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サスティナビリティ(146)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(16)
更新日:2012年07月14日

    

 今日(7月12日)は朝から久しぶりの雨。4月10日から始めた徒歩通勤・早朝散歩も3ヵ月ぶりにひと休みだ。雨不足による道産農作物への影響も和らいだのではないかと一安心だが、一方で北九州を始めとする豪雨被害は“すさまじい”のひとことだ。昨日までに26名を超える死亡・不明者が出ていると報道されており、心が痛む。
 熊本県の一部地域では1持間に120ミリを超える雨が降ったとのこと。1時間に50ミリの雨量でバケツをひっくり返す程と言われるので、今回の豪雨のすさまじさはまさに“これまでに経験したことのない大雨”で想像を絶する。
 日本だけではなく、世界各地で異常気象が多発している。
ロシア南部では7月6日夕刻から降り続いた雨が1日で年間降雨量の4割にも達し、170名を超える死者を出したと伝えられている。
 反対に、米国中西部では異常干ばつが続いている。独立記念日の7月4日、シカゴでは最高気温がセ氏38度まで上昇し、100年ぶりの猛暑を記録した。シカゴを中心とした米国の穀倉地帯を襲っている熱波は、大豆やトウモロコシの収量に深刻な影響をもたらしそうだ。
 干ばつによる減産見通しを受け、穀物取引所では取引価格が史上最高値を更新する可能性が高いと見られている。米農務省の発表によると、トウモロコシは生産量で12%減、在庫量で37%減になると予想している。これは1988年の干魃以来の大幅な下方修正。米国中西部は世界の食糧基地でもあり、干ばつが今後も続くと世界経済に与える影響は甚大であろう。
 経済協力開発機構(OECD)は、少なくとも今後10年間(2022年頃まで)は価格が高止まりすると警告を発している。トウモロコシの価格は昨年の最高価格にほぼ並び、大豆は史上最高値にまで高騰している。一昨年から昨年にかけての“ジャスミン革命”や“アラブの春”運動も、その根源には食料品の高騰があったと言われており、世界経済のみならず社会・政治に及ぼす影響は想像を絶する可能性を秘めている。

 さて、前回・前々回でローレンス・スミス著「2050年の世界地図」についてその概要を説明したが、スミスは2050年には北緯45度以北の「ニュー・ノース」地域が繁栄するだろうと予測している。
 ニュー・ノース都市群の中でもハブになるであろうと指摘しているのがトロント(カナダ)、コペンハーゲン(デンマーク)、オスロ(ノルウェー)、ストックホルム(スウェーデン)の4都市だ。
 これら4都市は犯罪率が低く、政情不安やテロなどの危険も少なく、教育、医療、インフラ、文化が高度に発展しており、現在、世界で最も暮らしやすい都市のトップテン入りを果たしている。これらの都市が2050年に向けて急速に発展する“ニュー・ノース”の中核として位置づけられるだろうと見られている。
 これらの都市はいずれも広大な後背地を有しており、温暖化に伴う農業生産の拡大、豊富な天然資源の開発が見込まれ、世界各地から優秀な研究者や労働力が多数移住し、経済発展をさらに後押しするだろう。自然災害のリスクが最も少ない地域であることが最大の優位点である。

 ここで、カナダのトロントに注目したい。トロントは五大湖の一つオンタリオ湖のカナダ側に位置し、カナダで経済・文化の中心都市だ。私も3度ほど訪れたが、最近まで世界一高い建造物だったCNタワーが市の象徴としてそびえ立ち、博物館や美術館など文化施設が多く、街は清潔に保たれていた。早くから移民受け入れに寛容であり、国際色豊かな街並が印象的だ。北米ではシカゴに次いで将来性のある大都市との評価がある。
 メジャーリーグ最北のチーム、トロント・ブルージェイズは市の全天候型ドーム球場ロジャース・センターを本拠地にしており、札幌ドームの日本ハムファイターズと重なり合い、親近感を抱かざるを得ない。

