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サスティナビリティ(119)
2025年(10)  2010年~2014年 「日本は更なる失われた5年間へ」(6)
更新日:2011年06月01日

    

 福島第1原子力発電所の地震と津波による壊滅的な被害で、原子力に重点を置いた従来の日本のエネルギー政策が大きく転換せざるを得ない状態になっている。「安全・安心神話」「原子力は安いという神話」「原子力村の排他的思考」「技術立国日本」が脆くも崩れようとしている。日本のエネルギー政策の下で、再生可能エネルギーはほとんど無視されてきたが、今こそその実現性・可能性について真剣に論議するときに来ているだろう。
 本ブログでは、2007年から「クリーンテック革命で北海道の再生を」「オロロン街道をウインドファーム(風力発電の一大基地)に」「風・林・水・菜」など、自然エネルギーへの転換を訴えてきた。今回の震災で世論が大きく変わってきて来ているのを感じる。
 「2025年」までの、残された10数年で元気な日本・北海道にする施策として、まず風力発電について私見を述べる。

 今まで、風力発電について、日本の専門家を含め一般的な認識としては、
・ 国土の狭い日本では設置場所が極めて限られている
・ 発電量が安定しておらず、品質の高い電力が得られない
・ 騒音被害で、周辺住民に受け入れられない
・ 猛禽類が風車に激突する危険性がある
・ 再生可能エネルギーは高価である
などが言われてきた。果たして本当にそうだろうか。
 設置場所についてはどうだろうか。前回のブログで紹介した環境省発表「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」では、陸上と洋上を合わせた風力発電可能容量は北海道だけで原発62基にも及ぶとみられる。これは、居住地、農地、公園、鳥獣飛来地などを除いたエリアで、一定の条件でビジネス可能な場所に限定されている。かつて、一部官僚が気象情報で使われる風力計のみで風力発電容量を予測し、日本は適さないとの烙印を押したのが前述した風評の原因だそうだ。実際には、北海道の日本海やオホーツク海沿岸には膨大な風力資源が存在していることが明確になった。
 電力の安定化については、海外の場合もそうであるが、より広範囲な場所に設置することで発電量を平準化できる。他地域との電力融通、さらに大規模電池による蓄電や揚水式発電(電力の余裕のある時に小型ダムの水を引き上げ水力発電する方式)との併用によって電力供給安定化は可能であると言われている。いずれも技術的に十分可能な手法である。
 騒音被害に関しては、09年から環境アセスメントで評価する仕組みになっており、環境省の報告書では居住地から500メートル未満の場所は外されている。現在の技術ではブレード(風車の羽根)の改良によって、風車から200~300メートル離れた場所でも通常の騒音と変わらないところまできているという。今後の技術改良でさらに改善されるだろう。また、洋上での発電は騒音に対する懸念はない。
 猛禽類の衝突被害についても、環境省の報告書ではクマタカやイヌワシの飛来地は、導入可能地域から除外している。
 発電コストはどうだろうか。太陽光発電が1キロワットあたり36円~76円であるのに対し、風力は10円~14円でほぼ4分の1である。原子力発電は、今まで6円程度と言われてきたが、使用済み燃料や廃炉の処理コストが含まれていない。また「特別会計」の中の7兆円、「一般会計」のエネルギー対策費約6兆円は原発の立地地域の振興に充てられているが、これらの金額は別になっている。原発の発電コストは、言われているほど安くないのは明らかだ。一方、風力発電は比較的発電コストが低い上に、事業化が容易で工期が短いという利点がある。

