コンサドーレ21年1月期決算で売上高5億円減・赤字2億7000万円…コロナ禍の打撃鮮明に

「引き続き、大変な情勢が続いています」

 きょう4月22日、北海道コンサドーレ札幌が定次株主総会を開催した。

 コロナ禍により、昨年はシーズン開幕直後から7月下旬まで5カ月以上にわたり試合開催が中断。関連イベントの中止や大口スポンサーの経営悪化にともなう広告引き上げなど、展開する事業すべてが大きな影響を受けた。

 その中で発表された2021年1月期の売上高は30億9639万円と、前年の35億9982万円から約5億円減。一方、チーム強化費18億5000万円を含む売上原価は30億5679万円となり、販売費・一般管理費を含む営業損失は3億7190万円、経常損失は2億8551万円で、2億7136万円の当期純損失を計上した。

 もっとも減少幅が大きかったのが興行収入。昨年7月22日に1試合の収容人数5000人という制限を設けて再開したリーグ戦は、最終的にホーム17試合で7万3155人。前年比約77%減、2億4442万円の収入に留まり、昨年の7億7913万円から5億3000万円もの減少。予算としては約9億円を見込んでいたことから、6億円以上ものマイナスとなってしまった。

 もっとも収入に占める割合が大きい広告料は17億6912万円で、昨年実績対比では3億円増加。グッズ販売などを含めた商品売上高は2億7185万円で昨年比1300万円と堅調の一方、Jリーグ配分金収入は4億2390万円で昨年比2億円マイナス、移籍金収入などそのほかの売り上げも3億8709万円で前年6800万円減だった。

 コンサはもともと、東京五輪の男女サッカー開催などで札幌ドームが使用できないことなどを見越し、数年前から昨年までを先行投資の期間と位置付け、広告用のディスプレイ購入などの設備投資を実施。昨期も赤字決算だった一方、既存株主への第三者割当増資などで資金を調達していた。

 その結果、昨年1月期の段階で手元資金として約5億円ほどがあったほか、金融機関からコロナ対策の事業資金として総額8億4000万円ほどを借り入れた。このため債務超過は回避したが、貸借対照表ベースでは純資産が2億5368万円と前年から半減した。

総会後、オンラインで取材を受けるコンサドーレ社長の野々村芳和氏 ©財界さっぽろ

 なお、Jリーグの参加条件であるクラブライセンスは、3期連続の赤字か、債務超過になった場合取り消される。昨年10月、Jリーグはコロナ対応による緩和措置で、今シーズンの決算、コンサで言えば22年1月期決算までは債務超過であってもライセンスを維持できる。

 だが翌23年1月期の決算からは、前年の決算が債務超過状態なら超過額が増えた場合、または債務超過でない状態から新たに債務超過に陥ると、ライセンスは取り消しとなる。

 また23年1月期決算からは、もう1つの取り消し条件である「3期連続赤字」のカウントが再開する。そこから3年連続で赤字なら、ライセンスは同じく取り消しとなる。

 総会の挨拶で、本稿冒頭のように切り出したコンサ社長の野々村芳和氏は、株主からのクラブライセンス維持に関する質問に答える形で資本政策を説明。

 まず広告収入については、既存スポンサーがコロナ禍でもほぼ前年と同水準の金額を維持した形で契約できているほか、ユニフォームの広告枠がトップスの鎖骨部分2カ所、パンツの1カ所がそれぞれ空いており、現在数社と交渉中であるとした。

 次に「ビジネス戦略パートナー」として契約し、役員2人を受け入れている博報堂DYメディアパートナーズとは、今シーズンから「マーケティング専任代理店」契約に変更。野々村氏は「既存パートナーとの取り組み、新規獲得でさらなる力添えをしてもらう」と話した。

 さらに既存株主を中心として第三者割当増資を検討。来年4月ごろをメドに10億円ほどの増資を計画しており「概ね(既存株主との)交渉の感触はいい」(野々村氏)と明かした。

 また野々村氏は「赤字幅は選手からの年俸返上や、払い込み済みのシーズンシート購入金額の寄付で1億6000万円ほど圧縮できた」とも説明した(総会後のオンライン取材)。

 一方、今シーズンの事業計画では興業収入4億8000万円、広告料収入19億円、グッズ収入3億2000万円など売上高を35億7000万円と19年決算とほぼ同じ水準で見込んだ。さらに、強化費は18億5000万円と据え置いた。

 月刊財界さっぽろ2月号のコンサ特集内インタビューで「クラブ経営も強化費も右肩上がりでやってきて、リーグでトップ5にも入った。この流れを止めるのか、それとも今の路線を継続するのか。自分はクラブの代表として、右肩上がりでいきたい。ステークホルダーに対してはそう問いかけています。今の路線ではダメだと言われたら『辞めます』と言うでしょうけど、取締役会も含めた社内では、強化費維持の方向性で、という合意をもらっています」と話していた野々村氏。

 その発言通り、きょうの総会では野々村氏、筆頭株主で石屋製菓社長の石水創氏以下、現体制下の取締役16人を選出。社長として9シーズン目を迎える野々村氏のもと、コロナを打破し、再び経営を右肩上がりにすることができるだろうか。

 なお、文中で言及した月刊財界さっぽろ2021年2月号では、コロナ禍の超過密日程を戦い抜いた2020年シーズンの北海道コンサドーレ札幌を特集。入場客数の制限でチケット収入で予算比6億円のマイナスとなり、観光関連が多い大口スポンサーにも甚大な影響がある中、どのように戦い抜いたのか。そして21年シーズン以降に待っているのは何なのかを中心に分析した。

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