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Interview

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「人を活かし、困難を希望に変える。」掲載号:2019年9月

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昼間一彦 三幸学園理事長

人材を育て社会に送り出す専門学校だからこそ、なおさら人に熱いまなざしを向ける――専門学校大手で高校、大学も運営する三幸学園の昼間一彦理事長に話を聞いた。昼間理事長は函館生まれの道産子。かつては拓銀で働く金融マンでもあった。

大学時代から志していた教育の世界

昼間一彦氏。1956年、函館市生まれ。慶應大学卒業後、79年に北海道拓殖銀行に。大学の同窓で入行同期に丸谷智保セコマ社長がいる。拓銀の破綻後、学校法人・三幸学園に入社し、2013年から理事長を務めている。

三幸学園は専門学校を軸に、通信制高校や大学なども運営。専門学校の在籍生徒数でみると、国内ナンバー2の大手だ。

   ◇    ◇

――社会人としての振り出しは拓銀です。

昼間 初配属は薄野支店です。場所柄、夕方から営業を始めるお取引先が多く、閉店間際がもっとも混み合う支店でした。

営業店での勤務が長かったのですが、銀行が経営破たんした時は東京支店の公金部で働いていました。営業継承日の前月まで在籍していました。

拓銀時代は多くの方にお世話になりました。バンカーとして学んだことが今でも役に立つ場面があります。なにより私の社会人としてのスタートの地ですから感謝をしています。

――三幸学園に入るきっかけは。

昼間 友人の紹介で何度か酒席を共にした税理士さんがいました。拓銀が経営破たんした後のある日、彼から連絡があり、「あなたのようなキャリアの人材を求めている学校法人があります」と。1週間後ぐらいに創業者の鳥居秀光理事長(当時、現・学園長)の面接を受けました。

――展開が早いですね。

昼間 大学時代、不登校のお子さんの家庭教師をして、その体験がきっかけになり、教師を志していました。教員免許を取得するため、母校の中学校で約3週間の実習もしました。

実は銀行員になってからも、ひそかに「生まれ変わったら学校の先生に」と思っていました。

また、ある時期から経営に興味を抱いていて、いずれしっかりとしたオーナー経営者の下で学びたい、とも考えていました。

ですから、お話をいただいた時はまさに千載一遇のチャンスだ、と。面接を受けた時、すぐに入社を希望しました。

――その日に……

昼間 再就職の時、企業に関するデータやらを調べたりするのが一般的かもしれませんが、数字などは一切、見ずに決めました。もっといい判断材料というか、決め手がありましたから。

――なんですか。

昼間 面接の時に、理事長秘書の若い女性がいました。非常にしっかりとした応対をされていて、たまたま理事長からこう聞かれたんです。「彼女はいくつだと思う」と。

銀行員として多くの企業に足を運んだ経験があります。仕事ぶりから考えて社会人3、4年目かなと思い、20代半ばの年齢を言いました。ところが、その年の春に三幸学園の専門学校を卒業した、入社3カ月目と言われてびっくり。質のいい教育をしている学校だと確信を持ちました。

――各地に学校を展開されています。生徒数は。

昼間 専門学校は全国各地に61あり、在籍生徒数は約2万3000人。今年はたまたま新設がなかったのですが、近年は年2校ペースで増やしています。

大学1校2学部、短期大学1校2学科、通信制高校2校26キャンパス、保育園42園の運営もしており、それらを含めると生徒数は4万人を超えています。

――7月にツアー初優勝をした北広島市出身のプロゴルファー・小祝さくらさんは、三幸学園の飛鳥未来高校の卒業生ですね。

昼間 ええ、そうなんです。女子プロゴルファーでは藤田光里さん(札幌市出身)も同じ高校の卒業生です。小祝さんの初優勝はインターネットのニュースで知り、その日のテレビで優勝の瞬間を拝見しました。卒業生が頑張っている姿を見ると、本当にうれしい気持ちになります。

――幅広い分野の人材育成をしています。あらためて三幸学園について教えてください。

昼間 医療事務スタッフの養成が始まりで美容、リスポーツ、保育、ブライダル・観光、調理製菓、栄養、看護、心理学など、分野を広げていきました。学校法人の設立は1985年です。学校開設の当初から一貫して「技能と心の調和」を教育理念として掲げ、技術や知識の習得だけではなく、豊かな人間性を伸ばすことを目標としています。

今後は障がい者の就業を支援するとともに、障がいを誇りと感じられる人材の育成を目指して高等学院事業への参入も視野に入れています。

専門学校のノウハウを生かした大学

――法人名にある“三つの幸せ”はどんな意味なのですか。

昼間 生徒の幸せ、社会の幸せ、学園とここで働く教職員の幸せ、この3つです。そして、この3つの幸せ全てを同時に実現していくことが経営理念です。

――インターネットで調べると、日経ビジネスに掲載される「働きがいのある会社ランキング」で毎年、上位にランクインしているそうですね。

昼間 教育の質を決定するのは、生徒たちと向き合っている人そのもの。教職員がやりがいを持って働いてこそ、未来に生きる生徒たちに必要な教育は何か、私たちにできることは何かを真摯に考え、良い教育が提供できるのです。

