イエローウィング協同組合が移転拡大。外国人材の活用で道内の人手不足を解消していく

イエローウィング協同組合
専務理事
【左】瀧澤 僚貴
イエローウィング協同組合
監理部長兼TK・ワークス取締役
外国人技能実習監理団体「イエローウィング協同組合」が移転した。同社では技能実習制度や特定技能制度を活用し、建設業界や食品加工業界、介護業界を中心に外国人労働者を斡旋。事業規模の拡大とともに、新たなスタートで道内の人材不足の解消に向かう。今回はキーマンの2人に話を聞いた。
3つの強みを武器に適材適所で斡旋
――「イエローウィング協同組合」の事業内容を教えてください。
門 道内企業に対して、外国人技能実習生と特定技能1号外国人の斡旋を担っています。元々は、グループ会社「TK・ワークス」の人材確保を目的に、2019年にスタートしました。
瀧澤「TK・ワークス」は土木工事全般が主事業です。従業員は87人ですが、このうち27人が外国人労働者です。全体の3割を占めるため、今や外国人労働者は必要不可欠な存在ですね。
――拠点を移転したと伺いました。
門 今年1月に豊平区月寒から厚別区大谷地東に移転しました。人員が増えて手狭になったことと、取引先の多い道央圏への移動のしやすさなどを考慮したことが理由です。
――従業員が増え、事業規模も拡大していますね。
瀧澤 ありがたいことに、たくさんの企業から問い合わせをいただいています。日本は人口減少の時代に入り、労働人口も減少しています。コロナ禍で一旦調整されましたが、外国人労働者に対する需要は右肩上がりを続けています。
――北海道も同じ状況でしょうか。
門 ほとんど同じですが、特に地方ほど人材が不足している傾向があります。当組合では建設業界と食品加工業界、介護業界を3本柱に外国人労働者を斡旋していますが、業界によっては外国人労働者がいないと成り立たない状況になっています。
瀧澤 会社の規模によっても異なり、中小企業ほど人材が不足していると感じています。
――このような現状の中で注力していることは何でしょうか。
門 当組合の存在意義でもある「適材適所」「教育」「的確なサポート」の3つに注力しています。
人材が不足している企業では、欲しい場所に欲しい能力を持った人材を配置したいという大前提があります。そのため、受け入れ企業の細かな要望をヒアリングし、的確な人材をマッチングすることが重要です。
もちろん、日本語でのコミュニケーションが欠かせませんし、業界に関する知識も求められます。そのため、仕事内容に関するサポートも適切に行っています。
瀧澤 スキルもそうですが、建設業界や介護業界などでは、資格がないと仕事が限定されてしまいます。資格取得のサポートも、一気通貫で行えるような体制を整えています。
門 こうした仕事面のサポートに加えて、当組合の強みとも言えるのが生活面でのサポートです。外国人労働者はストーブの使い方や水道栓の落とし方もわかりません。こうした生活の隅々までサポートすることで、安心して働いていただけると思っています。私は大学時代をオーストラリアで過ごし、異国での不便やストレスを感じながら生活していた時期があります。この経験から、ストレスを感じることなく働けるよう徹底したサポートをしています。
労働者が魅力を感じるスキームを構築
――TK・ワークスのグループである強みは?
門 お互いの状況を理解しているので、要望を反映しやすいことです。例えば、ほとんどの企業は外国人労働者に単純労働や肉体労働をさせたいと考えています。しかし、技能実習からの場合、制度上8年間の実習、就労が計算できます。つまり、外国人労働者に高度な教育を行うことで、現場の中軸にまで育成することができます。そうした試みをTK・ワークスで行っています。
瀧澤 大工の世界は棟梁がいて、その下に職人がついているという形ですが、当社にはフィリピン人の棟梁がいます。職人としての彼の能力が高いのはもちろんですが、さらに良いのはフィリピン人の労働者を彼が育ててくれること。外国人労働者が新しい外国人労働者を教えるというスキームが確立されています。
門 こうした事例を取引先企業と共有することで、道内の人材不足解消がより進むとも考えています。
――今後の展望について教えてください。
瀧澤 まずは27年と言われている法改正への対応が必要です。現行の技能実習に代わり、新たな制度として育成就労が新設されますので、スムーズに移行できるようにしたいと考えています。
その中で、今後も外国人労働力の需要は高まることが予想されるので、外国人労働者に来てもらえることが重要です。そのための対策を一つずつ行っていきたいと思っています。
――円安傾向で、外国人労働者からの人気が下がっているとも聞きます。
門 円高時はジャパンドリームと言われていましたが、最近は韓国や台湾人気に押されている傾向もあります。ただ「治安がいい」「就労環境がいい」「人間関係がいい」「街が綺麗」など、日本ならではの魅力がある。こうした環境を整えることも私たちの使命だと感じています。
また現在はベトナムやフィリピン人が多いですが、インドネシアやミャンマー、カンボジア人などの受け入れも増えています。当組合では力仕事が主な建設業界にはウズベキスタン人がふさわしいと考え、5月から外国人労働者の受け入れを開始します。
このようにいろんな人種、年代、性別の外国人労働者が日本に来て、取引先の企業とともに経済活動をする。その中で双方にメリットを感じられる世界観をしっかり作っていくことが、当組合に必要なフューチャープランだと考えています。
(ききて・氏家)