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サスティナビリティ(99)
J-VER:北海道の環境資源を産業活性化に(2)
更新日:2010年09月20日

    

 環境省主催「第1回カーボンオフセットEXPO」基調講演はワタミ株式会社の環境マネジメントチーム小出浩課長で、「美しい地球を美しいままに子供たちに残していく」というテーマで40分ほど話された。前回のブログで紹介したように、30足らずの椅子席しかなく、座れない参加者百数十人を出店ブースの間に立たせたままの講演であった。
 内容はきわめて具体的で、ワタミの環境に対する先進的な取り組みが紹介された。小出氏はユニークな経歴の持ち主で、経営学修士、1級建築士、衛生工学技術士の資格を持つ一方、大手建設会社の製薬エンジニア、機械部品製造販売大手での業務も経験している。阪神淡路大震災を体験し挫折を味わい、各種NPO活動に携わっていたとのことである。昨年8月ワタミ会長渡邊美樹氏に会い、「環境の上に経済が成り立っており、環境がワタミの最優先課題である」との言葉に共鳴し、ワタミに入社した。渡邊会長は高杉良の「青年社長」の主人公としても知られており、よくテレビにも登場しその明快な発言は多くの人の共感を得ている。ワタミはおなじみ「居酒屋和民」をはじめ、全国に628店(2008年度)を展開する大手外食チェーン。本年(2010年)5月31日には「エコ・ファーストの約束」を小沢鋭仁環境大臣に提出している。この約束では、2020年までに企業グループ全体のCO2排出量を50%(2008年の売上高比原単位で)削減、また社員やパートの日常生活で排出するCO2を30%(同じく2008年度対比)削減するという積極的な企業方針を宣言。徹底的な使用エネルギーの無駄の排除、LED照明の全面採用、輸送時で発生するCO2の削減、生ゴミや日本酒ビンのリサイクル、森林保全活動(ワタミの森プロジェクト)などのプロジェクトをトップが先頭に立って推進している。社員・パートは「エコ夢カード(環境家計簿)」にCO2排出を日々記録し、企業ぐるみで取り組んでいる。
 「エコ・ファースト」の一環として、カーボンオフセット活動にも取り組んでいる。その仕組みは、ワタミで出すカクテルを飲むと、売り上げの一部がCO2排出権購入の資金となり、お客は地球温暖化抑止活動に参加するというもの。2009年後半の開始から2010年4月までに74,000杯のカクテルが販売されそうだ。1杯のカクテルで1キログラムのCO2を排出したとみなしているので、この間74トンのCO2が排出されたことになる。このCO2をオフセットすべく、ワタミは74トンに相当するCO2排出権を購入することになる。同社はニュージーランドで森林保全活動に資金を投入しており、また「ワタミの森」での植林活動を行っており、それぞれの活動に50%ずつ資金を投入し排出権を確保している。一方、同社は環境省の推進するJ-VER制度に関心を持ち、2007年から高知県で住友林業と連携して「ワタミの森」森林保全活動をおこなっている。その努力が実を結び、本年4月にはJ-VER認定を取得し、4月6日から7月31日の間に161トンのJ-VERによる排出権を高知県から購入している。
 「ワタミの森」はオフセットクレジットに加え、森林保全活動によって出た間伐材の有効活用も行っている。バイオマスプラスチック箸をすでに3万本作り、間伐材や林地残材を砕き圧縮したペレットをボイラー用燃料に使い、チップはコクヨと連携して紙の材料として活用の方向である。小出課長は「ワタミの森が目指すのは、国内林業の再生、社員の環境教育、事業のCO2排出量オフセットなど多分野にわたっており、森の経済的価値を再認識すべきである」と強調していた。

 カーボンオフセットをCO2削減プロジェクトとして実施できるのも、企業や地方公共団体がCO2削減プロジェクトを実施し、その削減量を第三者が認定した上で販売可能な排出権(J-VER)が生み出されるからである。ワタミの場合、高知県の森林吸収量取引プロジェクトに負うところが大である。高知県のホームページを見ると、オフセットクレジット(J-VER)制度の内容、高知県が創出するJ-VERの発行量などが詳しく掲載されている。高知県が提供する排出権には2種類のプロジェクトがある。1つは、ボイラー燃料を化石燃料から木質バイオマスに代えることによるCO2削減で、そのステップは、
1:担い手がおらず荒れた森林を整備し、除去された枝葉や根株をチップ化して火力発電所の燃料に利用する
2:石炭の代替としてチップやペレットを使うのでCO2が削減される
3:環境省認定の第三者機関でこの削減分を精査しJ-VERとして認定する。
 高知県では排出削減の単価は1トンあたり10,500円で売買されている。木質資源エネルギー活用事業で高知県は、平成21年3月から22年7月の間に約6,000トンのCO2が排出量として蓄積され、そのうち3,000トン余りが販売されている。したがって、高知県ではこの間3,000万円を越す排出量売り上げがあり、その金額は森林保全に向けられている。
第2のプロジェクトは森林吸収取引で、間伐を実施することによってCO2の森林吸収量を増加させるものだ。森林吸収プロジェクトはワタミへの販売を中心に277トンのCO2削減が認められた。販売単価は1トン当たり21,000円と報告されており、森林吸収取引で550万円の販売となり、同じく森林保全の費用に向けられている。
 高知県は県土の84%が林野で、面積比率では全国1の森林県である。しかし、円高による輸入木材の価格低下、林業従事者の減少で森林の維持が困難になっている。このような中、J-VER制度によって排出量を販売することで得た資金を森林整備に充てようとしている。需要(CO2削減目標を達成するため排出権を必要とする企業)と供給(CO2を削減し、その努力を排出権として販売したい企業や地方公共団体)がうまくマッチングしたモデルといえる。
 北海道は森林・バイオマス・水・風などの豊かな環境資源を有しており、J-VER制度に最も適した地域といえるのではないだろうか。