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サスティナビリティ(90)
地球を激変させるティッピングポイント(8)海洋のCO2吸収力退化
更新日:2010年06月20日

    

 千望台から見た留萌の海、地獄坂を上り詰めた先の校舎から見た小樽の海、函館山から270度に広がる海。25の歳になるまで、いつも海の近くにいた。海を見ると心が落ち着き、また激しく怒り狂う海にその力強さを感じたものだ。
 地球表面積の7割を占める海は、生命をはぐくみ、豊かな資源を我々に提供し、海洋を巡る流れによって温和な気候を地球上の生き物にもたらしている。さらに、海の重要な役割として忘れてはならないのは、産業革命以後に発生した人為的な温室効果ガスを吸収し溶かしていることである。これによって地球温暖化がいくばくか緩和されている。排出される温暖化ガスの40%は大気中に残るが、30%が海で、そして30%が森林によって吸収される。海に吸収されたCO2は、積もり積もって大気中のCO2の50倍もの量で海水中に溶けているとのことだ。森林のCO2吸収については高い関心が持たれているが、海洋については余り話題になっていない。今回は海洋のCO2吸収と、その限界について調べてみた。
 では、どのようにしてCO2は海中に吸収されるのだろうか。その大きな役割の1つを果たしているのが「植物性プランクトン」である。「植物性プランクトン」は、海洋表層で溶解したCO2を吸収し(食べ)、死滅後は海底に沈み蓄積され、数百万年を経て化石燃料になっていく。さらに、大気中のCO2はマングローブなどの植物や海藻のような海洋性生物によって吸収されている。このように、海洋への溶解、植物性プランクトンの吸収、マングローブや海藻などの植物によって大気中のCO2濃度は薄められ地球温暖化が緩和されている。
 しかし、これからも海洋が同じペースでCO2を吸収し続けるかどうかは明らかでない。植物性プランクトン、マングローブなどの海洋生態系のCO2吸収源は毎年7%ずつ失われており、50年前と比べるとその失われるスピードは7倍にもなっているとのことだ。ユネスコなどによると、海洋生態系の維持のために必要な対策が講じられなかったなら、その大半は20年以内に失われる恐れがあるという。もしも、海洋がこれ以上CO2を吸収できないほどになった場合、大気中のCO2濃度が高くなり地球温暖化が加速される。
 さらなる問題は、CO2濃度の増加により海水の酸性化が起きることだ。海水の酸性化はサンゴの溶解など海洋生態系に影響をもたらし、さらなるCO2吸収源を減少させることになる。また、海洋による大気中のCO2吸収は藻類の大発生を引き起こし、海中の栄養バランスを崩し、食物連鎖に影響を及ぼす恐れもある。
 2009年、米国国立科学研究所のリーベッセル教授は「海洋に含まれるCO2が地球環境に及ぼす変化」という論文を発表した。これによると、海洋は現在大きく変化しつつあり、地球の気候モデルを狂わす可能性があると警告を発している。海洋は温暖化しているだけではなく、深海部分の海流移動速度が衰えており酸化現象が進んでいるとのことだ。その結果として、海洋はある時点からCO2吸収力を著しく低下させ、海洋の生態系を大きく破壊させる可能性があると発表した。これが、地球を激変させるティッピングポイントになるかどうかはより詳細な調査研究が必要であるが、十分に着目しなければならない点だと指摘している。
 現在、京都議定書による国別CO2削減目標値には、船舶(貨物船、旅客船、軍艦、漁船)が排出するCO2は全く含まれていない。貿易に依存し、世界でも冠たる漁業国の日本。船舶が排出するCO2はかなりの量なのではないかと想像される。大きな流れとなっている“陸上”のエコカーと同じように、エコシップも検討されるべきだろう。また、マングローブなどの海洋生態系の喪失・悪化を食い止め、その回復力を戻した場合、CO2を3~7%相殺することができるという研究発表もある。地球温暖化をもたらしている温室効果ガスをこれ以上拡大させないために、また地球を激変させるティッピングポイントを避けるために、やるべきことは数多くある。