2013年には、あらためて足元を見つめ直す取り組みをおこない、ミッションを明確化しました。それが「人を活かし、困難を希望に変える。」です。

何のために私たち三幸学園は存在し、果たすべき責任は何か。それを一人ひとりが自覚するよう心がけています。

グループ企業では介護施設なども運営していますが、どんな仕事にかかわっていても、このミッションを自身の真ん中に置き、日々の判断の軸にして行動をする。それが教職員にとっても、ここで働く意味を再確認することにつながります。

――少子化の流れをどのように受け止めていますか。

昼間 平成の初期の頃、18歳人口はおおよそ200万人。現在は117万人ぐらい。ここ数年の新生児は100万人を割っていますから、高卒者を主な入学者としている専門学校の市場規模は確実に縮みます。

私たちは07年に通信制も含めた東京未来大学を始めました。大学の設立・運営には、教育機関としての総合力を高めるだけでなく、戦略的な狙いもありました。少子化に歯止めがかからない中、学園全体の入学対象の年齢層を分散することです。

実際、東京未来大学通信過程で入学される社会人も多数いらっしゃいます。通信制高校の在籍者、保育園児も増加傾向にあり、その結果、かつては学園への入学者の97%が18歳でしたが、現在は67%になっています。

――大学の開設は大変だったのでは。

昼間 専門学校で培ってきたノウハウと人材を生かし、キャンパスアドバイザーの仕組みを導入しました。

これは担任とは別に、進路や学生生活全般の相談に応じ、学生を卒業までフォローする教員です。実は、大学設置の審議会では当初、この部分はあまり評価されませんでした。

しかし、実際にスタートすると学生たちからの評判がとても高く、東京未来大学の特長になっていると考えています。

ある大学関係者から、こう言われたことがあります。「自分のところでもキャンパスアドバイザー制をやってみたが、難しい。三幸学園だからこそできたのでしょう」と。話を聞きながら、心の中でガッツポーズしました。

また、ともすれば大学の通信課程では、勉強したい人だけすればいいというムードがあります。

――極端に言えば、学生が脱落してもかまわない、という雰囲気ですね。

昼間 しかし、それでいいわけがない。

多くの大学の通信課程が単位を認定する試験を年度末に実施します。考えてみてください。社会人の学生にとって年度末はとても仕事が忙しい時期です。

そこで、大学教職員のみなさんと何度も議論を重ねた末に、学生の事情や利便性を考えて年8回の単位修得試験の機会を設けました。

東京未来大学の学生の単位取得率は約80%、卒業率は約60%と高い水準を維持し続けています。

観光の人材育成を札幌でさらに強化

――海外にも拠点があると聞きました。 

昼間 ベトナムのホーチミンで日本語と美容技術を教えています。日本法人が100%出資する団体としては、初めてベトナム政府から教育ライセンスをいただきました。

ベトナムは若い国で挑戦意欲が旺盛で、若者たちはどんどん独立開業をします。もちろん失敗する人もいますが、成熟し、ある意味、停滞感が漂う日本とはまったく違う。ベトナムの若者と話すと、私自身もとても刺激を受けます。

――先日、ベトナムとカンボジアの技能実習生がこちらの校舎で着物と尺八を体験していました。生徒が着付けを担当し、楽しい雰囲気でした。

昼間 札幌の校舎でも技能実習生の入国後研修のお手伝いをしています。4月から特定技能制度もスタートしましたが、せっかく日本に来たのですから、伝統文化に触れたり、若者同士の交流を通じ、ぜひ日本を好きになって帰国していただきたい。

――札幌での展開について教えてください。

昼間 1988年に医療秘書の専門学校を開校し、その後、美容、スポーツ、鍼灸・柔道整復、保育、ブライダル・観光、調理製菓などの専門学校・学科を設置していきました。現在は通信制高校の札幌キャンパス、認可保育園も含めると9拠点になっています。入学者数は年々増えており、今後は専門学校においては観光分野をさらに強化していく方針です。

――観光は本道の基幹産業の1つです。ホテルもたくさん新設されており、人材を必要としてます。

昼間 野口観光さんなど、多くの大手観光関連企業と連携を深めています。どんな人材が求められているのか、必要なスペックは何か、意見交換を重ね、教育カリキュラムに工夫を加えています。

従来から産学連携や地域連携は大切でしたが、近年、その重要性はますます高まっていると考えています。

技術革新のスピードが速く、それぞれの業界、各地域で大きな変化が起きているからです。社会の新たなニーズは何なのか、兆候をすばやくつかみ、学校運営に反映させ、人と地域社会に貢献をしていきたい。

少子化は市場縮小のベクトルですが、一方、技術革新や大きな変化は、教育機関にとってチャンスなのです。

=ききて/野口晋一=