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サスティナビリティ(39)
オバマ次期大統領の環境政策と北海道(2)
更新日:2008年12月10日

    

 2カ月前、「地球温暖化交渉と今後の対応について」というテーマで環境問題の権威である先生からお話しを聞く機会があった。先生は現在某有力大学の客員教授であるとともに、経団連の環境政策の中心的立場で指導しておられる方である。経団連は最近になって国内排出権取引制度に参加する方針を示したが、基本的には環境への対応がわが国経済成長に多大な影響を及ぼすとして消極的な立場をとってきた。EU、さらには大統領が代わる米国が積極的な地球温暖化政策を採ろうとしているとき、日本の産業界の取り組みはどうなのだろうかという興味を持って、私はこの懇談会に参加した。
 冒頭シロクマ(北極熊)の写真を投影し、「シロクマが減った最大の原因は人間による狩猟のせいであり、感傷的に地球温暖化と直接結びつけるべきではない」「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は科学的分析の結果を示したもので、特に政策オプションとして提示されたものではない。それがいつの間にか地球温暖化抑制の科学的根拠になっている。実際、温室効果ガス排出が地球温暖化には直接結びついていないという学説も多い」「COP(国連気候変動枠組条約締結国会議)ではEUを中心に金融関係のメンバーが多く参加しており、排出権取引はマネーゲームになる可能性が大である」と話され、私には何か受け入れられない論調であった。
 シロクマは地球温暖化の象徴ではあるが、問題としているのは確実に減少している北極海の氷であり、それが地球温暖化によるものとほぼ科学的に証明されている。IPCCは、国際的専門家でつくる地球温暖化についての科学的研究の収集・整理のための政府間機構であり、その成果は2,500人の科学者により査読されている。2007年にはノーベル賞を受賞した。今、IPCCの研究成果が地球温暖化抑止政策の基本となっており、世界の国が認めているものである。COPのメンバーに金融関係の参加者がいることで、キャップ・アンド・トレード(企業ごとにCO2排出枠の上限=キャップ=を取り決め、排出権の売買をする仕組み)が直ちに否定されるものではないだろう。むしろ上限を取り決め、それを超えると多額の排出権を購入したり炭素税を支払わなければならないので、企業の地球温暖化への取り組みや新技術開発を促進することになるだろう。実際、EU諸国の温暖化ガス排出量削減には、キャップ・アンド・トレード方式の採用が相応の役割を果たしている。オバマ次期大統領もキャップ・アンド・トレード方式を採用する見通しであり、大統領選挙でオバマ陣営を勝利に導いたカリフォルニア州、ニューヨーク州やニューイングランド地区(米国北東大西洋沿岸)ではすでにEUの排出権市場に参加して排出権の取り引きを開始している。
 先生の主張の1つに「京都議定書の枠は日本にとって極めて厳しいものであるが、政府はそれをあきらめて受け入れた。直接エンドユーザーである国民に負担を求めず産業界に付け回しを行ったものである」とある。しかし、京都議定書で決められた日本の6%の削減目標は、3.8%が森林吸収で1.6%がCDM(海外での温暖化防止対策事業で得た排出権の取得)であり、産業界と国民生活での削減目標は0.6%のみである。そして、これらは国として受け入れたものであることを再認識すべきであろう。
 また、「京都議定書削減目標はどの国も達成できていない」「厳しい枠をはめても排出価格が暴騰するのみ」「結局、技術革新や省エネ技術普及が不可欠」「日本は環境技術を駆使して新興国を援助し、そこからの排出権を取得すべき」との論調であった。
 前回でも述べたように、フランス、イギリスは目標をすでに達成し、ドイツはほぼ達成の見込みである。オバマ次期大統領は京都議定書への復活を考慮しており、そのためにキャップ・アンド・トレード方式の排出権取り引きを拡張すると見られている。CCS(CO2の地中貯蔵・固定化)などの革新技術はまだ実用化の途上である。
 日本でも「国内排出量取引制度」が決まり、10月より参加企業の募集が始まった。この制度には今まで消極的だった鉄鋼業界や電力業界も参加を表明しており、一定の前進が見られる。しかし、参加するかしないかは企業の自主的な判断であり、また削減目標も自己申告を審査して設定することになっている。EUや米国の一部で実施しているキャップ・アンド・トレード方式と比べると極めて緩やかな方式となっている。
 オバマ次期大統領が従来の米国の消極的姿勢を一転しEU方式を採用すると、世界の流れは一挙にキャップ・アンド・トレードに向かい、日本の取り組みの遅れとままならない削減量がやり玉に上がってくるのではないだろうか。
 このような動きの中で、北海道はどのように対応すべきなのだろうか。次回に掲載する。