 さて、「2050年の世界地図」の著者ローレンス・スミスは、今後世界の中で急速な発展が見込まれる地域として北緯45度以北のNORCs(環北極圏)を取り上げているが、実はトロントは北緯43度40分に位置している。
 道央自動車道(高速道路)札幌から千歳に向かって進むと、北広島あたりに“北緯43度”の標識が立っている。なんと、札幌とトロントはほとんど同じ緯度に位置しているのだ。
そこで、札幌とトロントを比較してみた。
 まず、トロントが誕生したのが1834年、札幌に開拓使が設立されたのが1869年とほぼ同じ時期である。人口は市域でトロントが250万人、都市圏で511万に対し、札幌は市域で192万人、道央圏で340万人。ややトロントが大きいが、それほど大きな差ではないだろう。世界の大都市には珍しく両市共に11月から3月まで積雪があり、平均の最低気温もトロントは1月がマイナス7度、札幌が同じくマイナス7度、最高気温ではトロントが8月の26度に対し札幌も26度と気候的にはほとんど差がない。
 トロント(カナダ)はGDPダントツ世界一の米国に隣接しており、経済面で相互に関係を深めているが、札幌(北海道)も世界第三位の日本、第二位の中国、さらにはロシアとも近い位置にあり、経済活動を活性化させる余地は多分にある。

 ローレンス・スミスは「NORCsにはすでに発展が見込まれるかなり大きな定住地が点在している」として、先の4都市以外にモントリオール、バンクーバー、シアトル、ミネアポリス-セントポール、ヘルシンキ、モスクワなどを挙げているが、どうも札幌を忘れているようだ。
 スミスは“ニューノース”が繁栄する要因として、人口(人口移動)、エネルギー・資源受給バランス、政治・経済の国際化、気候変動の4つのグローバル要因を挙げている。スミスが取り上げなかった札幌についてそれぞれのグローバル要因で見てみよう。
 第一の人口であるが、2050年に92億にもなる人口を養うだけの食料や水が賄えるかどうかが論点だ。食料に関して北海道は既に200%近い自給率であり、環境省の調査・報告ではコメの収量で北海道は2046~2065年で現在に比べ20%高まると報告されている。一方、関東以西では5%~20%減収になる。コメ以外でも今までは北海道の農業生産に向いていないと言われていた作物が生産可能になる。水については、雪どけ水が時間をかけて地中に染みこんだ大規模の地下帯水層が2カ所にあり、世界でも最も豊富で美味しい水がふんだんにある。勿論、経済の拡大のためには頭脳と労働力の確保が必須項目であるが、国内からの移住、海外からの移民の余地は充分にある。
 第二はエネルギー・資源の受給バランスである。カナダの場合は天然ガス・シェールガスやシェールオイルの埋蔵量が豊富である。一方、北海道の場合、洋上・陸上の風力資源がふんだんに存在しており、2025~2050年にはクリーンなエネルギーで全ての電力をまかなうことが理論上可能である。また、北海道は四方を海に囲まれており、海洋・海底資源の活用は今後大いに期待されるであろう。
 第三は政治・経済の国際化。今後、自然災害で困窮すると思われる東南アジア諸国に対し、食料・水を始めとした災害救助物資の提供等で信頼を高める地域になるだろう。北海道の地理上の位置は、北極海航路の夏季の開通、北米への最適・最短航路開設で極めて有利なポジションにあり、アジア主要港湾の水害危機の中で重要な拠点になると思われる。
 第四は地球温暖化がもたらす気候変動への耐性である。北海道が北緯43度を中心に位置していることは気候変動に対し極めて優位な立場になっている。先ず、梅雨(モンスーン)の影響が軽微であることによって、梅雨前線に向かって降り注ぐ豪雨が極めて少ない。海抜ゼロ地帯がないことによって海面上昇・高波による水没の危険性が少ない。黒潮と親潮が流れている関係で、海洋大循環の突如停止による寒冷化の危険性がない。今後大型化と頻発が予想される台風は、北海道にたどり着くまでにその勢いが大幅にそがれていく。中国の砂漠化拡大とばい煙の増加が必須となる中、2月から4月にかけて日本に運ばれる黄砂や酸性雨は、この時期の偏西風の経路からして他地域と比べ北海道への影響は軽微である。

 北緯43度に位置している札幌、さらに気候変動による被害リスクの軽微な北海道は、今後の取り組み次第では世界でも最も安全で経済的に恵まれる地域になる可能性がある。