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長ブログ

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サスティナビリティ(60)
「風・林・水・菜」-6水の巻-1
更新日:2009年07月10日

    

 水の利用は飲料水、灌漑用水、工業用水など多岐にわたるが、本稿では飲料水について考えてみる。まず水道水を中心に、そして次号では地下水について考えてみます。
 「なんとか還元水」という言葉が世間を賑わした時期があった。「東京の水はおいしくなく、また健康にも良くないので還元水を飲んでいるのだ」と、当時の松岡利勝農林水産大臣はかたくなに事務所費の転用目的を「なんとか還元水」の購入であると国会で答弁していた。これに対し、石原慎太郎東京都知事は怒り心頭で「東京都の水道水は“世界水サミット”でも高く評価されたものであり、このように言われるのは誠に心外である」と反論した。実際、東京の水道水はペットボトルに詰められて「東京水」として販売されており、これがまたおいしいのだ。ただ、「東京水」は高度浄化システムで直接浄化されたもので、一般家庭ではカルキ臭を感じるケースも間々ある。東京に住んでいた時期、多摩水系の水道水だったので安心・安全な水であると思ってはいたが、それでも飲み水や食事用の水は浄水器を通したのを使っていた。ところが、昨年末札幌に引っ越してきて「札幌の水はうまい」と心底感じた。もちろん浄水器は取り付けていない。
 世界を見渡しても、飲用に適しているとされる水道水は、日本、米国、カナダ、英国、独、ハンガリー、韓国、そして北欧諸国くらいで、全体からみればわずかな地域のみである。米国でもニューヨークはペットボトルにするくらいおいしい水道水だが、中西部で暮らした時は、水道水の硬度が高すぎ、そのまま飲むと下痢をする恐れがあり、大がかりな設備を取り付け、ウォーターソフナーと呼ばれる触媒剤(固形の塩のようなもの)を毎月1袋(40Kgほど)投入して軟水化していたものだ。
 さて、北海道立衛生研究所 健康科学部飲料水衛生科長の伊藤八十男氏を訪ね、北海道の水について教えを請うた。伊藤氏は1976年に北大を卒業し、爾来30年にわたり衛生研究所で水道水、地下水、飲料水の調査研究をなさっておられるいわば北海道の水博士である。伊藤氏によると、環境省が毎年実施する公共用水域調査結果で「全国のきれいな水域ベスト5」を発表するが、北海道の河川が上位を占めているとのことである。苫小牧幌内川、苫小牧川、歴舟川、北見幌別川、広尾川は常に上位になっている。河川上流の森林が適切に整備され良好な自然環境が保持されているためであろう。
 ところで、おいしい水とは何だろうか。味覚・嗅覚には個人差があるが、多くの人が飲んでおいしいと感じるには一定の傾向があるのではないか。伊藤氏の説明によると、84年に厚生省(当時)が「おいしい水研究会」を設置し、おいしいと言われる水の数値化を試みた。その報告書(85年4月)によると、おいしい水道水に関する水質要件が次のように整理された。
蒸 発 残 留 物 :  30~200 mg/l    (おいしくする要素)
硬      度 :  10~100mg/l     (  同上   )
遊 離 炭 素 :   3~30mg/l     (  同上   )
過マンガン酸カリウム消費量 : 3以下  (味を損なう要素)
臭 気 度 :  3以下      (  同上   )
残 留 塩 素 : 0.4 mg/l 以下   (  同上   )
水   温 : 最高20℃ 
 以下 これら“おいしい水基準”を、北海道では札幌、函館、帯広、苫小牧、室蘭、千歳、登別の各市の水道水が満たしている。一方、東京、横浜、大阪、京都、神戸等の大都市の水道水は基準からは外れている。北海道に長く住んでいると、当たり前であまりありがたみを感じていない点が多々ある。水道水の“おいしさ”もその一つではないだろうか。スーパーやコンビニでは、「エビアン」や「ボルヴィック」などのフランス製ミネラルウォータや、六甲の水・富士山の水が所狭しと並んでおり、最近発表されたPBの第三のビール類よりも高い値段で売られている。フランスから紅海、インド洋、マラッカ海峡を通って水を運ぶのではとてつもない“フードマイレージ”(食品を運ぶ距離と重さを乗じたもので、エネルギー消費量)を必要とする。環境の面からも、“おいしい水道水”に恵まれている道民はもっと蛇口からの水を利用すべきだろうし、北海道の水を大いに宣伝すべきではないだろうか。
 一方において、ペットボトル入り水道水の活用も考えなければならない。外出用(最近では20代の男性の50%が出勤にマイボトルを持参しているとのことだ)や、非常災害用保存飲料水、さらには渇水に悩む本州各地に対する支援として、“おいしい札幌の水”を広めることができないだろうか。現在、北海道のミネラルウォータ-生産は約6万㌔㍑で、47億円の生産額になっているが、これは、山梨県の9%にも満たない。札幌市水道局は水道水を「さっぽろの水」として限定的に販売しているが、もし“札幌の水”を前記の目的で2万㌔㍑生産(ボトリング)したならば、12億円の生産額となる(500㍉㍑あたりの出荷価格を30円として)。環境に配慮したおいしい水が安く提供でき、市の財政支援にもなるのではないだろうか。
 次回は、北海道の豊かでおいしい地下水について考えてみたい。