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サスティナビリティ(59)
「風・林・水・菜」-5林の巻-2
更新日:2009年06月30日

    

 日本は世界有数の森林国だが、木材の自給率は20%で80%を輸入に頼っている。安価な輸入材に押され、日本の林業は苦戦を強いられている。林業の収益は悪化し、林業従事者は減少し、また農業と同じく従事者は高齢化している。近年は資源価格の急騰で国産材もわずかながらも盛り返したが、昨年後半からの新規住宅建築低迷で現在は再び厳しい経営環境に戻っている。長期間にわたる森林経営の停滞で間伐も進まず、したがって植林も広がっていない。一方において、樹齢40年以上の木は豊富にあり伐採を待っている。「木を切るのは罪悪である」かのような風評もあるが、樹齢60年を超えるとCO2吸収も弱まり、苗木を植える場所を制約し、さらには木々の呼吸や枯死木の分解でCO2を発生するようになる。日本の(北海道の)木を切って、使って、植えておかないと次世代に森林資源を残せなくなってしまう。
 しかし、日本(北海道)の林業の今後に展望はないのだろうか。私は、以下の理由によって林業の再生は可能であり、また可能にしなければならないと思う。
 第1には、これまでのように輸入材を安く入手出来るのだろうかという点である。前回記したように、世界の森林資源は乱伐により大きく減少している。それに地球温暖化が拍車をかけている。熱帯雨林地区の天候異変や害虫による森林破壊、オーストラリアの干ばつによる被害、ロシアの山火事による森林減少等が、その規模を大きくしていくと見られている。また、各国とも、減少する森林資源を守るために、輸出の規制や関税の賦課を開始しつつある。中国は国内の経済成長に対応すべく輸出を抑える方向であり、ロシアは関税を6%に高める動きである。価格の問題どころか入手さえ困難になることも予想される。
 第2の理由として、ウッドマイレージ(海外から輸入される木材の体積に輸送距離を乗じたもので、木材移動に使われるエネルギー量を表す単位)である。日本の木材輸入量は米国に次いで2位だが、ウッドマイレージでは1位の米国に比べても4.5倍になる。輸送過程で350万トンのCO2を排出している。現在、海上輸送中に発生するCO2は国内排出として計算されていないが、今後ともそうである保証はなく、海外からごうごうたる非難が起きる可能性もある。
 第3の理由は、林業にとって地球温暖化対策が大きなプラス要因になると思われる点である。国や企業から多額の温暖化対策資金を集めれる可能性を秘めている。麻生首相は日本の温暖化ガス排出削減中期目標を2005年対比15%としたが、予想通りではあるが新興国、開発途上国ばかりでなく欧州各国からも失望の声があがった。さらなる削減には“真水”(工場、オフィス、家庭での削減)のほかに、CDM(海外での環境改善事業による排出権取得)や森林吸収が俎上(そじょう)に上がってくるだろう。特に、国内でのCO2森林吸収が鍵を握っていると思われる。(社)日本林業経営者協会は最近、森林整備事業者(森林法に基づいた整備をしている)に対し、CO2吸収の認定書を発行する制度を開始した。この制度は環境省のオフセットクレジット制度(J-VER)に基づいている。本制度で認められた認定料はCO2 1トン当たり1000円(欧州排出権市場野半値)で、これを社会貢献運動と連動し、企業や団体に購入してもらう。森林のCO2吸収が林業経営者にとって、新たな収入源になる可能性が高い。音楽家の坂本龍一さんは、下川町など道内4町と森づくり連携協定を締結した。環境省が推進するJ-VERの制度を利用し、企業や個人から資金を集め森林整備に活用しようとするものだ。資金を提供した企業や個人には認定書がわたされる。このような動きが広がりを見せてくると期待される。
 第4の理由としては、バイオマスのさらなる活用である。間伐された木は木材として市場に流通されるが、その枝や森林整備の過程で刈った下枝や下草(ツルや雑草)は、貴重なセルロース系バイオマス資源として利用されるだろう。今後の技術進化により、バイオマス・ペレットやエタノールはより安価となり、市場で受け入れられるようになるに違いない。
 第5の理由としては、道内の中心樹木であるカラマツの市場性である。カラマツは従来、建築資材用としてよりも輸送資材(パレットなど)として用いられ、その価格は低く抑えられていた。しかし、樹齢を経るに従って建築用に適合するようになっている。厳寒の中で少しずつ生育するために樹齢を重ねると年輪が密で、堅く曲がりにくい特徴を持つ。また、乾燥時に曲がらない技術もできてきた。樹齢40年以上を経て、今まで十分にCO2を吸収し、いま建築材に適した太さに生育したカラマツがふんだんにある。これをどう生かすかは、今後の取り組みにかかっているのではないだろうか。
 フランスのニコラ・サルコジ大統領は、建築資材としての木材使用を現状の10倍にするという政策を発表した。600万ユーロを予算計上する計画もあるとのことだ。「木材使用の建築は今後拡大しなければならない分野だ。フランスは欧州3位の森林面積を持っており、その面積は毎年増加している。これを有効に活用することが地球環境改善にもつながる」というのが大統領の意図である。日本にもこのような流れが来るのを期待したい。

 風力発電とともに、カラマツは北海道グリーン・ニューディールの旗手になる大きな可能性を秘めている。