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サスティナビリティ(115)
2025年(6)2010年~2014年 「日本はさらなる失われた5年間へ」(2)
更新日:2011年04月01日

    

 東日本大震災から半月以上が経ち、復旧作業が最大限の努力で行われている。被災された方々の苦難の生活、懸命に被災地の復旧作業にたずさわっている消防・警察・自衛隊・役場職員・医師・看護師など現場で努力されている方々の映像を見るたび、胸に込み上げてくる。福島第一原子力発電所では最悪の環境の中、決死の覚悟で作業員が放射線除去作業を行っている。頭が下がる思いだ。各位の努力が早急に実を結ぶことを願っている。
 震災発生以来、米国の知人から何通ものメールをいただいた。「おまえは大丈夫か。家族に被害は及んでいないか。我々全てが日本の皆さんのご無事と震災から日本が一日も早く立ち上がることを祈っています(プレイ・フォー・ジャパン)」と書かれていた。世界中の人が震災の惨状を写すテレビに釘付けになり、災害が日本のほとんどの地域に及んでいるという印象を持っているのだろう。「プレイ・フォー・ジャパン」のメッセージはインターネットを通しても多数送られており、その中で、日本人の我慢強さ、規律の高さ、真面目さ、互助・共助の精神、そして危機にあたっての祖国愛に驚嘆と賞賛が寄せられている。

http://www.youtube.com/watch?v=IxUsgXCaVtc(http://www.youtube.com/watch?v=IxUsgXCaVtc)

http://prayforjapan.jp/message/(http://prayforjapan.jp/message/)

 本連載「2025年」は3.11前に構想し書き始めたが、この度の震災も考慮のうえ、まず2010年から14年の5年間を考えてみたい。前回は日本企業の競争力を為替面からみてみたが、今回は社会・政治面である。
3.11東日本大震災の影響を、まず短期的(11年中)にみてみる。被災地の経済活動の停止、原発事故による心理的影響、電力不足で夏場(7月から9月)の生産活動の落ち込み、海外での放射線汚染警戒による食品を中心とした輸出減少があげられる。経済は冷え込まざるを得ないだろう。中期(11年後半から12年)には、住宅・工場・道路・鉄道・橋梁・港湾復旧の需要が出てくると考えられ、投資規模も大きなものとなるだろう。長期的(13年から15年)にみれば、日本経済再生へ向けて企業活動は活発化すると思われる。
 今回の震災で浮かび上がってきたのが、日本の代表的製造業が採用しているサプライチェーンであり、部品・原材料を適時に製造業に提供している中小企業の存在である。これら多くの企業が生産する精巧な部品が「ものづくり大国」日本を支えており、円高の中でも必死に国際競争力を維持している。東北・北関東には大手製造業に10%近くの部品を提供している企業が多く、今回の大震災はサプライチェーンに大きな打撃を与えた。ただ、その回復は想定を大きく上回るスピードである。被災に遭いながら懸命に生産再開に取り組んでいる工場現場の方々に、日本の製造業の底力を感じないわけにはいかない。復興需要と併せて、日本経済の立ち直りは経済面からは意外と早いのではないかと思う。福島原発の炉心融溶危機と放射線被害問題も、厳しい環境の中で昼夜分かたず取り組んでいる現場の方々の努力で、解決に向かうものと期待したい。現場経験を積んだ人達がこんなにがんばっているのだから。
 一方、現場から遊離した上位層のもたつきぶりは目に余るものがある。肝心の東京電力の社長は入院(逃避)してしまい、政治主導を掲げる菅首相は涙ぐむか怒鳴ることしかしていないと映る。
 新聞では最近、関東震災後に復興庁を設立し、陣頭指揮した後藤新平が登場する機会が多くなっている。報道によると、震災後に「被害は大きかったが、理想的な都市を建設するには絶好の機会」と言ったという。大東亜戦争で焼け野原になった日本で首相になった石橋湛山は「前途は洋々たり」と話したと聞く。もちろん、被害の大きさや被災者の苦しみを胸に秘めながらだろうが、今回の大震災でも一国の首相として毅然とした態度で難局に立ち向かってもらいたい。また、経済界(競争のない企業を除いて)のトップは、一日も早い企業復帰に向け、率先して取り組んでいる姿が映し出されている。

