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サスティナビリティ(32)
環境モデル都市下川町を訪問-(1)
更新日:2008年09月10日

    

 道央自動車道、道道を通り3時間、パンケ越峠から下川町に入ると景色が一変する。整備された針葉樹の森林には自然の豊かさとともに厳(おごそ)かささえ感じる。先般訪れた鹿島神宮の檜の森を歩いた時に感じたそれと似た気持ちにさせられた。下川までの3時間も広葉樹を中心とした樹林で北海道の自然の大きさは感じるが、そのほとんどは整備されていない。何か“もったいない”という印象を受けていた。それだけに、下川町に入った途端に自然の恵みを感じるから不思議だ。
 人口3,857人、名寄よりも北に位置し、夏は30度、冬は零下30度にもなる厳しい自然の町が今脚光を浴びている。福田首相の諮問を受け、本年7月22日「地域活性化本部」が、温室効果ガスの大幅削減に取り組む「環境モデル都市」6市町を選定した。下川町は見事その中に入っている。他のモデル都市は横浜市、北九州市、富山市、水俣市、帯広市で、町としては下川町だけである。同町のホームページ訪問者はすでに44万人になっており、その注目度合いがうかがわれる。下川町とはどんな所なのだろう。
 下川町の面積は6万4000ヘクタール(ha)であるが、その90%は森林であり、国有林が4万9000haと森林面積の85%を占めている。町有林4470haが下川町の「環境モデル都市」の原点である。
林業と鉱山の町として栄え、1960年には1万5000人を超える人口を有していたが、相次ぐ鉱山の閉山(三菱銅山・三井金山)と国鉄名寄線の廃止で、同町の人口は大きく減少し、昭和28年には財政再建団体になるという危機も迎えた。これを救ったのが町有林である。
 同年(昭和28年)、同町は国有林から1,221haの森林を購入し、その後も毎年必要に応じて購入し続け、現在の町有林面積にまで拡張した。この町有林を60年近くにわたり毎年40haから50haずつ、間伐・成長木の伐採・植林と、森林整備を継続的に実施してきたのである。当初は町民の働く場の確保を目的とした対策で、木材や間伐材の出荷という定期的な仕事を毎年提供するためだった。一定の森林面積(40~50ha)を60年近くにわたって愚直に手を入れ続ける(安斎町長談)ことによって、間伐・木材生産・植林という循環型産業がもたらされ、森林も見事に整備された。
 そして今、「山をしっかり守ることが地球温暖化を食い止めることにつながる」と、森林整備とバイオマス活用が大いに着目を浴びることになった。下川町は、60年にわたる森林整備を基に新たな取り組みに乗り出している。
第一には、間伐材からのチップを活用した「木質バイオマスエネルギー供給施設」である。第三セクターで運営している同町の五味温泉では、平成16年環境省二酸化炭素排出抑制対策事業として、チップを燃料としたボイラーを採用している。担当者のお話しでは、年間300-500万円の燃料費削減が実証されているとのことである。木質バイオマスエネルギーとしては、チップのほかにペレットも取り上げており各種町営施設、地域暖房、一般家庭用暖房としてその利用を拡大する計画である。なお、断熱効果を高める住宅のリフォームには、町から補助金を出しているとのことだ。
 第二は、次世代バイオエタノールとして穀物を使わず茎を原料とするセルロース・エタノールの開発がある。その資源は、どこにでも生育しているヤナギである。下川町では、この分野で先行しているスゥェーデンに担当者を派遣し、その調査結果を基に取り組みを開始した。ヤナギは生育場所を選ばず3年で6~7メートルに育つ早生種であり、またCO2固定が良好であることから着目された。現在、エゾキクヤナギ、オノエヤナギなど6種類のヤナギ875本が試験的に植えられており、その生育状況を観察している。最も生育が良いものを選別し、毎年700ha植えていく計画である。
 これらの努力が高く評価され、本年7月22日に「環境モデル都市」の認定証を取得することになった。
 安斎町長は「木をしゃぶる」という言葉で、森林の持つ多面的な役割を表現している。森林のCO2吸収力、木材資源、間伐材利用(生協が割り箸に下川町の間伐材利用を発表)、木材バイオマス(チップ、ペレット)、そしてバイオエタノールと、木の活用は無限にある。森林整備が今こそ求められている時はないだろう。
また、「森林を分かっていない人の声が大きい」とも話された。このような森林の持つ可能性を、単に「木を切るのは罪悪だ」のような声でかき消されてはいけない。