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サスティナビリティ(147)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(18):まとめ
更新日:2012年08月15日

    

 ロンドンオリンピックも8月13日早朝に幕を閉じた。金メダル量産を目論んでいた柔道・体操が惨敗し「想定外」の幕開けとなったが、その後サッカーや卓球、バレーボールなどチーム競技の活躍が続き、夜中はテレビに釘付けになっていた。毎朝5時半に起きて北海道神宮ラジオ体操参加が日課なので、寝不足もかなり深刻になっている。
 ロンドンは数年前に訪れたが、歴史的な建物が多く荘厳な趣を感じたことが思い出される。今年のロンドンは例年になく低温で先月は毎日のように雨に見舞われていたようだ。温暖な気候をもたらすメキシコ湾流が弱まわっているのではないかと気がかりになる。
 一方、米国、ロシア、インドは極端な雨不足で干ばつ地域が波状的に膨れあがっている。

 さて、本ブログは2020年から2024年を「世界規模の環境被害の5年間」として、前回まで17回にわたって掲載してきたが、今回と次回でそのまとめをしてみたい。世界、日本、北海道は2020~2024年の期間どうなっているのだろうか。
 もちろん、私自身の個人的予測では心許ないので、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の各種レポート、環境に関する十数冊の書籍、本ブログ開始以来データとして蓄積していた新聞・雑誌の記事を参照して2020~2024年を見通したい。

 予測の前提として、地球気温は少なくとも2020年まで上昇するとした。その理由は、罰則規定を伴う世界的な温室効果ガス排出規制が実行されるとは思われない点。経済の低迷で製造分野での温室ガス排出は増加しないものの、世界的なガソリン自動車急増により運輸部門の排出が高まること。シェールガス、シェールオイル、タールサンドなどの新たな化石燃料は、採掘そのもので環境が破壊されると共に、安価な化石燃料が再生可能エネルギーの普及にとって一部ブレーキになること。中国などの新興国では引き続き石炭による発電が主流になると思われる点。森林破壊が進みCO 2の森林吸収が弱まること。北極地域では氷床融解が進み、アルベト効果(地表露出で太陽熱の吸収が高まる)で温暖化がこの地域で急速に進むこと。これらの点を考慮した。さて、2020年~2024年の世界、日本、北海道はどうなっているのだろうか。

 最初に注目しなければならないのは海面上昇である。米航空宇宙局は先月(2012年7月)、グリーンランドの表面温度を測定している衛星観測データを発表したが、何と氷床表面およびその周辺が97%の範囲で溶け始めている。温度を関知する特殊画像では、この巨大な島のほぼ全てが赤く表わされており不気味な様相である。その数日前は40%前後と平年と変わりない溶融率だったので、短期間に急速に溶け始めたことになる。この現象は150年周期で発生していると云われ、前回は1889年だったのでまさに今融解の周期が始まっていることになる。これに温暖化効果が加わると、グリーンランド氷床の融解速度は従来の予想より速まると見なければならない。因みに、グリーンランドの全ての氷床が溶けると、海面を7メートル上昇させることになる。2020~2024年には少なくとも30~40センチメートルの海面上昇があってもおかしくない。すでに、マンハッタン島の2倍にもなる氷塊がグリーンランドから滑り落ち、北大西洋を漂流しているとのことだ。
 そのうえに、南極大陸西部の氷床も融解が加速しているので、2020~2024年には合わせて数十センチの海面上昇の危険がある。グリーンランドや北極周辺の氷床・氷山の融解が進むと、その周辺から世界未発見天然ガスの30%、未発見石油の13%が採掘可能になるが、一方においてCO 2の23倍の温室効果を持つメタンガスが吹き出す恐れがある。こうなると地球温暖化がさらに増幅されかねない。
 次に懸念されるのが、海面気温の上昇による大型エルニーニョ・ラニーニャ現象の頻発である。これら現象は地域によって熱波や豪雨をもたらす。これにより干ばつ・森林火災、河川の氾濫による洪水、砂漠化、大型台風・ハリケーンが頻発することになる。これら災害に対する備えが充分でない地域は悲劇的な打撃を受けることになるだろう。
 水不足も人命に関わることで最大の懸念材料だ。IPCCの作成した2025年時点での世界の水ストレス地図はほとんどの地域が真っ赤に塗られ、深刻な水不足を予想している。
 現在でもカナダ・日本を除き全ての国民がきれいな水を飲める国はなく、特にアフリカでは国民の半分にも満たない。2020~2024年に急激に増加する世界の人口に必要な飲料水、灌漑用水を満たすことはほとんど不可能な状態になる。

