ほっかいどうデータベース

北海道情報大学

渡部 重十学長
(わたなべ・しげと)東北大学理学研究科地球物理学専攻博士課程後期修了(理学博士)。JAXA、ISASのロケット専門委員、地球電磁気・地球惑星圏学会会長などを歴任。北海道大学名誉教授などを兼任。2014年から同大経営情報学部教授、21年から同大副学長。25年4月から現職。

実践的なIT教育で企業や国際社会で活躍できる人材へ

 ――今年4月に学長に就任されました。今後の方針は。

 渡部 少子化が進展する中、大学への進学者数にも変化が生じています。社会のニーズに合致した教育研究に取り組み、常に選定され続ける大学であり続けなければいけません。

 本学の理念「情報化社会の新しい大学と学問の創造」に立ち返り、高度な情報技術とその変革(DX)を基盤に、社会の課題解決を担う人材を育成しています。例えば、「経営のために情報を学ぶ」という視点に留まらず「情報技術を基盤として修得した知識やスキルが、経営、システム開発、宇宙、医療、デザインなどの各分野における課題解決に貢献する」という考え方です。

 現在、あらゆる業界でICTやAIの活用は不可欠です。従来の学問領域の枠を超え、成長分野で活躍する人材の育成を一層加速させるため、来年度より「経営情報学部」を「総合情報学部」へ、「先端経営学科」を「経営情報学科」へ、そして大学院「経営情報学研究科」を「総合情報学研究科」へと、名称変更を計画しています。

 ――教育内容の変化は。

 渡部 「総合情報学部」では、情報科学、数理・データサイエンス、AIといった基盤となる情報技術に加え、実践的な科目を多く配置しています。現代社会の多様な問題に対し、ICTやAIを活用して持続可能な社会の実現に貢献できる、実践的な応用力を育成します。

 ――学内でもICTを積極的に活用し、学習の個別最適化を行ってきました。

 渡部 本学の学習管理システム「POLITE」を活用し、いつでもどこでも学習できる体制を整えています。このシステムを用い、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中も、教育を滞りなく継続できました。本学の教員が作成した豊富な授業コンテンツの活用で、学習者のペースで効率的な予習、復習が可能です。対面とオンラインを組み合わせた反転授業も推進しており、学習者や学習ニーズの多様化に対応しています。

 さらに、新たな取り組みとして、AIを活用した本学独自の「AI教員」の試験運用を開始しました。これにより、学習者のレベルに合わせて学習を進めることができます。文章と音声で授業を進めることはもちろんのこと、AIクラスメートとの共同作業も可能です。質疑応答はもちろん、時間や場所にとらわれずに質の高い学習が可能で、国際的な対応もしています。

 まずは全国の10カ所にある教育センターで学習している通信教育部の学生から利用を推進し、今後、拡大していく予定です。

 ――社会的にもAIの活用が進んでいます。

 渡部 私たちは、人工知能(AI)をあくまで道具として捉えています。それを社会にどのように活用していくかが今後の重要な研究分野です。情報技術を基盤とした大学として、AIの活用方法を授業にも積極的に取り入れています。卒業研究ではAIを活用した多くの発表がありました。AIデータ活用コンソーシアムが主催する「観光情報データを用いた生成AI活用チャレンジ」で本学のチームが優秀賞を受賞するなど、具体的な成果も上げています。

 ――総合型選抜の「起業・スタートアップ人材育成枠」も特徴的です。

 渡部 本学では、独自の入学選抜方法を設けています。本学教員と共に課題解決のアイデアを検討し、3~4カ月をかけて資料作成とプレゼンテーションを行います。その結果に基づいて合否を判定します。入学後は、起業相談やコンテスト、ワークショップといった活動に参加することで、情報技術だけでなくリーダーシップなどの能力も高めていきます。卒業後に実際に起業した卒業生や在学中に起業する学生もいます。

 ――昨年度から「国際情報プログラム」によるグローバル人材の育成も開始しました。

 渡部 海外協力大学と連携し、国際社会で活躍する情報エキスパートを育成するプログラムを展開しています。海外の大学とのオンライン講義や短期留学などを通じて、グローバルな視点から情報技術をさらに深化させます。

 ――学内外でのアクティブラーニングも積極的です。

 渡部 学内では、グループワークやプロジェクト活動など、実践的な学びを重視しています。切磋琢磨できる仲間や、各分野に精通した教員との活発な意見交換も、本学の大きな強みです。

 学外においては、地域と連携し、自治体や企業の課題を情報技術で解決する実践的な学びも実施しています。本学が所在する江別市をはじめ、道内の市町村と連携し、住民の健康促進や地域振興などに貢献してきました。

 ――情報を学ぶ高校生に伝えたいことは。

 渡部 社会の進歩と人類の福祉への寄与が大学の使命です。情報技術は今や私たちの生活に不可欠なものとなりました。情報なくしては、私たちの豊かな生活を維持できません。私たちの未来をより豊かに、そして持続可能な社会にしていくために、社会のさまざまな課題を解決できる人になるために、皆さんと一緒に未来へ向かって歩んでいきましょう。

AI教員の使用画面。文章と音声で質疑応答が可能