「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > 社長ブログ > 「風・林・水・菜」-17まとめ-3

長ブログ

このエントリーをはてなブックマークに追加

サスティナビリティ(71)
「風・林・水・菜」-17まとめ-3
更新日:2009年10月30日

    

 「2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する」ための第3の鍵は“排出権取引」だろう。現在、ヨーロッパを中心に排出権取引が実行に移されているが、その手法はいわゆる“キャップ・アンド・トレード”で、各企業に温室ガス排出量の上限を設定し、上限を超えた企業は取引市場から超過した分の排出量を購入することになる。規定以内に収まった企業は市場に相場の金額(現在は1トンあたり2000円前後だが、今後高騰するといわれている)で売却できる。日本では国内排出権取引が昨年来開始されているが、その目標削減量は自社で設定する自主規定で、目標排出量を上回っても当面何の罰則規定もない。
 一方、新政権では、EU方式の排出権取引を念頭に置いていると考えられる。民主党のマニフェストにも「キャップ・アンド・トレード方式による実行ある国内排出量取引市場を創設」と謳っている。
それでは、同方式が採用され実行に移された場合、北海道にはどのような影響があるのだろうか。以下、推論を進めていきたい。
 その前に、来年度から実際に施行される東京都の「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」についてその概要を見てみる。東京都は、2020年に2010年対比(ここが現政権の目標とは異なるが)、25%の削減を目指している。その目標を達成すべく、現在その準備を精力的に行っている。本年(2009年)5月から7月にかけて説明会を開き、夏から明年3月までに基準排出量の算定とその検証を企業別に行う予定で、2010年4月より同制度を実行に移すと宣言している。当面、前年度に石油換算で1500リットル以上の温室効果ガスを排出した大企業約1300社が対象となっている。第1計画期間は2010年から2014年の5年間で、対象企業は前年の基準排出量に対し期間内に8%の削減義務が課せられることになる(地域冷暖房を使用しているオフィス及び工場などは6%)。基準排出量はISO14001審査業務などを通じて厳格かつ公平に審査の上設定される。
大規模事業所の温室効果ガス排出総量削減義務を履行するため、排出量取引に関する以下の4つの手法が提示されている。

1.対象事業所が義務量を超えて削減した量:自社努力により削減効果が目標を超えた場合には、超過分を他の企業に売却することができる。
2.都内中小規模事業所の省エネ対策による削減量:東京都は70万の中小規模事業所に対し、削減義務は課さないまでも「地球温暖化対策報告書制度」を導入し、各種省エネ研修会を開くなどの支援を行う計画である。省エネに成功した中小事業所は、その削減分を都の認定の下で大規模事業所に販売することができる。
3.都外の事業所の省エネ対策による削減量:東京都内に事業所をもたない企業であっても、温室ガス削減を実現した事業所は一定の基準を満たしたならば都内の大規模事業所に排出量を販売することができる。なお、排出総量削減義務を課せられた都内の大手事業所は、その削減義務量の3分の1の範囲内で購入できる。
4.グリーンエネルギー証書等の購入:平成20年以前に発行されたもの、及び都が認定した太陽光・風力・バイオマス・水力・地熱で出力した自然エネルギーを購入することで排出量を補完する。さらに特筆すべきは、再生可能エネルギーを購入した場合、通常電力(石油・石炭・天然ガス主体)の使用量の削減よりも50%増で換算されることである。

さて、ビジネスチャンスとして我々北海道が注目しなければならないのは、3と4である。第1計画終了の2014年まで、残された期間は5年である。京都議定書で日本が国際的に公約したのは6%であり、その中には森林の温室ガス吸収やCDM取引(開発途上国への環境当誌により購入する排出権)も入っている。8%といえども簡単にクリアできる目標ではない。さらに、東京都の計画ではCDMの採用は認められていない。都内に大型オフィスをもっている企業や大型商業施設などは、来年より必死になって温室効果ガスの削減に努めなければならない。削減目標を達成するため、多くの事業所がグリーン電力証書の購入に依存する可能性が高いといわれている(橋本賢・三菱総合研究所地球環境研究本部主任研究員)。
 ここで、グリーン電力証書について少し説明を加える。グリーンエネルギー証書はREC(
Renewable Energy Credit)と呼ばれ、再生可能エネルギー(風力発電、太陽光発電、地熱発電)を売買する際の発電1単位当たりの排出量を証明するものである。1?㍗(米国1世帯の月間電力使用量)のグリーン電力を生産すると、電力証書1枚を発行し販売することが認められる。この証書を購入することで都内の大規模事業所は排出量削減分として加算されることになる。グリーン電力証書の売却代金は、風力発電など再生可能エネルギーを生み出す企業が受け取ることになり、地域電力会社の経営を支えるとともにクリーン電力発電所の開発を推進する市場メカニズムが生まれる可能性がある。
 前々回で触れたが、北海道は日本で風力発電に最も適した場所である。FIT(電力の固定買い取り制度)が風力発電事業に適用され、グリーン電力証書が東京都の大型事業所の温暖化ガス排出量削減のため販売されたならば、北海道の再生可能エネルギー事業は大きく飛躍することになるだろう。
 まとめが長々と続いて申し訳ないが、次回は国内クレジットとオフセット・クレジット(J-VER)が北海道にもたらすビジネスチャンスについてトライしてみたい。