 では2020~2024年の世界で、地域別にどのような事態が生じているのだろうか。今のままで本格的な対応措置が施されなかったらという前提で予測してみる。
 先ず米国: 海面上昇と2005年米国東南部を襲ったカトリーナ級のカテゴリー3ハリケーンがもたらす高波で、カリフォルニア州デルタ地帯に破局的な堤防決壊が発生する。
 サンフランシスコ、シリコンバレー、ロサンゼルスを含む豊かで広大な地域が洪水被害に遭うとともに、海水の流入による農地の塩害は長期間コメやブドウなどの農業生産に打撃を与える。今年も米国中西部(アイオア州、インディアナ州、オハイオ州)などは深刻な干ばつと森林火災で苦しめられているが、今年に限られることはないだろう。温暖化の激化で、干ばつはさらに深刻になると考えなければならない。
 世界の穀倉として小麦・大豆・トウモロコシを生産しているこの地域に干ばつ被害が続いた場合、米国からの輸入に頼っている国々は深刻な食糧不足に陥ることになる。米国の最北部やカナダへの被害は軽微でかつ温暖化による収量増加が期待できるが、米国中西部の食料生産を代替し世界に供給することはほとんど無理である。

 アフリカ中部のサヘル地域(サハラ砂漠周辺): この地域は干ばつの影響を最も激しく受けることになり、急増する難民は生き残るため大挙して北アフリカや南ヨーロッパに押し寄せるだろう。一方、北アフリカのエジプトも大豆生産が大幅な減収となり、イタリアやスペインも海面上昇で塩害に襲われ農業生産に打撃を受け食糧不足は自国さえも賄えなくなっている。厳しい経済不況に苦しんでいるこの地域でアフリカからの環境難民を受け入れることは出来ず、紛争が勃発することになるだろう。ドイツや北欧諸国も南欧やアフリカ諸国を援助しきれず、EU体制はここで破綻する。

 インド、パキスタン、バングラディッシュ: ヒマラヤ氷河の融解による洪水とガンジスデルタは海面上昇、さらに発達した熱帯サイクロンの頻発によって多くの都市が水没の危機に瀕する。さらにモンスーンの雨量の変動が激しくなり、干ばつが続く恐れがある。インドの農業は自然がもたらす降雨に農業用水を依存しておりかんがい設備が整っていない。また多くの井戸も帯水層の低下で枯渇寸前になっている。土壌の劣化が激しく、急増する人口を養う農産物の供給は極めて困難になる。水をめぐって、バングラディッシュからの環境難民が押し寄せ、インドとパキスタンの緊張状態は破局寸前になっている可能性が高い。

 中国: 中国は干魃期間や豪雨の増加が予想されており、気候変動の影響を特に受ける国だ。水不足は深刻で、現在でも人口13億人の内2億人が飲料に適した水需要を満たすことが出来ていない状態。雨期に豊かな降雨をもたらすモンスーンも弱体化が始まっており、黄河の水量減少が予想され、またチベット高原の氷河融解により長江(揚子江)も河川の水量が減少するといわれている。水不足は2020~2024年にかけて深刻度を増すだろう。
 1週間毎に石炭火力発電施設を建設し、現在の3200万台の自動車が2025年にはその10倍以上になると予想されている。これらから排出されるCO 2は地球温暖化に拍車をかけ、結果として砂漠化の拡大と深刻な黄砂被害をもたす。

 アマゾン川流域: この地域は特にエルニーニョの影響を受けやすく、大規模な干ばつと森林火災が発生しやすくなる。“地球の肺”といわれるアマゾンの熱帯雨林もその40%以上が失われ、CO 2の吸収力が弱体化するだろう。干魃による熱波と水不足でこの地域から生産され世界に輸出されている小麦・トウモロコシ・大豆は20%から30%の減収になる。

 これらの環境被害に対し、再生可能エネルギーの大幅な拡大やCO 2削減に向けた技術開発や努力を急がなければならない。しかし、先進国と新興国が一体となって実行に移されるのは、早くとも2020年までは本格化しないだろう。その後もしばらくの間、地球温暖化はその勢いを衰えさせることはないだろう。
 2020~2024年、「世界規模の環境被害の5年間」となる懸念を私は払拭することができない。