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サスティナビリティ(103)
J-VER:北海道の環境資源を産業活性化に(6)
更新日:2010年10月30日

    

 5回にわたって、第1回「カーボンオフセットEXPO」大会への参加報告をしたが、まとめとして、オフセットクレジット(J-VER)が北海道経済に及ぼす効果について取り上げる。再確認するが、森林保全によりCO2吸収を促したり、木質バイオマスを活用することによって化石燃料の使用を削減した場合、そのCO2削減分はJ-VERとして販売することができる。もちろん、的確な調査と検証作業が行われ環境省が定める運営委員会によって認証される必要はある。
 現状はどうなっているのだろうか。環境省のレポートによると、本年7月末までに全国で33件がJ-VER制度に登録されており、そのうち20件はすでにオフセットクレジット(J-VER)の認証が発行されている(売買可能)。累計ではCO2換算21,761トンの販売可能なクレジットが認証されており、登録された33件の内、北海道の案件は7件。その累計クレジット認証量は8,603トンで全体のほぼ40%にあたる。J-VER制度が開始されたのは2008年11月。09年末までは全体で1,938トンに過ぎなかったことを考えると、短期間に急速にJ-VERの供給が伸びたということなのだ。それまでは需要(J-VERをカーボンオフセットとして購入を希望する量)が供給を上回っていたが、供給が追いついた感がある。つまり、J-VERが取得できたなら、販売先は充分にあるということだ。

 北海道の7件には、今まで説明してきた「4町(下川町・足寄町・滝上町・美幌町)連携による間伐促進型森林作り事業」、「紋別市有林間伐促進型森作り事業」、「当別ふれあいバス廃食用油由来バイオディーゼル燃料活用プロジェクト」の3件が含まれている。その他には下川・足寄・滝上・美幌の4町がそれぞれ個別に実施しているバイオマスエネルギー活用事業がある。バイオマスエネルギーというと難しく聞こえるが、従来使用していた石油などの化石燃料を、廃材活用のチップやペレットなどに変えたことによるCO2削減効果である。ちなみに、下川町では町営五味温泉の燃料をペレットに代替したことにより、08年から12年の5年間で1,240トン相当のCO2が削減される見込みで、J-VER認定されている。08年8月、下川町を訪れたとき、町営五味温泉の燃料を石油(軽油)からペレットに変えたことによって年間300万円~500万円の経費が削減されたという話をお聞きしたが、このほかに年間248トン分のJ-VER販売代金が加わると、合わせて500万円から700万円の経費節減になる。

 では、クレジットオフセット用としてJ-VERはいかほどで販売できるのだろうか。本年9月に開催された環境省主催カーボンオフセットフォーラムのレポートによると、排出削減系(木質バイオマスエネルギーによる化石燃料の代替)で CO2 1トンあたり売り気配9,300円、買い気配4,750円、中値で7,025円であるという。一方森林吸収系(間伐による森林整備)では売り気配16,300円、買い気配7,750円、中値12,025円である。高知県ではJ-VER価格をホームページで掲載しており、その販売単価は排出削減系で10,500円、森林吸収系で21,000円となっている。北海道の場合、先に述べたように累計(09年-10年)で8,603トンの CO2分がJ-VERに登録されているが、内訳としては森林吸収系が圧倒的に多く、単価1万円としても8億6千万円の販売額が見込まれる。
 J-VERは始まったばかりで、さらに現在先進的に取り組んでいるのは限られた市町村だ。それを考えると、販売可能額は今後、限りなく拡大する可能性を秘めている。
 京都議定書で日本は12年に09年対比6%のCO2削減を義務づけられているが、その63%が森林吸収による削減だ。この約束を実現するため、国は年間2千数百億円の予算を森林整備に充てている。5年間でなんと1兆2000億円程度となる。ただ、この予算の対象は国有林のみで、半分を占める都道府県有林、市町村林、私有林には適用されていない。さて、大胆な計算をしてみる。計算の基本数値として、北海道の森林面積は全国の22%で、国有林と同じ面積を持つ道市町村林・民有林の面積を対象とし、そのうち20%が森林整備されJ-VER認証を受けるとする。この計算でいくと、5年間にオフセットクレジットだけで528億円が北海道にもたらされることになる。年間106億円だ。この他に森林整備によって次のような効果が期待できる。
・森林吸収による北海道自体のCO2削減
・間伐材の活用による林業の再復興
・下枝・廃材活用による木質バイオエネルギー(チップ・ペレット・エタノール)の利用促進
・水資源を維持改善することによる海水の浄化と水産資源の確保
・豊かで整備された森は学習・観光の場となる
 また、森林保全の他に次のような活動がJ-VERに認定される可能性がある。
     ・小型水力発電、地熱発電、風力発電によるクリーン・エネルギー開発
     ・カーシェアリングによるガソリン使用の削減
     ・LED利用によるCO2排出量の削減
     ・石油ストーブからペレットや薪ストーブへの変更
北海道の活性化に大いに貢献する分野として、森林整備やJ-VERの活用に大胆に取り組む必要があるだろう。