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サスティナビリティ(95)
地球を激変させるティッピングポイント(13)まとめ-4
更新日:2010年08月10日

    

 先日、元北大総長で地方独立行政法人「北海道立総合研究機構」理事長の丹保憲仁先生のお話を聞く機会に恵まれた。北海道をこよなく愛し、その可能性を高く評価する先生は「日本列島の中で北海道だけが唯一、日本近代化の先に食料・水の自立性を持つ地域です。食/住/森のバランスが良く、近代後期の成熟社会に向かって自立的な展開を進めうる地域です」と話しておられ、“我が意を得たり”と感銘させられた。
 今回シリーズで取り上げている「地球を激変させるティッピングポイント」も、もちろん読者に不安を与えようとするのが真意ではありません。地球温暖化の実態を直視し、環境に最も適している北海道に住む者として、どのような貢献ができるかを探ろうとするものです。
 「地球を激変させるティッピングポイント」の第4番目は“メキシコ湾流の変化”である。さて日本及び北海道への影響はどうなのだろうか。“素人発想”で見てみる。
 本ブログ「サステイナビリティ(87)」で詳細を述べたが、メキシコ湾流は大西洋の赤道付近で生まれ、メキシコ湾、米国東海岸、ヨーロッパ西岸を通り、グリーンランドや北極圏に達している。このメキシコ湾流の上空で暖められた風は、ヨーロッパ大陸や北米の内陸部に温暖な気候をもたらしている。メキシコ湾流は大西洋の最北部に達すると寒気で冷やされ、高密度で一気に海底に沈み深層海流となって南方に流れ込む。この勢いがベルトコンベアーの役割を果たし、海流は大西洋・太平洋を大循環する。今起こっているのは、温暖化によってグリーンランドや北極海の氷床や氷山が溶け出していることだ。溶けて海面に流入した水は淡水であり塩分が無いため、海水の濃度が薄くなり海底に潜り込む力が衰えつつある。海流の流れが衰えると海水の温暖化が一層進み、各地に異常気象を発生させる。近年のエルニーニョ・ラニーニャ活発化もこの影響を受けているのかもしれない。この異常気象の段階を経て、大循環が止まったらどうなるだろうか。温暖な気候に恵まれていたヨーロッパや北米の東部地域は一気に寒冷化すると言われている。さて、日本や北海道はどうだろうか。ご承知のように日本には黒潮(日本海流)が流れ込んでいる。黒潮は東シナ海を北上し日本南岸に沿って流れ、房総沖を東に進む経路をたどっている。黒潮は、メキシコ湾流と並び称される大規模な海流である。暖流であるため、日本列島の南半分に温暖な気候をもたらしている。メキシコ湾流(海洋大循環)が、北極近くで冷却され海底に沈み込む勢いがベルトコンベアーの役割で循環しているのに対し、黒潮の流れの力学はどうも異なっているようだ。地球の中緯度地域では偏西風(西から東への風)、高緯度では貿易風(東から西)が吹いているが、これにより太平洋の中央部に海水が吹き寄せられ水位が高くなる海域ができる。この高水域に集まった海水が時計回りの流れとなって黒潮が誕生するというのが定説だ。温暖化によりグリーンランドや北極の氷が溶け異常気象をもたらし、最終的には海洋循環が止まるというメキシコ湾流(海流大循環)とは趣を異にしている。そうすると、黒潮の影響を受けている日本列島は、メキシコ湾流の勢い劣化(最終的には停止)による危機を直接的には受けないのではないだろうか。もちろん、海面気温の上昇で、黒潮も日本列島の南半分に緩やかな異常気象をもたらすだろうが、大事には至らないと推測される。
 北海道はさらに恵まれているといえよう。黒潮は房総半島沖合で日本列島から離れるが、北海道東海岸沖合には親潮が流れている。親潮はベーリング海が源流で千島沖を経由して北海道南東岸沖に流れ、三陸沖まで南下する寒流だ。親潮が北海道を地球温暖化から守ってくれるのではないだろうか。親潮は酸素や栄養分に富み、魚類や海藻類をよく育てることから“親”という名前がつけられており、北海道に豊富な水産資源という恵みをもたらしている。黒潮との力関係で、親潮の南下がどの辺りで抑えられるのかは不明であるが、今後4半世紀や半世紀の間、北海道が親潮の恵みを受け続けることは可能なのではないだろうか。
 「地球を激変させるティッピングポイント」の第5番目“北極海の海氷・南極大陸の氷床融解”についてみてみよう。北極海の海氷融解は既に説明したように、第4番目の“メキシコ湾流の変化”に影響を与える可能性が高い。日本および北海道への直接的影響は少ないと思われる。もちろん、世界経済の悪化という間接的影響を被ることにはなる。一方、南極大陸の氷床融解が限界点(ティッピングポイント)に達した場合、海面上昇により日本にも甚大な被害をもたらすことになる。氷床溶解と共に、海面温暖化による海洋の膨張、大型台風の発生が重なった場合、四国から関東沿岸部に至る海抜ゼロメートル地帯は恐ろしいことになるだろう。東京では、山手線内側のほぼ全てが水没し、首都機能が完全に麻痺すると予測されている。このような事態が、2~3度の気温上昇で発生するということだから、遠い先の話とのんびり構えているわけにはいかない。ティッピングポイントに至る前に、何らかの手が打たれるだろうが、その時に注目されるのが北海道の安全性なのではないだろうか。人類が生存する上で欠かすことが出来ないのが、十分な食料であり、清涼な水であり、豊かな大地であり、新鮮な空気であろう。冒頭で紹介した丹保先生のお話を繰り返すが、「日本列島の中で北海道だけが唯一日本近代化の先に食料・水の自立性を持つ地域です。食/住/森のバランスが良く、近代後期の成熟社会に向かって自立的な展開を進めうる地域です」。