今振り返る、私の思い出紀行 第二十六回 和楊徳信社長 曹 雪峰氏

日中貿易・友好交流事業の原点となった社員旅行
国語教師を務めていた故国・中国から北海道にやって来たのが2003年(平成15年)になります。ここ札幌で日本語教室や工業技術系の専門学校に通って就職したのが札幌市西区発寒にある「池田歯車製作所」でした。
この会社は1938年創業の各種産業用歯車の製造・組み立てメーカーで、国内外から評価を得ている会社です。私は製作機械の操作などに携わり、技術者としての経験を重ねました。
08年に創業70周年を記念して、3泊4日の九州旅行が企画されました。私にとっては来日後初めてとなる本格的な日本国内の旅行でしたので、今でも強く印象に残っています。
コースでは、鹿児島、宮崎、熊本が主な観光・宿泊先で、桜島、高千穂、阿蘇、熊本城等々の名所を訪れました。湯けむり漂う天然温泉でくつろいだことや、初めて生の魚である鯉の刺身を食べたことなどが思い出されます。鹿児島の黒豚や宮崎の焼き鳥などにも堪能させられました。
観光でも、各地の神社仏閣が地域の人々とともに形成されており、日本の歴史・文化や地域の風習の中での役割に触れる思いでお参りしました。また、バスの中でのガイドさんの名調子に感心し、クイズをしてみんなで楽しんだことなどが思い出されます。
九州を初めて訪れて、同じ日本でも北海道とは自然環境をはじめ、食生活でもさまざまな違いがあり驚きました。また、来日して初めて「社員旅行」というものに参加して、日本を知る視野が大きく広がりました。
池田歯車さんには7年ほど勤務。その後独立して現在の貿易会社を始めたのですが、当初に発売した北海道の動植物を原料としたアメニティや健康食品、アクセサリー、ファッションなどの商品も、この時の九州での社員旅行で見聞した経験が参考になっています。
最近は、私が事務局長を務めている「一般社団法人北海道スポーツ文化芸術国際交流協会」の関係で、この9月に香港に隣接する中国4番目の大都市・深圳(しんせん)にオープンする屋内スキー場「華発スノーワールド」に携わっています。
ここは全長450㍍の人工雪コースで、通年スキーが楽しめる巨大なスポーツ施設です。施設内には大きなショッピングモールも併設される予定で、その一画に北海道物産をはじめ、ラーメンや寿司、焼き肉など北海道の味も楽しめる施設をオープンさせる予定です。そこでは、アイヌ文化もさまざまな形で発信し、北海道と中国の交流発展に貢献したいと考えています。
これらの事業や、私が携わるスポーツの交流活動も、かつての池田歯車製作所さんでの社員旅行が原点になっていることを思うと、感慨深いものがあります。

曹 雪峰氏