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サスティナビリティ(64)
「風・林・水・菜」-10菜の巻-2
更新日:2009年08月20日

    

つい先日、倶知安で農業をしている友人(Nさん)から「第一回野菜パック」が届いた。チルド配送で届いたトマト、インゲン、エンドウなどの野菜は新鮮で、「野菜ってこんなにおいしかったのか」と、おもわず感じ入ってしまった。
Nさんは私が以前勤めていた会社の同僚で、在社時は日本で最大のPOSネットワークを構築した、極めて優秀なシステムエンジニアー・プロジェクトマネージャーだった。その彼が6年前に退職し、奥さんの実家である倶知安の農家に移住し、今、野菜作りにいそしんでいる。生産した野菜を以前の同僚や知人および口コミの人たちに、年4、5回「野菜パック」として通信販売している。まさに生産者の顔が見えるだけではなく生産者の人柄も見える農業を実践している。現在の会員数は100人弱で、年間の販売収入は100万円に届くか届かない程度であろう。冬の農閑期には近くのスキーロッジでアルバイトをし、また奥さんは調理師免許をとって京浜地区のレストランで働いている。旦那さんの生産した野菜をレシピとした料理を開発したいと話していた。したがって、農作業は繁忙期に帰ってくる奥さんを除いてはNさん一人で“農業”をやっている。極力農薬を使わない減農薬栽培であり、農業以上に土づくりや草むしりに多くの時間が取られる。その上に、宅配のため、野菜のダンボール梱包、発送、野菜に合った料理の仕方まで記載した一人一人へのあいさつ状の作成、請求書の送付や入金確認など、その作業たるや繁忙を極めている。「朝は寒いくらいだったのでハウスを閉めきっていたら午後になって急に気温が上がり、ハウスの野菜が全滅してしまった」こともあり、常に天候と折り合いをつけなければならない。
農地は奥さんの両親から借りており、また堆肥(たいひ)は隣の牧場から牛の糞を提供してもらい、ハウスの枠組みは近くの農家から使い古しのものを譲り受けている。このように極力生産コストを押さえているにせよ、農業で自活できるまでになるのは大変なことである。Nさんは「野菜がおいしかったいう声が次々に寄せられるし、その人達からの口コミでお客が増えているので、何とかなるでしょう」と笑っていた。

 Nさんのように、定年前後の人たちや若者で農業を志す人たちが増えてきている。このような人たちを受け入れるため、北海道は態勢づくりを真剣に検討する時期ではないだろうか。食糧基地として北海道は、農作物の量を確保するという使命がある。だが、一方において有機野菜や減農薬野菜に対する消費者のニーズもあり、この両面に対応する必要がある。このことが、減少が続く北海道の人口、特に農業従事者の増加と経済の活性化に寄与するのではないだろうか。そのためには、農業の歓びと共にきちんと生活できる仕組みを準備することが必要不可欠である。以下の施策を考えてみた。

第1に、受け入れの組織を持つことが重要となる。農業経験者、農業系大学、農業政策の経験者、人材開発機関、さらには志のある方々でNPO的組織がつくれないだろうか。この組織には道および市町村が財政的支援をし、北海道に移住し農業を志す人たちを支援することになる。NPO組織は、当初以下のような支援策を実施する。
1.移住者に貸与する遊休農地を確保する
2.有機肥料/バイオ肥料を確保する(畜産業やバイオ肥料会社との基本的合意)
3.中古の農機具やハウスが活用できるように、道筋をつける
4.ホームページを立ち上げ、支援活動を紹介する
5.道外で、志のある人々に対し説明会を開催する
6.営農の意志をもった人々に対し個別面談を開催する
7.地域の農家や大学による農業実習を計画し実施する
8.複数の移住者(将来的には数百)が、相互に連携し活動する組織(緩やかな農業法人:1軒1軒の農業経営者に主体性を持たせたボランタリーチェーン的組織)の枠組みを作成する。
その上で、移住者の農業活動が開始されると、
1) 必要に応じ天候の予測情報、生育情報、市場価格情報、最適な農薬の使用情報等をネットを通じて提供する
2) 地域農家とのコミュニケーションをはかる
3) 個別の技術指導を実施する
これらの厚い支援策が北海道として必要である。

第2に、上記NPO組織の当初支援策8で取り上げた「相互に連携して活動する組織」が重要である。志と意識が高いとしても、1軒1軒では農業経営はあまりにも負担が重すぎる。また、移住して農業に携わろうとする人たちは自立意識が高く、既存の組織に委ねることには抵抗もあろう。農業移移住者の地域はそれぞれ別々であったとしても、ネットで結びつくことによって、「顔の見える農家」として販路の拡大、宅配の共同化による効率化、相互の情報共有がなされ、収益の向上につながるのではないだろうか。産地直納の新鮮な農産物を都会の人たちは待ち望んでおり、ビジネスの可能性もあると思われる。
 「 農業をやりたいが生活できるかどうか不安だ」という人たちの背中を押す意味でも、彼らを支援するNPO組織が必要であり、ネットで結ばれたボランタリーチェーンは堅実な農家経営を支えるものになるのではないか。もちろん、国や道・市町村の支援が必要であるが、現在の農業支援予算から見れば極めて少額である。これにより北海道における農業人口の減少を食い止め、「安全・安心な食品の北海道」のブランド力が、さらに高まることになるだろう。
Nさんの畑を訪問し、「第一回の野菜パック」が届いて、このような考えが浮かんできた。