 東日本大震災による社会・政治への影響をまとめると以下のようになるのではないだろうか。
1:解散総選挙は遠のき、引き続き菅政権が日本の政治を続行することになる
2:このような時こそ挙国一致内閣が必要だが、実現することはないだろう。政治はさらに混迷の度合い深める可能性がある
3:企業所得税の5%削減による国際競争力の一部底上げは当分の間見送られる
4:税制と社会保障の一体改革も、近いうちに取り組まれることはないだろう
5:EPAに関連し、大規模化を含む農業改革も大きく遅れるだろう。さらに輸出関税の軽減化は遠のかざるを得ない
6:原発の見直しにより天然ガスを含む火力発電が増え、CO2削減の機運が停滞するだろう
7:大震災と時を同じくして発生している北アフリカや中東の内戦や、新興国の需要急増で原油価格が高騰。震災復興に向けた取り組みの足かせになりうる
8:復興基金として国債が大量に発行された場合、日本国の債務はさらに跳ね上がるのではないか。同時にインフレ懸念が想起される
9:計画停電により、夏場は関東圏企業の生産性が落ち込む
10:東北・北関東太平洋地域の田畑が塩害。また同地域の太平洋漁場が放射能汚染の風評にさらされ、食料品価格の高騰が懸念される

 大震災がもたらすと思われる負の面をざっと取り上げた。しかし、一方で再建に向けて取り組める明るい分野が多くあることを認識しておくべきだ。

1:日本は世界最大の債権国で、300兆円に近い対外純資産を有している。その活用は再建に有効となるだろう。また積極的に活用すべきだ
2:同じく、企業の手元資金は64兆円に回復しており、再生資金は潤沢にある
3:冷静に対処し、秩序を守り、懸命に復旧に取り組んでいる日本の姿に世界が共鳴しており、日本への信頼度が高まっている
4:今まで閉塞感にあった10代から30代の若者が、インターネットで世界からの声援を受ける中、元気を取り戻している
5:企業の復興に向けたスピードは速く、競争力を回復しつつある
6:市場も日本復興に期待感を寄せており、日本株も回復傾向にある
7:数ヶ月後に開始されると思われる住宅、インフラの復興に20兆円を超える財源が投入される見込みで、民間復旧投資と併せ膨大な資金が投入される
8:原発から再生可能エネルギーへの転換が進み、洋上風力発電、大規模太陽光発電、地熱発電などの新規産業が急成長し雇用を増大させる
9:夏時間の採用、休暇の長期化で首都圏から地方への長期滞在が増える
10:政治・官僚組織・大手独占企業の実態が国民の目につまびらかになり、何が問題なのかがはっきりした。今後、国民の評価・選択はより適切なものになるだろう

 「がんばって下さい」という言葉は、被災者の心の負担を増す場合があり注意しなければならない。今まで日本は「がんばりすぎた」のではないだろうか。焼け野原からGDP世界第2位になり、それを維持しようと懸命になりすぎたのではないだろうか。中国にその地位を譲ったのを機会に、別の道を探す必要がある。それは、安心・安全で他人に対する思いやりがあり、文化面で優れた何かを持ち、信頼と尊敬の念で相手と接する社会を作り上げることではないだろうか。また、海外から寄せられた励ましから友情のつながりが始まるだろう。芸術面やアニメの世界で日本はすでに世界から高い評価を得ている。

 本稿では2010年~14年を「日本はさらなる失われた5年間」と題している。経済面では年率1%程度の成長で引き続き「失われた時期」が続くだろう。一方、社会面では新たな価値が生まれる5年間ではないかと思う。そのためにも政治が的確な方向性を示し、一体となって取り組む必要がある。国民は大丈夫だ。後は政治だ。