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Interview

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「命」「生きる」ことの
大切さを伝えたい
掲載号:2018年5月

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山内惠介 演歌歌手

演歌歌手の山内惠介さんは、3月28日に新曲「さらせ冬の嵐」を発売した。熱情的な曲調で、何があっても私は生きていくと決意した女性の心模様を歌い上げている。4月1日、道新ホールでおこなわれた「惠音楽会」終了直後の楽屋で、新曲への思い、18年の決意を聞いた。

自分の曲をより愛せるようになった

――3月31日、4月1日の「惠音楽会」は大盛況でした。

山内 本当にありがたいことです。僕は高校生でデビューしたので、ファンクラブを「惠音楽部」と名付けています。

「惠音楽会」は、アンコール以外で自分の歌を1曲も歌いません。他の歌手の曲をカバーします。何かテーマを決めて選曲し、あるステージは「旅」だったり、「愛」とか「恋」のときもありました。

いまは違いますが、最初はアコースティックライブだったんです。惠音楽会を始めた頃、「隣の芝生は青い」ではないですが、ほかのアーティストの方の曲がすごくいいなぁ、と感じたんです。

僕は、リード曲だけでも18曲あり、シングル収録曲は30曲を超えています。惠音楽会を通じて、オーダーメードで曲をつくっていただけることは、ありがたいこと、すばらしいことだと実感しました。より自分のオリジナル曲を愛せるようになりました。

――今回の舞台では、若い世代に人気のSuperflyの「愛を込めて花束を」を歌っていました。

山内 選曲する際、いまの自分が歌いたい曲を入れます。最近、「愛を込めて花束を」を改めて聴いて、素晴らしい曲だなと。Superflyさんは昨年のNHK紅白歌合戦で披露していて、大きな刺激を受けました。あわせて、この歌を自分の声を通して届けたいと思いました。

ロックバラードですから、僕のファンの世代の方々からすると、入りにくい曲調なのかもしれません。でも、お母さんが連れてきた娘さん、息子さんとか、そういう世代の方々が喜んでくださる。公演後の握手会でも、僕と同世代の人たちが「“愛を込めて花束を”がよかったですよ」と声をかけていただきました。

歌い手としては、幅広い世代の方々に愛してもらうことが、一番ですよね。小さい子どもから大人まで、惠音楽会を通じて、僕に興味を持っていただければうれしいです。

――その意味では、以前より男性客の姿も、会場で多く見かけるようになりました。

山内 僕も今年35歳になりますから。アラフォー世代に入るということは、同性の方に好きになってもらわないと、2020年の20周年に向けては厳しいと、感じています。

お客さまがいて歌は初めて完成する

――3月28日に新曲「さらせ冬の嵐」が発売されました。ひさしぶりに女心を歌った曲ですね。最初に聴いた時、どんな感想を持ちましたか。

山内 最初は恋愛の歌という感じのとらえ方でした。恩師であり、この歌を作曲した水森英夫先生からは、「ドラマチックに激しく」とアドバイスをいただきました。

レコーディングする前に、一生懸命この歌のことを考えましたね。ノートに何度も歌詞を書きながらです。そしてレコーディングで命を吹き込みました。

キャンペーンのステージに立って歌うようになってから、この曲の本当の意味を知ることになりました。

それはお客さまの反応を通じてです。まだ、歌は完成していませんでした。
「私の知り合いが自分で命を絶ってしまった」「5年前に自分で命を絶った弟にこの歌を聴かせてあげていれば、いまも生きていたのかもしれません」――いままで自分の歌を通じて、お客さまからそうした声を寄せられたことはありませんでした。「さらせ冬の嵐」は、恋愛に破れた女心の歌だけではないんだと。

作り手は作詞、作曲、編曲、そして僕も含めてです。受け手はお客さまになります。歌は受け手がいて、その曲の持つ意味、輪郭が完成する。このように強く感じたのは、いままでの作品の中で初めてでした。

「さらせ冬の嵐」は、人生の応援歌でもあるんです。死のうとしていた女性が、そこからもう一回希望を持って、生きる決心をする。まさに歌のドラマですよね。

――作詞は松井五郎先生が担当しました。

山内 松井先生と出会ったのは7年前です。「冬枯れのヴィオラ」という曲をつくっていただきました。

この歌は異国情緒にあふれ、どちらかといえばフィクションです。今回の「さらせ冬の嵐」は、ノンフィクションです。

曲をいただいたとき、松井先生は「『さらせ冬の嵐』の根底にも、生きるという意味をちゃんと書いているんだよ」とおっしゃっていました。

僕が最初からそこまでをくみとれればいいのですが、何回も歌っていく中で、深いなと感じています。

時には過去を振り返ることも大切

山内 僕は二番の「駅にいま戻れば どこか行けますね」という歌詞が気に入っています。

駅に戻るということは、かつてその場所にいたわけです。死のうと心に決めて駅に降り立ち、海の目の前の断崖絶壁まで行ったわけですよね。

生きるということは、ただ前ばかり向いていれば、いいわけじゃない。前に進むためにも、後ろを振り返ることも必要です。

僕も日々過ごしていてふと、「あっ、少し過去に戻ってみたい」と思います。昔住んでいた家を見に行ったこともありました。いろいろな別れや出会いがあったなぁとか思い出す。すると、こんなに落ち込んでいられないと思えてくる。ときには“戻る”ということが必要なんですよね。

人生の生き方を駅に例えている二番が、とくに好きなんです。

18年は攻めの一手嵐を巻き起こす

――冬の嵐というタイトルは、道民のみなさんはイメージしやすいですね。

山内 私は北海道の皆さんに育てていただきました。“第2の故郷”のような存在で、戻って来ると安心します。北海道を題材にした曲も多く、道内各地にも足しげく通わせていただきました。

道民の方々は冬の嵐を、嫌と言うほど味わっていますよね。冬の寒さ、辛さ、大変さを一番知っていらっしゃる皆様の前だからこそ、この歌を表現できると思います。

「冬の時代」という言葉もありますが、一生懸命に生きていればこそ、穴にはまります。でも、それにはちゃんと意味があります。「大変」というのは、大きな変化をもたらせるための試練です。

僕も大変なことはたくさんあります。でも、そういうときこそチャンスなんだなと。「さらせ冬の嵐」には、「生きていればいつか花もまた咲いて」という歌詞があります。苦難を乗り越えれば、必ず未来が開けることを信じています。

――今年は「攻めの一手の年にしたい」とおっしゃっていますね。

山内 年が明けて、お仕事から少し離れて、自分の時間がありました。そんなとき自分と向き合ってみると、いかに弱い人間なんだと気づかされました。

もっと強くなりたいなと。そのためには攻めていかなければならない。

“強靱”の“強”でもよかったのですが、それだけだと物足りないと感じました。

「さらせ冬の嵐」のメロディーラインは、目を覚まさせるくらい攻めています。声も張るので、かなりエネルギーを費やす曲です。命の歌は、命がけで歌わないとダメですよね。

得てして1年間歌い続けると、自分自身も影響されます。今年は命、生きるということと向かい合いながら、過ごす1年になります。

この曲は早く結果を求めたり、焦ってはいけないと思っています。時間がかかってもいいから、ファンの皆様と一緒に、この歌を育てていきたいです。

そして今年の年末には、「さらせ冬の嵐」が、文字通り嵐を巻き起こしていればうれしいです。

=ききて/前田圭祐=