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サスティナビリティ(22)クリーンテック革命で北海道の再生を-(7)
Capital(クリーンテックへの投入資本)-3
更新日:2008年05月30日

    

 「夕張を元気にすることが北海道を元気にする」― 似鳥昭雄ニトリ社長は5月17日開催された植樹祭で、その思いを熱く語った。植樹際は本年で2年目を数えるが、この2万本の桜と紅葉を植える活動に対して、全国から2千人もの応募があり、それぞれのネームプレートをつけた桜の苗木が丁寧に植えられた。
一方、翌18日には、支笏湖でイオン主催の植樹祭が行なわれた。同社は利益の1%を社会貢献活動に充てることを掲げており、東南アジアを中心に800万本以上の木を植える活動をしている(本年は万里の長城への植樹を実施)。国内でも今回の支笏湖のほか弘前や知床など、その活動は大きな広がりとなっており、同社の岡田卓也名誉会長は「私は82歳ですが、元気だからやれるのではなく、この活動をしているから元気なのです」と話した。穏やかな表情の中に強い思いが感じ取れた。
植樹祭に参加した高橋はるみ知事も「北海道の森づくりに貢献され、そのご努力に深い敬意を表します」と、その意を伝えていた。もちろん、私も両社の社会貢献に尊敬の念を持っている。それを前提としてあえて提言するとすれば、この活動を広めるためには事業の概念を取り入れる必要があるのではないだろうか。

前回記載したように、平成20年度の「森林整備事業」「治山事業」の予算は2,769億円である。そのほとんどが国有林(人工林)の整備(間伐)に対してであり、民有林(二次原生林)への予算枠はほぼゼロに近い。北海道の場合、国有林は全体の55%を占め、森林管理局が管轄している。一方、民有林は45%で道、市町村、その他が管理している(平成18年「北海道林業統計」)。
いま現在何かと話題になっている京都議定書において、森林吸収目標値(2008-2012年)は3.8%であるが、そのほとんどは人工林(林野庁管轄)での吸収を想定している。上記の比率を考えると、必然的に浮かんでくるのが、民有林の整備・管理・保全で森林吸収を高める方法が模索出来ないのかということである。民有林である以上は、やはり事業化がカギになると思われる。
京都議定書では、CDM(クリーン開発メカニズム)が認められている。これは、開発途上国(中国やインドネシア)で植林など環境事業をすることで排出権を獲得することである。これを海外ではなく、北海道の地で出来ないだろうか。今後、各企業が排出枠を厳格に守らなければならなくなるだろうし、そのコストは膨大になり、海外で取得する排出権も高騰している。もし、北海道の民有林で間伐などの整備や植林をし、その貢献に対し排出権もしくはカーボン・オフセット(企業や個人が排出した二酸化炭素を金銭的に相殺する)の権利を取得出来るようにした場合、多くの資金が投入される可能性がある。北海道・日本の二酸化炭素排出抑制にも大きな効果をもたらし、森林所有者に対しても賃料が支払われることになる。
また、間伐した木材は、カラマツのように建材に有効活用できる。木材の輸入コストは高騰しており、事業的にペイする可能性が高まっている。80%の木材輸入率を削減するとともに、ウッド・マイレージとよばれる植樹から伐採・製材・運送に至るまでの使用総エネルギーを、国内生産により大幅に引き下げる事も可能となり、これもまた世界の環境改善に貢献する。
 5月23日のNHKテレビでは、燃料用木材チップに取り組む福井県の事例が報道されていた。数年前に比べチップの単位あたりの価格は50倍になっており、事業として十分成り立つとのことであった。1バーレル当り135ドルを超えた原油から生産される暖房用灯油と比べると、言うまでもなく、大幅に安く安定している。
燃料用木材ペレットも家庭用暖房として使われ始め、今後の量的拡大で事業化が促進されるとともに、そのコストが低下するのは間違いない。北海道の一人当たりのエネルギー消費量を高めている冬季暖房も、ペレット利用の促進で大幅に下がることになるだろう。
これらを総合的にプロジェクト化した場合、雇用促進により、観光をはじめとした産業が活性化され、また先進的環境地域としても世界的に脚光を浴びることができるのではないだろうか。

楽観的過ぎるとのご指摘もあろうが、5月5日に掲載された読売新聞の記事を読むとご理解いただけるかもしれない。

記事はニュージーランドの農業主が山林を購入した内容である。同国は日本の4分の3の国土で、人口は北海道よりも少ない410万人であるが、家畜はその10倍といわれている。環境上の問題点は、羊のゲップから出るメタンガスと牛の尿から発生する亜酸化窒素である。ニュージーランドはEU型排出量取引制度に参加しており、排出上限枠を当初林業従事者に設定し2013年には農業にも導入する方針を打出している。排出枠を超えたなら取引市場から排出権を購入しなければならない。その金額は記事に登場した農業主の場合年収の半分にも及ぶとのことで、彼は近くの山林を年収の3倍で購入することを決定した。山林の森林吸収でCO2排出枠を販売し、その穴埋めをしようとするものである。さらに、余った森林吸収の排出権を取引市場に販売し、炭素ビジネスに参入しようとしている。
排出権取引は次回で説明するが、EUのほかにニュージーランド、米国のニューヨークやカリフォルニア州がICAP(国際炭素行動パートナーシップ)というフォーラムに参加し、排出権取引を推進している。日本でも研究会を設け検討が開始されており、石原慎太郎東京都知事はこのフォ-ラムに参加の意向を表明していることを考えると、世界の大きな流れになってくることが想定される。
そうなると、各企業は排出権を購入せざるを得ず、膨大な資金が世界的に動くことになる。一度このスパイラルが始まると、その動きは一気に加速するに違いない。そのためにはタイミングが重要であり、早めの動きが求められる。北海道が森林吸収で、日本国内を含め世界中から資金を集め、そのプレゼンスを上げる絶好のチャンスである。