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サスティナビリティ(124)
2025年(15)2015年~2019年「世界的経済混迷の5年間」(4):海外編-3
更新日:2011年08月14日

    

 車内の何人かの人が「離れろ!」「逃げろ!」と大きなジェスチャーで私にサインを送ってきた。スペイン・バルセロナの地下鉄に乗っていた時のことである。近くにいた子供連れの母親が私に静かに近づいてくる。周りの気配に気がついたのかその親子は次の駅で降りた。聞くとジプシーの親子スリだったらしい。私には何の被害もなかった。同じジプシーでも濃艶なカルメンとは大違いである(その場合でも、私から近づくことはなかったろうが)。

以前「愉快なスペインの方々と」というテーマで本ブログに紹介したが、スペインにも3度訪れており様々な分野の人達と親交がある。18世紀には世界の覇権を握っていた帝国で、住んでいる方々も快活で仕事熱心な国民性を持っている。ヨーロッパ各国の中でも勤務時間は最も長いそうである。そのスペインが現在苦境の中にあり、PIGs(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ)のsが大文字のS(スペイン)になるのではないかと心配されている。最大の問題は失業率で、2011年3月で21.2%にまで高まり、人口4600万人の内、490万人が職を求めている。
かつては良質の鉱山が各地にあり資源に恵まれていたがそれらも枯渇しつつあり、農業(ワインも含め)と観光が主要産業になっている。今スペインの大きな問題は移民の急増で、2000年に92万人であった外国人が522万人にも達する勢いだ。地中海を隔てた対岸の北アフリカから難民が次々と押し寄せている。チュニジアに端を発した民主革命(ジャスミン革命)は一部を除き独裁政権を破綻させたが、いまだに安定的な政治は行われていない。そもそも混乱の元となったのが食料品の高騰であり、アフリカの人口の急増と頻発する干ばつは収まっていない。2015年には大量の難民が地中海を越えて、スペイン、ポルトガル、ギリシャそしてイタリアに押し寄せてくることになるだろう。これらの国々こそ、現在国の財政破綻が危惧されている地域だ。国債の暴落に加え、食料難民・環境難民問題が南欧諸国をじわじわと追い詰めている。イタリアも同じ状況で、2011年8月に入ってからの世界的な株価暴落とソブリンリスク(国家破綻懸念)の主役になってしまった。

前回のブログで取り上げた中国高速列車事故と時を同じくして、財政破綻の危機に瀕しているギリシャへの援策が決定したと報道された。

・一時的に破綻はまぬがれたものの、この支援策でギリシャは立ち直るのだろうか。
・ポルトガルへの支援策は効果が上がっているのだろうか。
・懸念されるイタリアやスペインへの波及は止められるのだろうか。
・2015年~2019年には安定したEU経済圏が実現できているのだろうか。

これらの疑問に対し、英国のフィナンシャルタイムスは否定的な見解を示している。
ギリシャの失業率は15.8%で、特に若者は40%が職に就けていない。失業者が増大しているため失業保険給付額が膨らみ続け、実際の歳出は増えざるを得ない状態だ。民間部門は身を切って雇用を抑えているが、公務員は誰も解雇されず高い給与をもらい続けている。
議員には全員公用車が与えられ、大学生は今も全員無料で大学教育を受けている。(英国では年間115万円の授業料を払わなければならず、学生達が抗議のデモを繰り返している。)ギリシャの政治は腐敗し機能不全に陥っている。コネのある人達に都合が良く、正直者が馬鹿をみる。フィナンシャルタイムス記者は憤まんやるかたない思いで記事を書いている。

 8月8日、ECB(欧州中央銀行)は最悪の事態を回避するためスペインとイタリアの国債を大量購入した。購入額は10億ユーロとも30億ユーロとも言われている。円にすると最大で3,300億円だ。ECBの金庫は今やジャンク債の山になっている。果たしてECBの資金はいつまで持つのだろうか。常識的に考えると、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドは国家破綻状態。やがてスペイン、イタリアも同じ状態になるだろう。これらの国のジャンク債を購入しているドイツ、フランスを始めとした多くの銀行は、やがて多額の不良債権で経営危機に瀕することになる。

 スペイン、イタリアを含めた「PIIGS」各国はIMF(世界銀行)/ECB(欧州中央銀行)管理の下、年金受給給開始年齢の引き上げ、消費税の大幅引き上げ、公務員の給与大幅引き下げなどの超緊縮財政が強いられる。その上に、北アフリカからの難民の増加や食料品や資源価格の高騰が襲いかかる。暴動が起きかねない状況に陥る懸念が高まる。

前回のブログで、6つの要因が直接・間接的に今後の変化に強く影響を与えると指摘した。
その6番目に「真面目に働き、技術革新に取り組み、産業をもり立てる国民がいるかどうか」を取り上げたが、残念ながらPIIGS各国はこの項目にふさわしいとは思えない。ドイツや北欧の各国で、右派の政党が勢いを増しており、「なんで真面目に働かない国民を我々が苦労して助けなければならないのか」という声が高まってきている。

ユーロ全体が重苦しい疲弊感に包まれ、ついにユーロ体制が崩壊することになるだろう。その時期は、2014年までに到来すると見なければならない。そして、2015年から本格的な世界経済混迷の5年間に入ることになる。