「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > 社長ブログ > 2025年(7)2010年~2014年 「日本はさらなる失われた5年間へ」(3)

長ブログ

このエントリーをはてなブックマークに追加

サスティナビリティ(116)
2025年(7)2010年~2014年 「日本はさらなる失われた5年間へ」(3)
更新日:2011年04月14日

    

 ヴィクトル・ユーゴの「レ・ミゼラブル」は主人公ジャン・バルジャンの悲惨な人生を描いているが、最近ミゼリー指数(悲惨指数)という言葉を耳にする。米国では大統領選挙のたびに登場し、この指数で現職大統領の成果が問われるとのことだ。ミゼリー指数はインフレ率と失業率を足したもので、例えばミゼリー指数が10を超えると現職大統領は国民に悲惨な生活を強いているとみなされる。現在、米国は失業率が8.8%、インフレ率が2%程度なのでミザリー指数は危険域に達しているといえる。従って、オバマ大統領は雇用の確保による失業率低下と、金融引き締めによるインフレの沈静に躍起となっている。最近では所得格差を加えた新ミゼリー指数が登場している。

 さて本ブログは、2010年から2014年を「日本はさらなる失われた5年間」として現在進行中である。今回は“為替を中心とした経済競争力の推移”“社会・経済の動向”に続き、日本に大きく影響をもたらす主要国や地域が2014年までにどのように推移するかを、ミゼリー指数を中心にみていきたい。

 まず米国だが、リーマンショック後の大規模金融緩和とそれに続くQE2(量的金融緩和第2弾)を実施し、国債購入で市場に1兆ドルを超える資金を投入したことで景気は回復した。国家管理となったGMも再建されている。ダウ平均も“リーマン前”に戻り、順調な経済基調になってきている。ただ、資源価格高騰によりガソリン価格が40%も上がるなどインフレ懸念が出てきたので、2011年6月には金融緩和を縮小する出口戦略に舵を切り直すと思われる。そうなると、2%を超える勢いで高まっているインフレ率は下がるものの、一部景気後退により失業率が高まることが懸念される。オバマ大統領は、2012年11月に行われる大統領選挙での再選に向け早々と立起を発表し、ミゼリー指数の低減に躍起となっている。その中心が高速通信網などのインフラ構築や風力発電などのクリーンエネルギー分野であり、これら新規分野での雇用増加を狙っている。ミゼリー指数が10を超えると再選に大きく影響するので今後も、政権を挙げてインフレ抑制と雇用の確保に取り組むだろう。このような観点から、米国の経済は年率2-3%で2014年までは推移すると予想される。ただし、住宅価格の低迷や中東の混乱によるガソリン価格の高騰はリスクとして考慮しておかなければならない。

 問題はユーロ圏である。2010年1月にスペイン・ガジェット通信が発表したミゼリー指数は、まさにミゼリーな結果となっている。ユーロ圏で採用されたミゼリー指数は格付け会社ムーディーズが開発したもので、財政赤字比率と失業率を足している。これによると、悲惨度1位に輝いたのがスペイン(S)で、財政赤字比率10%、失業率20%の合計30%である。以下、4位にアイルランド(I)、5位にギリシャ(G)、12位にポルトガル(P)、15位にイタリア(I)がランクされている。いみじくもPIGS(豚)と呼ばれる国の全てが上位に含まれている。この他に、8位に英国、10位には米国が登場している。
  この調査が発表された後、PIGS各国の財政赤字比率が意図的に低く抑えられていることが判明し、財政破綻が危惧されているのは報道の通りである。現時点で再調査するとPIGS各国が全て10位以内になると思われる。これらの国は観光と農業以外には競争力のある産業は特になく、今までユーロ圏参加の恩恵で息長らえてきたといっても過言ではないだろう。ECB(欧州中央銀行)は7500億ユーロ(90兆円)の基金を創設し、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル各国への金融支援を実施している。しかし、スペイン、イタリアに財政危機が及んだ場合は現在の基金規模ではまかないきれず、一部の国は国家破綻(以前の韓国のようなIMF管理)にならざるを得ないだろう。各国は財政再建に必死に取り組まなければならない。ところが、ポルトガルでは財政再建計画が議会により否決され、首相が辞任する状態になっている。この混乱は簡単に終息には向かわないだろう。2014年までにPIGSが財政破綻に陥る可能性は大きいと見なければならない。となると、財政の豊かなドイツやフランスが最後まで面倒を見るかどうかがユーロ圏存続の分かれ道だ。「なまけもの(PIGS)をいつまで支援するのか」という国民の声に独・仏の政府が耐えられるだろうか。2014年前後が境目の年になると思われる。

