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建設業、設備工事業に変革を起こす森鉄工業が支援する未来

「森鉄工業」(本社・札幌市、西山公春社長)は〝特注、特急〟を合言葉に空調ダクトや架台の製作を手掛ける。建設現場の急な設計変更やトラブルに伴う部品製作に、オーダーメイドかつ短納期で応える。製造技術に特化した同社が描く、建設業や設備工事業の課題点と将来像を西山社長に聞いた。

特注、短納期で急なニーズに対応

 1987年の設立以来、空調ダクト・厨房関連機器・架台の〝駆け込み寺〟となっているのが「森鉄工業」だ。

 受注はほぼすべて特注品で、通常2~3週間ほどかかる依頼内容を当日中から2~3日という短い納期で製作する機動力が強みだ。

 ゼネコンなどから工事を受注した施工会社からの依頼で、建設現場での急な設計変更など緊急で製品が必要になった場合や、標準品では対応できない特殊形状の部品など、突発的な需要に対応。工期の遵守や収益向上、残業削減に貢献している。

 これを実現しているのが、長年の技術力と柔軟性だ。幅広い加工技術と豊富な経験で、図面持ち込みでの依頼はもちろん、手書きのイラストなど簡易的な資料からでも詳細な打ち合わせをもとに顧客の希望通りの製品を提供する。

 また、豊富な材料を用意することで在庫切れによる納期遅延を防止。こうした取り組みが迅速な納品につながっている。

 現在はダクト製作が主だが、今後は架台製作事業を拡大していく。

部品工場が現場の効率化を支える未来

 建設工事現場の困りごとに向き合う同社だからこそ考える、建設現場の将来像がある。

 西山公春社長は「現在の設備工事現場では、加工前の部材を現場に持ち込み、切断や溶接といった加工から組み立て、取り付けまでを行っています。しかし、建設業界の人手不足や、建物や設備の大型化といった現状から、今後はさらなる効率化が求められ、変化していくでしょう」と予想する。

 さらに西山社長は「業界全体が変わっていかなければ、いずれ現場が成り立たなくなります。将来的には、当社のような部品製造業者の工場で部材の加工や組み立てまで行い、現場では取り付けるだけという〝プレ加工〟が主流になると考えています。ばらばらで現場に運んで組み立てていた部品を、あらかじめ工場で組み立ててから現場に持っていく方法です」と話す。

 現場の作業量を減らして効率化することで、人手不足への対策や工期短縮、それによる利益率の向上が期待できる。職人が不足する中、技術力の差による品質のばらつきを抑えられるメリットもある。現場で加工する際の騒音や匂いを抑えることもでき、周辺環境への負荷軽減にもなる。

 業界団体関係者は「土木や建築の分野でも、コンクリートのプレキャスト化など、現場製作から工場製作へと移行が進んでいます。省力化や職人不足への対応のほか、天候の影響を受けないといったメリットがあり、今後も進んでいくことが予想されます」と話す。

 こうした予想を踏まえ、同社では新工場への移転を計画する。現在3つある工場を一カ所に集約して生産効率を向上するほか、より大きな製品にも対応できるようになる。

「〝特注、特急〟という強みはそのまま、さらに大型の部品まで生産が可能になります。少量、多品種の一貫生産で顧客のニーズに応えたい。もちろん、将来的には部品の組み立ても可能となります」と西山社長。

西山公春社長
切断機(上)、穴あけ加工機など先端機器を駆使する
顧客からの架台製作の発注図面
手書きの図面にも対応