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サスティナビリティ(128)
2025年(19)2015年~2019年「世界的経済混迷の5年間」(8):北海道編-2
更新日:2011年10月14日

    

 久しぶりにさわやかで感銘を受けたテレビ番組だった。9月25日に放映されたNHKスペシャル「不思議な森 命の物語」。宮崎県椎葉村、縄文時代以来続けられている焼き畑農業を守る87才のクニ子おばばの物語だ。
おばばは山間地を30ほどに分け、毎年場所を変えながら焼き畑をおこなう。延焼しないように、前もって雲の流れで風向きを見極め、山の神に祈って火をつける。火は小高い山の上から順次下に燃え広がり、草木は見事に焼き尽くされる。焼け残った灰は貴重な肥料となり、害虫は駆除され、地中に潜ったミミズなどの益虫は土を食べ、それを糞にして豊かな土壌をつくる。数日経って蒔いたそばの種は冬前に実り、おばばの食卓に載る。翌年からはヒエや豆など様々な作物を植えるが、4年経つと畑を森に返す。森はきのこや山菜などの恵みを毎年もたらすとともに、木がすくすくと成長している。
30年で一巡すると、おばばは木の幹の一部を削り、それを口にする。「うん、これは甘い元気な木だ」30年で成長した木は伐採されるが、しばらくすると切り株から青々とした芽が吹き出し森の循環が始まる。みずみずしいうちに伐採し、木の持つ生命力を次につなげようとするものだ。

 さて、”風”に続いて北海道の資源”林”(森林)であるが、2015年から2019年にどのようになっているのかを見てみよう。戦後植林された木々は豊かな森林となって、伐採(間伐)されるのを待っている。
日本の国土の67%が森林で、これは森の国と言われるドイツの40%を大幅に上回っている。世界屈指の森林王国と言っていいだろう。北海道は特に森林資源が豊かで、国内の4分の1の森林面積を誇っている。それにもかかわらず、現在国内で利用される木材の75%は安価な輸入材に依存しており、膨大なウッドマイレージ(木材の輸入に関わる燃料費)を払って北米や東南アジア諸国・ロシアから輸入している。
このような事態を変えるべく、政府は2009年12月、木材の自給率を2020年までに50%に引き上げると発表した。かけ声倒れになる懸念もあるが、もし自給率50%に向けた政策が正しく遂行されたならば、まさに2015年から2019年にかけて日本の林業再興の動きが急速に進展する可能性がある。特に北海道では林道の建設、積出港の整備を含め、林業がかつてのような主要産業になる期待が持てる。
 それでは50%の自給が可能なのだろうか。ここは、クニ子おばばの意気に感じて前向きに考えてみよう。
まず、森林が生活者にもたらす恵みについて取り上げると、第1には言うまでもなく木材の生産がある。現在、先にも触れたように木材の75%は安価な輸入材に依存している。果たして今後とも海外の木材は持続的に入手できるのだろうか。輸入が困難になるであろういくつかの要素を挙げてみる。
・ロシアは輸出木材に対し90%の関税をかけるとの声明を出している。
・南洋材については、地球温暖化の観点から伐採が世界的に非難の対象になっている。
・中国では森林資源の枯渇が懸念されているが、一方において旺盛な内需で木材を含む世界の資源を買いあさっている。
・アマゾンの熱帯雨林は、乱伐と火災により森林面積が大幅な縮小傾向にある
・自動車に比べ船舶の省エネ化は進んでおらず、化石燃料の高騰で多大なウッドマイレージは輸入木材価格を押し上げる。
・北米では、森林の持つCO2吸収効果が重要視されつつあり、輸出に対する抵抗が芽生えつつある。
このような要因が重なり、輸入木材の入手は2015年から2019年には限定すると予想される。そうなってくると、国産(道産)木材の利用が促進されることになる。30~40年を経て伐採樹齢に達した木々がようやく間伐され、次世代の森林となる若木のために太陽光を充分に受けられる空間をもたらされることになるだろう。

第2には、森林の持つCO2吸収力である。2012年には京都議定書の第一次期間が終了する。この期間に日本は1990年比6%の削減を国際的に公約しているが、以前にも何度か触れたように、その3分の2は森林吸収によるものだ。
2020年に25%(2050年に80%)のCO2排出を国際的に表明した鳩山政府(当時)の心積もりの中には、原子力発電の新規稼働と発電効率向上があったのではないだろうか。しかし、新規原発稼働の見通しは暗く、その上、稼働年数が長期化している原発の廃炉が現実味を帯びてきている。そうすると、CO2の削減は再生可能エネルギーへの転換、化石燃料の大幅削減、そして森林吸収に多くを期待することになるだろう。間伐により森林が整備され、CO2吸収力が高まることで国際機関が日本の削減目標に占める森林吸収枠を認める可能性は高い。
森林整備は海外から多額のCO2排出権を購入したり、CDM(クリーン開発メカニズム)で海外の環境事業に投資するよりもはるかに効果的と思われる。さらに、環境省がすすめるJ-VER(オフセット・クレジット)で認定されれば、森林整備で削減されたCO2はカーボン・オフセットとして認定される。最近では、大手ビールメーカーがこの制度を利用し、ビールを飲むたびにその一部を道内の森林整備に資金支援するとの発表があった。積丹町ではJTと森林保全協定を結び、間伐などの森林整備が始められており、今後10年間続くとのことだ。このような、民間企業の支援による森林整備も2015年から2019年にかけて実績を積み上げていくことだろう。

第3には、バイオマスの多様な活用が挙げられる。間伐された木材は、すでにCO2を吸収していることから、燃やしても排出したとは見なされない(カーボン・ニュートラル)。したがって、火力発電所やペレット・ストーブなどの燃料として使用すると、輸入化石燃料の代替となるだけではなく、CO2排出の削減効果も期待される。日本政府は「バイオマス・ニッポン総合戦略(2006年改訂)」を打ち出し、2030年までに600万キロリットルのエタノールをバイオマスから精製することを目標にしている。原子力発電所の新増設が困難になり期限を越えた原発は今後廃炉になる見通しであり、その上化石燃料の高騰が続くと見られており、政府もバイオマス由来の燃料の増産に本腰を入れざるを得ないだろう。
2015年から2019年、森林王国北海道には様々な関連企業が生まれ、林業が復興するのではないだろうか。

87才のクニ子おばばは宮崎県椎葉村で縄文時代以来の焼き畑農業を守ってきているが、日本の森林と豊かな自然を持続させる新たな取り組みが北海道で始まるのではないだろうか。