 ところで、ミゼリー指数に対し、新ミゼリー指数が登場している。これは、失業率とインフレ率に所得格差(ジニ係数)を加えたもの。ちなみに、ジニ係数は0から1までの指標で、0が全くの公平な所得、1が一人が全ての所得を得ている場合を表している。0.5を超えると富が過度に集中している状態を示している。中国のジニ係数は2007年に0.47であり現在は0.5を大きく上回っている可能性が高い。
新ミゼリー指数を適用すると、中国経済の先行きが不安視されてくる。昨年、上海万博開催中に訪中し、その時の印象を2010年10月、11月の本ブログで報告した。その時の実感からすると、中国の最大の問題は所得格差なのではないか。フォーブスは2011年の世界長者番付を3月10日に発表した。10億ドル(820億円)以上の資産家は世界に1210人いるそうだが、その約1割115人が中国人だった。昨年に比較し51名増である。日本のバブル期にそうであったように、その多くが不動産業である。
北京で100平米の住宅価格は3千万円(内装別)。一般農民が購入するには1千年以上かかるとのことだ。上位中間層の都市生活者であっても、この価格で市内に住宅を取得するのはとても無理な話である。昨年(2010年)末の通貨供給量はGDPの1.8倍。日本のバブル期でも1.2倍であるから、いかに多量の通貨が供給されているかがわかる。それらが不動産市場に向かっているとしたら、日本のバブルや米国のサブプライムローン破綻と同じ道を中国が歩む危険を感じる。
中国共産党第12次5カ年計画(2011-2015)で、省エネ・環境、次世代情報網、バイオ、交通インフラ、新エネルギー、新素材、エコカーの各分野に集中的に取り組み、雇用の拡大と格差是正に取り組むことを宣言している。ただ、技術面の競争力をいかに高めていくか、難難題は多いのではないだろうか。
中国政府は手をこまねいているわけではない。昨年後半以降4度にわたって人民元の通貨切り上げをおこなっている。しかし、その効果は浸透していない。インフレ率は2005年の3%程度から現在(2011年3月)は5%程度まで上昇。農産物と資源価格、さらに賃金の上昇でインフレは当分収まる見通しはない。先進国のエンゲル係数が10-20%に対し中国は30-40%であり、食料品の高騰は一般国民に重くのしかかり、悲惨指数をさらに高めることになる。賃金面で言えば、特に中国を拠点とする海外企業の賃金は20%を超えて上昇しており、南アジア各国と比べた価格競争力を削ぐことになっている。“世界の工場”の地位も危うくなってきている。
経済面ではバブル崩壊と製造業の競争力低下、人民元高による輸出高減少による貿易収支の悪化という2つの危機に直面することになるだろう。社会・政治面では所得格差に端を発した民主化運動の動きが先鋭化していく可能性がある。2012年秋には習近平が共産党総書記・国家主席になる予定だが、どちらかというと江沢民の流れを継ぐ鷹派との印象がある。就任後の2012年-2014年は豪腕で政権を運営していくだろうが、その間に第12次5カ年計画が頓挫するようだと社会不安が浮かび上がってくる可能性が高い。日本経済は中国の需要に頼っている面があるので、大きな事件が起こらず中間層の生活が向上していくことに期待したい。

 日本を追撃している韓国は、失業率が3.6%とOECD各国の中で最も低いと評価されている。しかしながら聯合ニュースによると、実質的な失業率は12.6%で9%もの差があるということで驚かされた。失業者の認定基準に他国と大きな違いがあるせいだろうが、いかにもという思いだ。今回の東日本大震災をチャンスととらえ、日本が優位な分野に食い込もうとする雰囲気も垣間見られる。韓国では現在、食料品や燃料高騰によるインフレが進んでいる。失業率が実質二桁を超えているとしたならば、ミゼリー係数も10数パーセントに達しているのではないだろうか。今後、ウォン高圧力が強くなった場合、輸出製品の国際競争力低下も予測され、今までのようにはいかないのではないだろうか。

 2010年~2014年の間、日本に大きく影響をもたらす主要国や地域の経済は、全体として問題を抱えながらも大きくは落ち込むことなく推移すると思われる。