北海道文教大学

(わたなべ・としひろ)1952年日高管内門別町(現日高町)生まれ。77年東京農業大学農学部卒業。79年同大大学院修士課程修了。北海道栄養短期大学助手、講師を経て89年東京農業大学生物産業学部食品科学科講師、2000年同大教授に就任。東京農大バイオインダストリー社長などを経て14年同大副学長に就任。18年北海道文教大学学長に就任。博士(農芸化学)。
独自の体験ファースト型カリキュラムで探究心を刺激する
――就職実績は引き続き好調と聞いています。
渡部 2024年度の詳細はまだ発表に至っていませんが、実績は例年通り。「就職の文教」と言われていますが就職率の高さだけではなく、自分のやりたい仕事に就けるようキャリア教育にも注力しています。
――具体的な施策は。
渡部 社会性を学生のうちに身につけられるよう、企業との連携に力を入れています。連携協定先は昨年7月末に100件を越え、直近では125件に増えています。連携事業の具体例を紹介すると、健康栄養学科では企業の商品を活用したレシピの発案。そのレシピを連携先のスーパーのチラシに掲載したり、店舗内でレシピを配布するなどの取り組みを行っています。
また作業療法学科では、教員や学生が連携先の企業のフリースペースを活用し、住民向けの健康体操なども行っていますね。
また、岩手県の病院とは昨年、当該病院の奨学金制度を利用する学生の進学先として、本学を紹介いただくなどの協定を締結しました。今年4月に1人目の学生が入学しています。
――授業やカリキュラムにおける新しい取り組みは。
渡部 〝体験ファースト〟による学修者本位の学びの実現を目指して、体験型の授業を座学に先行して行うカリキュラムを取り入れています。
――狙いは。
渡部 例えばスポーツの場合、体験から楽しさを知ることで継続性が生まれ、さらに上手になりたくて勉強や練習をする。これと同じスタイルにしようと思ったのがきっかけです。
健康栄養学科では、実際に料理を作って食べ、おいしさや食と健康の関わりに興味が持ててから知識と理論を学んでいく。こうすることが学生の探究心をより刺激するのでは、と思っています。
――学生の反応はどうですか。
渡部 今年度、理学療法学科の実習科目を4年生から1年生へカリキュラム変更したところ、体験学習から生まれた疑問を自ら理論で学ぶなど、狙い通りの探究心を持つようになりました。
今後はディスカッションやコミュニケーションを積極的に行えるように、実習の中でグループ学習も取り入れられるように進化させていくつもりです。
――留学生の受け入れも増えているようですね。
渡部 コロナ禍が明け、中国やモンゴルなど7カ国から外国人留学生を受け入れています。海外協定校も15カ国、48校に増えています。ただ受け入れるだけではなく、異文化交流の機会も増やしています。モンゴルからの馬頭琴を得意とする留学生には、イベントで演奏の機会を設けました。
海外交流という点では、今年2月にスリランカへ野球道具を贈りました。スリランカ日本大使館にて、本学の野球部員18人も参加して贈呈式を執り行いました。
――多様な取り組みをしているのですね。
渡部 今年4月には、新たな視点で食育を広めたいという思いのもと、本学の学生で結成した食育アイドル「えにわっ娘」「イザリス」が、「第9回食育活動表彰」の農林水産大臣賞を受賞しました。学生の活動が評価され、大変うれしい限りです。
部活動では、野球部が念願の札幌6大学1部へ初昇格しました。また、本学には女子アイスホッケー日本代表選手が在籍しており、先日行われた世界選手権で7位入賞に貢献しました。
――カーボンニュートラルの取り組みも活発ですね。
渡部 再エネ事業は、環境省の「TPOモデルによる建物間融通モデル創出事業」に採択されました。校舎の屋根に太陽光パネルを設置する工事がこれから始まる予定です。災害時に恵庭市体育館へ電力供給を行うなど、今後はさらに社会性の高い役割も担っていきたいと考えています。
――今後の大学教育のあるべき姿はどのようにお考えでしょう。
渡部 専門性に加えて、人間教育がさらに重要になる。異分野や異民族の人に会ったり、経験したことがない場所に行き、何かに挑戦したり達成するということが大切。キャンパスにとどまっている教育ではダメです。今後も社会環境の変化に柔軟に対応できる人材を育成できるよう、教育内容をブラッシュアップしていきます。


