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サスティナビリティ(107)
上海(4)
更新日:2010年12月10日

    

 「マンションに投資しろ」「株を買え・絵画を買え」「ゴルフ会員権は今が買い時だ」。1988年に米国勤務から帰国したとき、同僚が“親切に”アドバイスしてくれたことだ。そして1996年、再度米国で勤務したときには豪勢な邸宅が次々に建設されており、必ずしも高給取りと思われないアメリカ人が次々とローンを組んで購入していた。なにかしっくりしない感覚に襲われたが、今回上海を訪れて同じような感じを受けた。
 黄浦江のほとりには億ションが林立しており、値上がりを見込んだ投機的な取得が多いと聞く。だから空き家がずいぶんとあるらしい。上海市内の平均的なマンションの価格は1平方メートル4万元(約50万円)だそうだ。1戸の面積は日本より広く200平方メートルを超えるのでゆうに1億円になる。さらに内装は別なのでその工事代金や備品購入が加わる。高級マンションになると数億円になるという。
 中国でも女性優位でデートの費用は全て男性持ち、マンションを持っている男性でないと結婚もしてくれないそうだ。大学卒業者の初任給は3.000元(4万円弱)、一般的な労働者の月収が2.000元(2万6000円)ということだから、親がかりでもないとマンションも持てず、惚れた相手との結婚もできない。海外留学したエリート層は金融やIT分野で活躍の場が与えられている一方、一人っ子政策で甘やかされて育った普通の若者にとって不満が増大するのは当然だろう。
 上海の人口は1,700万人だが、移動人口と呼ばれている戸籍を持たない人たちが500万人から600万人いる。内陸部の農村地帯から出稼ぎに来た人たちだ。都市への移住を妨げる戸籍制度が根底にある。今回の上海訪問では、ある縫製工場を訪問する機会を得た。ヨーロッパブランドを中心に製造しているが、製造ラインには数百人の20歳前後の若い女性がおり、仕事に熱中している。彼女らの月給は1.500元(2万円)ほどだが、上海は他地区から比べると高い方と聞く。月60元(750円)ほどの寮費を払い、朝食は1元で食べれるらしい。これで親元に仕送りしているというから健気なものである。中国の価格競争力はこのような人たちに支えられているのだ。ただ、彼女らに暗さが無かったのには救われる思いがした。
 一方に億ションを数戸持ち、高級レストランで一杯100元(1,300円)のビールを飲む少数の人達がおり、もう一方に2、3万円の月給の中から5元(65円)を出してビールを楽しむ大多数の労働者がいる。少数派が土地を始めとしたあらゆる物価を高めインフレを引き起こし、大部分はその影響をもろに受け生活にきゅうきゅうとしている。短期間の訪問ではあったが、上海の表と陰を見た思いだ。
 中国では富裕層(年収100万元)が急速に増えて、今や人口の1割に達しようとしていると言われている。したがって、これら富裕層を対象としたビジネスは日本にとって大きな機会をもたらすと囃し立てられている。しかし、本当にそんなに富裕層はいるのだろうか。もし1割もいるとしたら、それだけで中国のGDPの倍にもなってしまう。さらに、富裕層と言われる人たちのかなりの部分は、不動産による資産形成なのではないだろうか。
 私が米国から帰ってきたとき、また米国に再度行ったときに持った違和感からすると、現在の中国(上海)の経済状況は異常であると思わざるを得ない。中国の経済は引き続き拡大するのは間違いないだろう。異常な格差もいずれ是正されるだろう。隣国として我々が付き合うべきは、これから生活が改善されるはずの大多数の平均的国民なのではないだろうか。彼ら(彼女ら)の生活を向上するため、食の分野においても環境の分野においても、我々(北海道)ができること、さらにビジネス上でウインウインになることは多々あるだろう。民間レベルの交流を深め、お互いを理解することがまずは大事だろう。