対(本気にもしていなかったでしょうが)。現役で東大合格は難しいと思っていたのか、息子のパーソナリティーに対する認識は私と同じでも、だからこそもう少し手元に置いておいたほうがいいと思う母親の心情からか「北海道大学にいってほしい」という考え。

当の本人は、最初から東大しか狙っていないようでした。しかも背水の陣です。というのも、息子なりに家の経済状況を考慮したのか、滑り止めも受けません。なにせ塾にも通わせていませんでしたから。私は「悪いが、塾に行かせるほど親に稼ぎはない」と公言していました。子どももそう言われてしまえばどうしようもありません。塾に行かせてほしいとも言いませんでした。

もちろん、無理すれば塾には行かせられたでしょう。でも、受験のためだけの勉強に何の意味があるのでしょうか。私自身、非常に気に入りません。社会に出ても役立つような勉強ならまだしも、ペーパー試験に受かるためだけの勉強ですよ。まったく馬鹿げています。それに受からなければ東大に入れないのですが、そんなことをしなくても受かっている人もいるはずです。受験だけのテクニックなんぞを身につけたところで、社会に出れば何のたしにもならない。そんな姑息な手など使わず、正々堂々とぶつかってこいということです。結果、息子は私のそんな思いにも応えてくれました。

私は、ものごとを何でも自分の都合のいいように考える性格です。息子の東大進学は、父親はハーバード、母親は北大、それなら中間を取って東大にしようと考えたのではないかと思っています。自分でも笑ってしまうくらい脳天気な考え方です(笑)。でも、そもそも世界に出るためには、最低でも自分の国で一番といわれている大学くらい出ていなければ勝負になりません。親の役割はここなんだと思います。東大がすべてではない。その先があるのだということを、繰り返し繰り返し伝えることです。世界の先には宇宙があります。太陽系があります。銀河系があります。逆もまた然り。人体を例に取れば、臓器があり、その先には細胞があり、細胞核があり、DNAがあり、分子があり、原子があり……。そう考えれば東大なんてまったく小さなことです。それくらいの世界観、スケール感を持てればベストですが、子どもは哲学者や宗教家ではありません。理解させる必要はないのですが、何ごとも視野を広く持てるように諭すこと。可能性を否定しないこと。何ごとにも先があるのだということを伝え続けること。そういった意識を持てれば、子どものモチベーションはまったく違うものになってきます。それこそが自分の子どもを東大に入れる方法なのだと思います。

さて、財界さっぽろ7月号は昨日15日に発売になっています。本来であれば14日(土)発売でしたが、本州に降った記録的な雨のため、JRの各線で運休が発生。本州からの書籍の搬送が滞りました。その影響で発売が1日延びましたことをお詫び申し上げます。7月号も話題満載です。いますぐ書店、コンビニへ。(鈴木正紀)