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サスティナビリティ(89)
地球を激変させるティッピングポイント(7)メタンハイドレート
更新日:2010年06月10日

    

 「燃える氷」がメタンハイドレートである。メタンが中心にあり周囲を水分子が取り囲んだ固体の結晶で、見た目は氷に似ている。火をつけると燃えるため「燃える氷」と呼ばれている。700兆トンから1京トン(京は兆の1万倍)と予測範囲は広いが、おびただしい量のメタンハイドレートが何百万年をかけ、深海などで低温と大きな水圧によって凍りついて蓄積されている。またシベリアの永久凍土の地下数百メートルにも堆積しているという。アーチャー博士などの研究者が2009年にレポートを出し、メタンハイドレートが地球を激変させる要素(ティッピングエレメント)であるとその根拠を示した。
 メタンはCO2の20倍の温室効果があるとされ、何かの拍子にメタンハイドレートからメタンが大量に放出されると、気温上昇の引き金になるのではないかと懸念されている。以前、ニュージーランドでは牛のゲップが最大の温暖化要因であると本ブログで紹介した。それは牛のゲップがメタンガスだからで、ニュージーランドではゲップを再処理し燃料にすることによって温暖化問題を解決しようとしている。牛のゲップとメタンハイドレートのガス排出量を比べると、たぶんペットボトルと札幌ドームほどの違いがあるのではないだろうか。
 この強力な温室効果ガスであるメタンが、その一部でも地上に放出されたら地球温暖化が進んでいく。温暖化が進むと海水温を高め、さらなるメタンハイドレートが地上に放出される。地球環境に甚大な被害をもたらすことは明らかである。報告によると、もし地球の気温が3度上昇すると海底の温度が上昇し、これらのメタンが放出される可能性があるというから恐ろしい。ちなみに、IPCCは将来の気温上昇予測を4種類のシナリオで準備している。温暖化ガスの水準が高いままのシナリオでは、気温3度の上昇は可能性があるとされる範囲内の数字である。
 では、メタンハイドレートはどこに埋もれているのだろうか。アメリカ地質調査書によると、主に世界の大陸棚に存在していることがわかっている。米国西部海岸沖、中南米太平洋岸に点在するが、特に日本近海には世界有数の埋蔵量があるとされる。西日本の南海トラフに最大の埋蔵量があると推定されており、さらに北海道十勝沖、新潟沖などにも堆積されているとのことだ。素人発想だが、これらの地域はすべて過去に大地震が発生したり、予測されている地域と重なっている。もし大陸棚のひずみによる大地震が発生した場合、そこに堆積しているメタンハイドレートに何らかの影響を与えないだろうか。今まで静かに埋もれていたものが地震により刺激され、さらに温暖化による海水温上昇で地表に放出されるとしたならば恐ろしいことである。
 反面、メタンハイドレートはエネルギー問題を解決する可能性も期待されている。日本近海に埋蔵されている量は日本で消費される天然ガスの96年分に相当するとのことだ。今後予想される原油価格の高騰の中、その活用に向け各種研究や開発が行われているが、現状の採掘技術では経済的には全く合わないとのことである。恐ろしいのは、シベリアの永久凍土が溶け経済的に採掘しやすくなった場合、および化石燃料資源の枯渇でメタンハイドレートの採掘コストが比較的に下がった場合ではないだろうか。最近、メキシコ湾で英国BP社の海底油田採掘施設が爆発、大量の原油が流れ出したが、同じ事故がメタンハイドレート採掘で起こらないとは限らない。
 今回、「地球を激変させるティッピングポイント」を連載して、初めてメタンハイドレートを調べることになった。調べれば調べるほど恐ろしくなってきた。日頃、地球環境の恩恵にあずかって“のんのん”とした生活を送っているが、実はその基盤がもろいものであり、じわじわと激変に向かって動いていることが認識させられた。その動きが人為的な温暖化によって加速されているとしたら、我々は誠に不幸である。
 このままではティッピングポイントは近づきつつある。