"社長そのものが最高のコンテンツ"累計再生2.5億回突破の実力に迫る
事業開始からわずか2年でSNSの累計再生回数2.5億回を突破。中小企業の埋もれた魅力を、独自の企画力と高度な編集技術で発信し、次々とヒットコンテンツを生み出してきた「ASIR」(本社・札幌市、佐々木海征社長)。企画から運用までをすべて内製化し、AIも活用した制作体制で、北海道のSNSマーケティングに新たな潮流を生み出している。
成果にこだわる動画戦略で企業価値を最大化
2020年創業。札幌市白石区に本社を構える「ASIR(アシリ) 」は、SNSを軸に企業の採用・集客・ブランディングを支援するいわば〝SNSの総合商社〟として注目を集めている。「SNSで人の心を動かす動画制作」を合言葉に、戦略設計から企画・撮影・編集・運用までをワンストップで手掛けている。
事業開始からわずか2年で、手掛けた動画の累計再生回数は2・5億回を突破。現在は40社以上のSNS運用を代行し、年間1000本を超えるコンテンツを制作するなど、道内随一の実績を築いている。
企業や個人のSNS運用を代行する会社は増加傾向にあるが、自社のメディアを伸ばせていないケースは少なくない。
同社がこだわっているのは〝作って終わり〟ではなく〝成果を出す〟こと。
多くの企業がSNSで結果を出せない理由は「企業が伝えたいこと」と「視聴者が見たいこと」がズレているから――。
チーム全員がその課題に向き合い、視聴者心理を徹底的に分析。最適な構成とストーリーを設計し、単なる商品紹介にとどまらず、開発の裏側や社員の日常など、〝人〟と〝物語〟を通じて、企業の魅力を引き出している。
制作現場では、AIや外部リソースを活用し、テロップやカットなどの単純作業を効率化。クリエイターが構成・戦略・デザインといったクリエイティブ業務に専念でき、高精度で〝バズる〟コンテンツを生み出す分業体制を築いている。正社員比率は業界でも高い70%。企画から編集、運用まですべてを内製化し、ノウハウを社内に蓄積することで安定したクオリティを維持している。
若手スタッフの自由な発想と経験豊富なメンバーの確かな技術。その両輪が噛み合うことで、同社は独自の表現力とスピード感を実現している。地場企業ならではの「撮影コストの低さ」「顧客との距離の近さ」「柔軟な対応力」も武器に、AI活用・内製化・地方優位性の3要素を掛け合わせ、都市圏に負けない品質とコストパフォーマンスを両立させている。
「短期間のバズよりも、継続的な発信でブランドを育てたい」――。同社のメンバーはそう語る。企業の〝想い〟を成果へとつなげる同社は、「持続可能な発信力」を軸に、地域発のSNSマーケティングをけん引している。
自社メディア「社長ついていってもイイですか」が好調
同社の実力を象徴するのが、自社ユーチューブチャンネル「社長ついていってもイイですか」だ。「地方にも、まだ知られていない魅力的でイケてる企業がたくさんある」という社員の声から生まれたこの企画は、経営者の挑戦や挫折、人生観をリアルに描いた内容が視聴者の共感を呼び、大きな話題を呼んでいる。
公開当初は「無名な社長の動画が伸びるのか」と懸念されたが、1本目の動画はいきなり56万回再生を突破。最近の動画では公開から3週間で61万回再生を記録している。
動画出演を機に、求人応募や商談が増える企業も多く、SNS発信が経営成果へ直結するケースも珍しくない。
「有名でなくても〝キャラクター〟と〝ストーリー〟があれば見てくれる。社長そのものが最高のコンテンツ」――この考えのもと、タッフたちは企画・撮影・編集に一体となって挑み続けている。
また、同社では同一地域・同業種の案件を複数受けない〝1業種1社限定〟のパートナー戦略を採用。クライアントの独自性を守りつつ、安心して発信を任せられる体制を整えている点も信頼を集める理由だ。
新オフィス移転と制度改革で次のステージへ
同社は今年8月に本社を移転。撮影・編集・営業を一体化した新拠点を整備し、部門間の連携を強化した。
創業から5年、量と実績を積み重ねてきた同社は、次のフェーズとして〝質の追求〟をテーマに掲げている。
制作体制を抜本的に見直し、これまで属人的だったスキルを全社で共有するなど体系化。高度スキルの標準化による再現性の高いプロセスを構築している。
さらに、AIの進化が映像制作の在り方を変えつつある今、同社は「AIでしか生み出せない効率性」と「人にしか作れない感性」を融合させることで、確かな勝ち筋を見出している。
労働環境の整備にも注力し、年間休日133日を確保。教育制度や評価体制の充実を通じて、一人ひとりの成長を後押ししている。
現在、道外からの依頼も増加しており、全国に存在感を示しつつある。
札幌から全国へ。同社は地方企業ならではの柔軟性とスピード感を武器に、「北海道から新しい発信文化をつくる」というミッションに向けて歩みを進めている。
目標はSNSを使って企業の価値を最大化すること。動画は単なる宣伝手段ではなく、企業文化や人の思いを伝えるメディア。SNSは次世代の経営インフラと言えるだろう。今後、企業の発信力がますます問われる時代。同社の挑戦は、まだ始まったばかりだ。