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サスティナビリティ(98)
J-VER:北海道の環境資源を地域振興に(1)
更新日:2010年09月10日

    

 2年間ですっかり北海道仕様になってしまった身にとって、9月1日から6日にかけての東京出張は我慢の限度を超えていた。この間、猛暑日4日(2日間は34℃)熱帯夜5日(全て)。ぎらぎらした太洋の照り返しで路上は優に40℃を超えており、訪問した会社は「クールビズ」で空調は28℃に設定されパソコンや人の熱で室温はさらに高く、地下鉄も銀座線はエアコンがなく汗がひく間がない。夜間はエアコンのタイマー設定が切れると猛烈な暑さで気がつくと体中が汗みどろになっている。逆に寒いくらいなのが路線バスで、あまりの空調の強さで風邪をひいてしまった。何でこんな時期に来てしまったのかと思わず愚痴も飛び出す。
 さて、今回の出張の目的の一つが、環境省主催による「第1回カーボン・オフセットEXPO」への参加だった。このEXPOは9月6日、“ホテルはあといん乃木坂”で開催された。会場をざっと説明すると、全体の面積はおおむね150坪ほどで正面にステージがあり、フロアーには26におよぶ企業や地方公共団体の展示スペースが並んでいる。北海道からの出展者は、足寄町・下川町・滝上町・美幌町の森林バイオマス吸収量活用推進協議会、当別町、紋別市で、また高知県、宮崎県、鳥取県などの遠方からの参加が目立った。驚いたことに、ステージと展示スペースの間には30ほどしか椅子が置いていない。基調講演が始まると、椅子に座れない150人ほどが展示スペースの間で立ったまま聴かなければならない。もちろん、暑い中参加した私も立ち見である。主催者の環境省地球環境局地球温暖化対策課の室長は「思いもよらない盛況であり、3倍の広さの会場を用意すべきだった」と話されていたが、30人ほどの聴衆しか予想していなかったとしたら計画そのものがずさんだったと言わざるを得ない。せっかく遠方参加された方々にも、講演をなさった方々に対しても失礼ではなかっただろうか。いずれにしても会場は満杯の盛況ではあった。
 環境省は平成20年11月オフセット・クレジット(J-VER)制度を創設した。ただ、広報が不十分であったり、用語がやたらと複雑なため一般には十分理解されていない。また誤解を生じている点もあるのでまずその概要を説明しておく。
 カーボン・オフセットは、個人や企業が自ら排出した二酸化炭素を金銭的に相殺することで、努力しても削減できない分の二酸化炭素を排出量で購入しようとするもの。身近の例では、カーボン・オフセット葉書(年賀状)がある。環境に関心の高い人が、1枚55円で購入するとそのうち5円が寄付金となり、CO2削減の事業(森林保全など)に使われる。航空券でも札幌と東京間の場合、1人当たり使用燃料によるCO2排出量が500円と計算され、その分を別途寄付することによってCO2削減に貢献したことになる。カーボン・オフセットの例としては各種イベントのチケット購入、ガソリン給油などさまざまな分野があり、すでに(10年3月現在)780件でカーボン・オフセット・ビジネスが実施されている。参加した個人は地球温暖化防止にひと役買うことができ、満足感も得る。
 企業にとってはさらに重要な位置づけになってきそうだ。東京ではすでに始まっているが、地域条例によって一定規模を超える企業はCO2排出量を削減することが義務づけられる。さらに、衆議院は通ったが鳩山さんの退陣によって参議院で審議されずに廃案となった「地球温暖化対策基本法案」が今後再び国会で審議され、成立するだろう。そうすると、全ての企業にCO2排出量削減目標が設定される。もちろん、各企業は自社努力によってCO2排出量を削減すべくさまざまな努力を行わなければならないが、自社努力では目標を達成できない企業も出てくる。このようなときに、外部からCO2排出量を購入してオフセット(埋め合わせ)するという手段がある。
 京都議定書では、CDM(クリーン開発メカニズム)という仕組みがあり、発展途上国などのCO2排出削減事業(森林保全、自然エネルギー施設の開発など)に投資し事業参加することで、削減された排出量を取得することができる。ただしCO2が間違いなく削減され、持続されているのかを国連の認定機関によって精査し認定されなければならない。こうしてえられる排出枠をCER:Certified Emission Reduction: 認証排出削減量といい、あくまでも京都議定書で規定され実施し取引される排出枠である。
 CDMが国外で削減された排出枠であるのに対し、国内のプロジェクト(森林保全・バイオマス燃料活用・廃油や廃材の活用)によって削減された排出枠を購入したいというニーズもある。このニーズに対応するため、環境省は平成20年11月、オフセット・クレジット制度:J-VER)を創設した。JはJapanであり、VERはVerified Emission Reduction (第三者認証排出削減量)。第三者機関によって認証された排出削減量であり、排出枠としてカーボン・オフセット等で利用される。いわば、カーボン・オフセットが購入する側の制度であるのに対し、オフセット・クレジットはCO2排出枠を販売する側の制度である。もちろん、CDM/CERが国連機構で精査・認定・監視されると同じように、環境省が認定した第三者機関によってクレジット(排出枠)の信頼性と妥当性に関する手続きが行われる。
 さて、ながながと概要を説明してきたのは、J-VERがこれからの北海道にとってきわめて重要な役割を果たすと思うからである。森林保全によるCO2吸収、間伐材利用による鉄鋼やセメントなどCO2を多く使用する資材の削減、バイオマスによる化石燃料代替など、これらは北海道の最も得意としている分野であり、先進的な市町村はすでに実施しており良い見本がある。J-VERの取り組みは北海道活性化のためにもさらに積極的な取り組みが望まれるものだ。例えば森林保全により、CO2吸収が促進され、間伐材の活用による林業の振興、バイオマス燃料の生産、水資源の保護がなされ、さらに、削減されたCO2は排出枠として道外企業に販売することが出来るとしたら“一石三鳥”にも四鳥にもなる。

 次回より、「第1回カーボン・オフセットEXPO」を順次報告したい。