伸び悩む船橋氏・勢いづく石川氏、3議席目は?―参院選北海道選挙区、自民・立憲民主党最新世論調査を入手

 6月22日公示、7月10日投開票を予定する夏の参議院議員選挙本番まで、あと1カ月を切った。北海道選挙区は現在、12人が出馬の意向を表明している。

 与党からは自民党現職2期の長谷川岳氏、新人で前衆院議員2期の船橋利実氏が立候補。野党は立憲民主党現職2期の徳永エリ氏、新人で元衆院議員2期の石川知裕氏、共産党新人で元衆院議員1期の畠山和也氏、国民民主党新人で元国会議員秘書の臼木秀剛氏。このほかNHK党から斉藤忠行・石井良恵・浜田智の3氏、諸派の森山佳則氏、大村小太郎氏、沢田英一氏がそれぞれ名乗りを挙げている。

左から長谷川岳、船橋利実、徳永エリ、石川知裕、臼木秀剛、畠山和也の各氏 ©財界さっぽろ

 通常国会が終盤を迎え、各党とも参院選をにらんだ動きを活発化させている。地元代議士や地方議員との挨拶回りや都市部での街頭演説、さらにはハコモノと呼ばれる政治資金パーティーには各党の大物が登場。それぞれに支援を訴えている。またそれぞれ有力候補2人を抱える自民・立憲両党道連は定期大会を実施。組織の引き締めにも力を入れる。

 その中で、自民・立憲両党本部は5月中旬にそれぞれ世論調査を実施。本誌は道選挙区の結果を入手した。

 両調査ともトップは長谷川氏で、唯一20ポイントを超える結果。現職としての高い知名度、党内各部会や委員会で道内経済界の要望に応える“突破力”に期待する声が多く、また総務副大臣時代にはコロナ関連予算で道内自治体の首長が多く“世話になった”。

 当サイト5月13日の記事では4月中旬時点の自民調査の数字を掲載したが、ここから若干の変動はあるものの高い支持を集めているのは間違いなく、一歩抜け出した格好だ。

 一方、2番手は立憲の徳永氏。16ポイントから17ポイント見当で、3番手以降を引き離しつつある。立憲現職として連合北海道が推薦。道農民連盟を中心に1次産業からも一定の支持を得ている。

 続いて立憲の石川氏が自民調査では13ポイント弱、立憲調査では8ポイント台と数字に開きこそあるものの、3番手に。自民の調査では4番手の船橋氏と、立憲の調査では共産の畠山氏を加えた3人での争いだが、どちらの調査も1ポイント未満の僅差で最後のイスを争っている。

 この数字に最も焦りを感じているのが船橋氏の陣営だ。前出の4月の自民調査から伸ばすどころかポイントを落としている。

 原因は複数ある。3年前の19年参院選で高橋はるみ・岩本剛人両氏を擁立した自民道連は、前知事で圧倒的な知名度を持つ高橋氏の当選は堅いとして自民の道内各支部に「100対ゼロ」で岩本氏を支援するよう働きかけ、当選に導いた。

 それは同年の知事選を契機にできた道内国会議員・地方議員の亀裂を深めることにも繋がったが、ともあれ議席を確保するという結果は出した。

 だが今回、党本部や道連は支援団体に対し、長谷川氏より船橋氏に支援を傾斜配分することを求めているものの、3年前に比べるとその働きかけが弱い。

 もう1つは長谷川氏に比べ、船橋氏自身の頑張りが伝わっていない、あるいは自民支持層に見えてこないことだ。

「長谷川さんは1日200本、自ら電話やメールなどで支援のお願いをしていると豪語している。対して船橋さんはあまりそういう話が聞こえてこない。選挙は自分ひとりでやるものではないが、組織があったとて、自らが先頭に立つ姿勢がなければ、本来の力が発揮されることはない」(自民関係者)

 船橋氏と選対本部や秘書との間で連携が取れていない、という指摘もある。5月16日、船橋氏は札幌市中央区で選挙事務所の開設式を行った。地元・オホーツクの元大物代議士で選対最高顧問に就任した武部勤氏や連合後援会長の紫藤正行氏、道内国会議員らが参列し神事などを行ったが、ここに複数の後援会関係者が招かれていなかった、というのだ。

「報道や船橋さんのSNSで事務所開きを知った、という人も多く『いったいどうなっているんだ』とカンカンになる後援会関係者もいた」(道内マスコミ)

 船橋陣営幹部は「事務所が狭いため、新型コロナウイルス感染予防の観点から、参列者を大きく絞り込んで行った上で、お呼びしなかった後援会の方々には後日、開設の報告を案内する予定でした」と釈明する。

 後援者の1人は「後日、船橋さんからお詫びの電話があった。コロナという事情があるのはもちろんわかるが、それでも開設前にひとこと、電話でも訪問でもいいので伝える細やかさがあってしかるべきではないのか。気の利く秘書や選挙を知っている人なら、必ずそういうことをするはず」と指摘する。

 3番手を争う立憲・石川氏にとって、こうした船橋氏のもたつきは好材料だが、石川氏陣営は連合北海道の推薦が得られず、組合や地方議員の支援があまり期待できない中、楽観視は到底できないとして気を引き締めている。

 立憲関係者は「連合傘下外の組合や、組合と関係の深い企業・団体、さらには出身の函館ラ・サール高校人脈など、石川さん自身のありとあらゆる縁を駆使して、実のある地域回りをしている印象だ。石川さんに事実上の後継指名をした鉢呂吉雄さんが6年前、3議席目に滑り込んだ際に地方議員や組合幹部のOBが団結して各地で支援の輪を広げたが、今回も彼らが鉢呂さん自身も含めて石川さん応援で動いている」と明かす。

 さらに地元の十勝では、連合北海道の地域協議会や道農民連盟が石川氏に推薦を出した。組織の力が分散することを嫌うこれら団体が、上部組織の決定と異なってこうした対応を取るのは異例だ。

「こういう対応ができる、ということがほかの地域に伝われば、表だってはできなくとも、石川氏支援の動きがでてくる可能性もある」と前出の立憲関係者は明かす。

 目下、水面下で激しい争いが繰り広げられている定数3の北海道選挙区。船橋・石川両氏は、安全圏にいるであろう長谷川・徳永両氏の票をどれだけ自らに引き入れるかが、3議席目のゴールに繋がる。好評発売中の月刊財界さっぽろ2022年6月号では自民・立憲両党の“身内の争い”について、どこよりも詳しい人物相関図付きで解説している。

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