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2022年

森本光俊・サッポロビール北海道本社代表「お酒はリアルコミュニケーションで有効的なツール」

森本光俊 北海道本社代表兼北海道本部長

 今春、サッポロビールの道内トップが交代した。同社にとって北海道は創業の地。「ふるさとのために、何ができるだろう?」をスローガンに掲げている。北海道本社代表兼北海道本部長に意気込みをうかがった。

 

©財界さっぽろ

 

お酒のある場や価値に惹かれ入社

 

 森本光俊氏は1970年、東京都出身。93年にサッポロビールに入社。2002年から4年間、北海道で勤務。11年に道東支社長として再び道内に赴任。その後、本社の営業統括部長を経て、22年4月、上席執行役員北海道本社代表兼北海道本部長に就任。以下、森本氏との一問一答。

   ◇    ◇   

 ――6年ぶりの北海道勤務になりますね。

 森本 弊社は1876年(明治9年)、ここ札幌に前身の開拓使麦酒醸造所として創業しました。社内で北海道は、ある意味聖地に位置づけられているので、もう一度、北海道で働ける喜びと同時に、気が引き締まる思いと、責任の重大さを感じています。

 北海道は各エリア魅力的ですが、道東支社長を務めていましたので、十勝・帯広、釧路などのことは、東京勤務時にも特に気になっていました。

 実は道内勤務後、東京に6年間いましたが、毎年道内の自治体に「ふるさと納税」をしていました。体は本州でしたが、心はずっと北海道にありました。

 ――サッポロビールを志望した理由を教えていただければ。

 森本 「サッポロ生ビール黒ラベル」が大好き、ということですね。

 大学生のとき、新宿でバーテンダーをやっていました。飲食店で素晴らしいアルバイトの経験を積ませていただき、お酒やお酒のある場や、その価値に惹かれていきました。

 入社後も、飲食店様向けの営業活動を志望し、その念願もかなって、20年近く飲食店様向けに営業をさせていただきました。

 ――これまでで印象深い仕事はありますか。

 森本 ターニングポイントになったと感じているのが、1回目の北海道勤務時です。

 はじめは苫小牧、日高エリアを担当していたのですが、その後、札幌市内の飲食店様の担当になりました。

 開拓部隊といいますか、他社さんの商品を取り扱われている飲食店様だけを担当するという仕事でした。

 過去から当社とお付き合いがある飲食店様は、何らかの理由で「サッポロビールがいいね」と言ってくださります。

 その逆に、サッポロビールを扱っていただけない理由があるはずです。色々お話をしていると、飲食店様の経営理念、経営哲学がわかってきます。

 何を考えて、どういう方向に進んでいきたいのか。それを突き詰めていき、サッポロビールの想いと一致し、お付き合いが始まるケースもありました。

 苦しいこともありましたが、成果が出た時には、その分喜びも大きかったです。お得意先様のことを深く知ることができたのが、いまの仕事でも大いに役立っています。

 ――今回、北海道に来る前は本社の営業統括部長でした。

 森本 全国の営業部署の総合窓口みたいなところでした。営業戦略、予算、社内ルールなど営業に関する1から10までを担当するので、会社全体を把握する良い機会になりました。

 また、監督官庁である国税庁の窓口でもありました。

 さらに、ビール会社5社で構成するビール酒造組合にも携わることがあります。

 サッポロビール一社だけではなく、時には他社さんと協調しながら、業界全体を発展させるのか。この重要さを考える良い経験をさせていただきました。

 

「黒ラベル」の情緒的価値を届ける

 

 ――ビール市場の動向をどう分析していますか。

 森本 やはりコロナの影響が大きいと考えています。飲食店様もこれまでと同じ営業ができていないので、そこの消費量がどうしても下がっています。

 お客様が外で飲まない分、自宅で飲む機会が増えるのであればいいのですが、すべてをカバーできるわけではありません。

 コロナ禍で再認識したことがあります。会食の機会が減り、当たり前だったことが当たり前ではなくなりました。

 お酒は“リアルコミュニケーション”のツールとして非常に有効的だということです。そういったお酒の価値をどのように消費者に感じていただくのか。お酒を通じて自然と笑顔になる。そして元気を出していただけるように、お酒の存在意義を伝えていきたいです。

 ――そうした状況の中、7年連続で「黒ラベル」の缶が前年比増です。

 森本 黒ラベルは弊社でいうと開拓使麦酒醸造所の頃からの、DNAを一番引き継いだ商品です。発売から今年で45年になります。 ここ10年くらい俳優の妻夫木聡さんが出演する「大人エレベーター」シリーズのCMを流させていただいています。

 これまでのような物的価値の「おいしい」「うまい」などを前面に打ち出したCMではありません。妻夫木さんがあこがれの存在のような有名人と向き合うことで、お酒の場の味わいや雰囲気、楽しさを伝えることをコンセプトにしています。

 もともと、「黒ラベル」は“お父さんのビール”のイメージがありましたが、最近では若い世代からの支持率が非常に上がっています。時間はかかりましたが情緒的価値というのが、ようやく浸透してきました。

 

©財界さっぽろ

 

コロナ禍でサワーの素がヒット

 

 ――道内限定商品の「サッポロクラシック」も好調ですね。今年に入りリニューアルしました。

 森本 「サッポロクラシック」の缶は12年連続で売り上げを伸ばしています。本当に北海道の方々に愛していただいていることを実感しています。

 今回のリニューアルは、一部に北海道産の原材料を使用し、より北海道のビールを象徴できる形になってきていると思っています。

 北海道のお土産ランキングでも、上位にあがることがあります。道外のお客様がクラシックを飲みたいと思っていただけることで、観光を盛り上げる一つの材料になる可能性がある商品だと感じています。

 ――ビール以外の商品はいかがでしょうか。

 森本 当社はワイン、焼酎、洋酒などいろいろ手がけておりますが、特徴的なところでいうとRTDです。いわゆる缶チューハイのジャンルです。

 まだまだ市場の伸張度があり、そこに当社も力を入れています。一つは「濃いめのレモンサワー」という商品です。テレビCMもちょっとユニークな内容で、売り上げも伸びています。

 それに合わせて、RTSも販売しています。いわゆるサワーの素となるお酒で、炭酸などで割って飲んでいただきます。ご自宅で、気軽に自分の好きな濃さで飲めることが魅力です。

 最初は500㍉㍑の瓶で発売したのですが、今一番売れているのが1.8㍑のペットボトルです。

 もともと業務用で販売したのですが、予想以上の売れ行きにわれわれも当初は驚きました。

 ――最後に今後の抱負をお聞かせください。

 森本 やはり、北海道の「食」と「観光」が活性化することが大切です。

 そういったことでみんなが元気になったり、笑顔になったりするのだと思っています。

 当社が北海道の食と観光のためにできることを考えていきたいです。

 当社はいま「ふるさとのために、何ができるだろう?」をスローガンを掲げています。

 道民の皆様に支えられ、今日まで歩みを進めてきました。北海道を元気にすることが、当社ができる最大の恩返しになります。

 そうした思いを胸に日々の仕事と向き合っていく覚悟です。

 ――本日はお忙しいところありがとうございました。


……この続きは本誌財界さっぽろ2022年7月号でお楽しみください。
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