 日本は原子力発電に力点を置いたエネルギー政策をとってきた経緯から、再生可能エネルギーはほとんど無視されてきたと言っていいだろう。では、諸外国はどうだろうか。2010年の風力発電の発電量世界合計は2億キロワットで、前年に比べ22.5%も増えている。昨年、米国を抜いて世界一になったのは中国で、なんと1年間で1,650万キロワット(北電の総電力量の2倍)も増やし、設置累計では4,350キロワットになっている。3位ドイツ、4位スペイン、5位インドと続く。日本は設置合計で240万キロワット(世界全体の1.2%)と、20位前後で低迷している。総電力量に占める再生可能エネルギーの比率は1%以下だ。一方、ドイツは昨年で17%となっており2050年に80%を目指している。イギリスも洋上発電を中心に展開し2020年には全電力の3分に1を風力に依存しようとしている。米国ではオバマ大統領のグリーンニューデール政策の中心は風力である。
 このような中、なぜ日本の再生可能エネルギー比率は圧倒的に低いのだろうか。RPS法(新エネルギー等電気利用法)で、電力会社は地域電力会社(中小規模風力発電会社など)からの再生可能エネルギー買い取りを義務づけられているが、その許容量が余りにも少ない。さらに、買い取り金額が低く(15円程度)設定されており、事業者が利益を十分に得られないのが実情である。また、発電した電力を送電するのに大手電力会社の送電網を利用しなければならず、その送電料金が経営の足かせになっている。
 ただし、今、状況は大きく変わろうとしている。原発への懸念、世界の自然エネルギーに向けた趨勢、地球温暖化に関連したCO2排出の削減で、再生可能エネルギーが脚光を浴びている。そして、北海道が風力発電を中心として自然エネルギーの宝庫であることは間違いない。風力発電は裾野の広い産業で、発電事業者、鉄鋼構築物、機械、電機・電子の各メーカー、土木、さらには船舶(洋上発電)など、多くの産業が参画することになる。また、1万点もの部品が必要であり、関連する中小企業も膨大なものになる。北海道が風力発電の一大産業集積地になる可能性があるのだ。
 この一大プロジェクトを実行に移すには、いくつかの前提を考慮しなければならない。第1は、先に触れたRPS(新エネルギー等電気利用法)からFIT(自然エネルギーの固定買取制度)に移行すること。太陽光発電では1キロワットあたり48円の固定価格で買い取りが昨年11月から実施されているが、風力については未決定である。風力発電の場合も20円での買い取りが論議されているが、25円程度で決まれば多くの企業の参入意欲をかき立てるはずだ。
 さらに、地元の受け入れが重要である。道北・道東地域住民の理解と首長の積極的な推進が望まれる。もちろん、環境省・北海道によるマスタープラン・実施計画の作成と支援は必須になるだろう。送電に関しては、現行送電設備の増強とスマートグリッドなどを採用した安定電力提供のネットワーク構築が課題になる。
 東北電力や東京電力などとの電力融通のため、北海道と本州を結ぶ北本連系といわれる海底ケーブルが設置されているが、その増強は欠かせないものになる。現在、60万キロワットの送電容量だが10年後には90万キロワットに増強すべく計画されている。これをさらに、数百万キロワットまで引き上げる必要があるのではないだろうか。

 ただ、これらの要件が一挙に実現できるものではない。3段階での順次拡大を考えたらどうだろうか。

第1段階:2010年~2014年 「インフラ整備と投資勧誘」
 まず、北海道の持つポテンシャルを全国的に認知してもらうキャンペーンを実施し、企業誘致活動をおこなう。同時に風力発電設置候補地域の首長に理解を得ると同時に積極的な参画を募る。手始めに、稼働開始から10年以上たつ風力発電施設(多くは1基1000キロワット以下の風車)を2000から2500キロワットの大型風車に切り替え、関連する配電施設を増強整備する。これは、既存の立地と送電網の拡張利用で、スピーディーに発電量を倍増することを目的とする。さらに、これらのウインドファームをFIT(固定買取制度)による事業収益増強のモデルとする。これにより「原発2基相当」の電力を確保できるだろう。

第2段階:2015年~2019年 「陸上風力発電設備の建設・拡充」
 この間に、発電・送電施設の技術開発は急速に伸びると思われ、また2020年のCO2削減目標を達成すべく、大規模な投資が実施されると推測する。北海道はその優位性を積極的にアピールすると共に、関連産業の誘致を邁進する。「原発6基相当」の電力確保を目安とする。

第3段階:2020年~2024年 「洋上風力の推進と、拡張北本連系による一大電力基地に」
 洋上風力発電の本格的稼働と陸上大型風力発電の拡充で、北海道を日本におけるクリーンエネルギーの一大基地にする。クリーンエネルギーは北本連系を通じて本州各企業に送電され、CO2排出権としてプレミアム価格で販売される。目標ラインは「原発12基分」の電力確保。

 2010年~2014年、日本はさらなる失われた5年間になると予想されるが、次の5年、10年で北海道は風力発電の一大産業集積地となり、日本の経済復興とCO2排出阻止に寄与できるのではないか。考えるだけでも心が躍る思いだ。