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サスティナビリティ(87)
地球を激変させるティッピングポイント(5)メキシコ湾流の変化
更新日:2010年05月20日

    

 世界地図を見ると、イギリス、ドイツ、北欧諸国は北海道よりも北に位置しているが、気候は北海道よりも温暖である。その主な理由としてメキシコ湾流がヨーロッパの西海岸に流れているためだと、中学校時代に教わった。メキシコ湾流(ガルフストリーム)は大西洋の赤道地帯で発生し、カリブ海、メキシコ湾、フロリダ半島南部を経て大西洋に流れ込み、ヨーロッパ西部、アフリカ北部沿岸まで流出する。赤道地帯から暖かい海水を運ぶため暖流で、大西洋沿岸部のヨーロッパ各国に温暖な気候をもたらしている。
 驚いたことに、近年の調査によるとメキシコ湾流が止まるまでにわずか数日間、再び動き出すのに数千年かかるということが判明したそうで、研究者の注目が集まっている。その変化は大きな、そして突然の地球表面上の気温変化によって引き起こされるそうである。この変化が主に気流(風)の変化に起因するものか、氷床の溶解によるのかについては未だはっきりせず議論が続けられている。また、北極海の河川からメキシコ湾流に流れ込む淡水の量が増えているなど、海洋大循環が停止する条件も整いつつあるという気になる見方も出てきているようだ。
 私の息子もドイツ出張中、アイスランド・エイヤフィヤトラヨークトル火山(なかなか覚えられない名前)の噴火で、1週間ほど現地で足止めを食らった。今回の噴火(歴史的には必ずしも大きな噴火ではないが)で、ヨーロッパの空港を離発着する航空機が1万便近くも欠航したが、その事態にまともに遭遇してしまったのだ。航空便はほぼ回復したようだが、噴煙は膨大な量の火山灰を伴ってヨーロッパ北部から北極方面に流れている。この火山灰がグリーンランドなどの氷床の上に飛散すると、アルベート効果(氷床が黒ずみ太陽熱を吸収しやすくなる)によって氷床が溶解しやすくなる。グリーンランドの氷床溶解も以前から論議されており、そうなると、河川からの淡水流入で海洋大循環が大きく変化する可能性がある。
 メキシコ湾流が停止するか弱まると、その恵みで温暖な気候を享受していたヨーロッパ各国に甚大な被害を及ぼすことになろう。冷害による農作物の影響、水産物の生態系変化で、ただでさえ低迷気味のヨーロッパ経済への打撃は計り知れない。もちろん、欧米経済とも深く関連する日本の輸出産業も多大な痛手を被ることになろう。
温暖化やそれに続く寒冷化、長い干ばつなどは過去にも地球に発生している。多くのケースでは気温などがゆっくり変化し、気づかないうちにある限界点(ティッピングポイント)に達して気候激変が起こる。過去のケースでは自然界の変化でこのような気候激変が起こったが、IPCC第4次評価報告書で、最近の地球温暖化の原因と特定した「人為起源の温室効果ガス」によってもたらされるとしたら、それは人類の自殺行為ではないか。IPCCの最新レポートでは、メキシコ湾流のスローダウンが21世紀に発生する可能性は10%としている。海洋大循環に関する調査研究の結果が待たれるが、少なくとも人為的行為によってその確率を高めることはないようにしたいものだ。