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サスティナビリティ(66)
「風・林・水・菜」-12菜の巻-4
更新日:2009年09月10日

    

  きれいに整備された水田がまだ多く残っており、家の近くの小さな金比羅さんのお堂はうっそうとした竹林で覆われていた。札幌に住んでいるときには、見ることのできなかった風景であった。過去形で表現したのは、私がほぼ30年前に東京都多摩地区に移り住んだころの近くの様子である。小学校の父兄会で、たまたま札幌から引っ越ししてきたというお母さんが、「東京に来て、このような緑の多い自然豊かな場所に住むことになって、子供のためにも喜んでいます」と話していたのを思い出す。ただ、その後の変わり様は驚くばかりで、水田は埋められ、小山は切り崩され、次々と宅地に変わっていった。バブルの時には土地はゆうに坪100万円を超え、次々に住宅やアパートが建ち並び始めた。それらの中には御殿のような豪邸が何戸か見られる。農地転用(都市計画によるものだろうが)による土地売却で、莫大な資金を得た農家がアパート経営をおこない、自宅を新築したのだろう。今でも、住宅地に変貌した場所のあちこちに櫛の歯が抜けたように空き地があり、そこには栗や柿の木が植えられている。秋になり、栗や柿の実がなっても、それらは落ちるままに放置され収穫されることはない。
 この空き地は『農地』として登記されているのだろう。農地は固定資産税が大幅に軽減され、相続税も納税猶予や免除の特別待遇が与えられている。農地は法律上その転用は厳しく規制されているが、地元農業委員会が認めれば転用も可能になる。このような遊休農地が全国に38万6000㌶(東京都の1.5倍、埼玉県とほぼ同じ面積)あるというから驚く。
何か腑に落ちない。私は農業に従事したことはもちろん、深く勉強したこともなかったので数冊の本を購入し、また膨大な新聞記事や統計数字を改めて調べてみた。この程度で日本の農業がわかったとか、農家の方々のご苦労を理解したなどとは決して云えるものではないが、批判を覚悟で私なりの考えを述べたい。
 そこには、極めて明白な事実と、それを取りまく極めて複雑な環境、および限りない可能性が浮かび上がっている。まず事実であるが、
■誰もが懸念するように日本の食糧自給率は40%(カロリーベース)で、特に大豆は5%、小麦は13%、飼料用トーモロコシに至ってはほぼゼロあること。
■それにもかかわらず、食品廃棄物は工場・外食店・小売店・家庭で合計1900万㌧発生していること。
■日本全体の農家一人あたり耕作面積が1.6㌶(国連食糧農業機関統計)で、カナダの119㌶、オーストラリアの115㌶と比べ圧倒的に競争力が低いこと。
■食料を輸入しながら、減反政策によって38万6000㌶の遊休地・耕作放棄地があること。
■世界の人口は、現在の68億人が2050年には90億人と30%以上も増えると見込まれており、80億人を超える2025年には食料不足が深刻化すること。
■日本の食料を担う農業専従者の65%が60歳を超えており、後継者を含め農家の担い手が大きな問題となっていること。
■昨年高騰し、その後沈静化した石油や穀物などの資源価格が、再度その騰勢を強めていること。
■地球温暖化の影響と見られる異常気候現象が世界各地で発生しており、台風、旱魃(かんばつ)、長雨などが世界の穀物生産に深刻な影響を与えていること。
■農薬汚染や偽装問題を機に、食品に対する安全・安心の関心が高まり、消費者は敏感になっていること。
これらは日ごろの新聞で取り上げられており、ほとんどの人達がわかっている事実だ。ただ、これからの話を進める上であえて記載した。
 それではこれらを取りまく複雑な環境とは何だろう。まず、日本の国土は3分の2が森林で耕地は12%しかなく、農家1戸当たりの耕作面積が他国に比べて圧倒的に少ないといわれている点が挙げられる。その実態はどうなのだろうか。本年6月に農林水産省から発行された平成21年農業構造動態調査(平成21年2月1日現在)を参照してみた。それによると、農業を経営している戸数は169万9000戸(販売農家以外の自給的農家を含めると285万戸といわれている)、1戸当たりの経営耕地面積は1.91㌶で日本農業が極めて零細であることが示されている。北海道を除く都府県では“販売農家”数が165万4千戸で、その平均農地面積は1.41㌶でしかない。さらに“販売農家”のうち、主業農家(農業所得が主で、65歳未満で年間60日以上農業に従事)は31万2千戸と、全体の20%以下にすぎない。北海道を除く都府県での第2種兼業農家(農業所得を従とする兼業農家)をみてみると、その総数は約120万戸で全体の63%にも上っている(平成17年度農林業センサス農林経営体調査)。驚くことに、第2種兼業農家が“販売農家”数の70%を超える都府県には、宮城、秋田、福島、新潟、富山、石川、福井、岐阜、三重、滋賀、鳥取など、コメどころといわれている各県が含まれている。不安定な農業収入、コメの減反政策、農業従事者の高齢化と後継者難などがこの状況を生みだしているのだろうが、冒頭に触れた農地の“転用期待”で集約化が進まないという一面もあるのではないだろうか。
 一方、北海道はどうだろうか。道内の“販売農家”は4万5000戸と日本全体の2.5%に過ぎないが、1戸当たり平均経営耕地面積は20.5㌶と他都府県の18倍になっており、主業農家で見てみると、3万3000戸の平均耕作面積は25.9㌶で、カナダやオーストラリアには及ばないものの、農業大国のフランスの20㌶、英国の12㌶を上回っている。
 日本の農業は自給率の向上に向け、集約化と規模の拡大による生産性の向上が求められている。その役割を担い実践できるのは北海道の農業であり、期待はいやがおうにも高かまっている。このような時、他都府県と同じ農業政策で北海道農業が営まれていて本当にいいのだろうか。