【財界さっぽろ編集部総力取材】10/31投開票・衆院選北海道内“最深”情勢(2)4区・5区・6区

 財界さっぽろオンラインでは、公示中の第49回衆議院総選挙について、4回に分け、北海道内12の小選挙区の終盤情勢をお届けする。今回は道4区、5区、6区について。

 以下、文中すべて敬称略。顔写真や各候補の訴えは公式WebサイトやSNSなども確認のこと。現在行われている期日前投票、31日の投票日に向けてぜひとも参考にされたい。

 (文中の政党略称=自民→自由民主党、立民→立憲民主党、公明→公明党、共産→日本共産党、国民→国民民主党、社民→社民党、れいわ→れいわ新選組、N党→NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)

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〈4区〉=札幌市西区の一部、手稲区、小樽市、島牧村、寿都町、黒松内町、蘭越町、ニセコ町、真狩村、留寿都村、喜茂別町、京極町、倶知安町、共和町、岩内町、泊村、神恵内村、積丹町、古平町、仁木町、余市町、赤井川村

大築 紅葉(おおつき・くれは)38歳 新人 立民公認、社民道連合支持
元フジテレビ記者
https://kurehaotsuki.jp/

中村 裕之(なかむら・ひろゆき)60歳 前職(3期)自民公認、公明推薦
農林水産副大臣、元道議会議員
https://www.hiro-nakamura.jp/

 4区は紆余曲折の末、自民前職・中村裕之と立憲新人・大築紅葉の一騎打ちの構図になった。

 党内での不適切発言をきっかけに立憲の4区総支部長だった本多平直が7月末、不出馬を表明。白羽の矢が立ったのが、元フジテレビ記者の大築だ。

 8月中旬に大築は出馬表明の記者会見を実施。その時、道内選出の国会議員が「野党担当の記者をしていた時、明るいキャラクターでみんなに好かれていた」と評した通り、選挙までの時間が少なかったものの、地元での浸透は進む。

 陣営は小樽市出身という地縁も最大限にアピール。子育て世代の30代女性という属性も有権者に受けているようだ。

 さらに大築陣営にとって朗報が10月中旬に舞い込む。共産が7月中旬に擁立を発表した候補を取り下げた。メディア関係者の間では選挙戦が進むに従い、大築が追い上げている、との見方が浮上している。

 ただし、中村陣営の関係者は「相手候補の追い上げと他の人にも言われるが、現場ではさほど感じない。実際、相手候補の街頭宣伝にそんなに人は集まっていない」と自信をのぞかせる。

 中村はもともと郡部で強い。前回選挙で本多に1万3400票差で競り勝ったが、その数字は後志郡部の得票差とほぼ同じだ。

 逆に前回、中村が唯一、負けたエリアが札幌市手稲区だ。4区内でもっとも有権者数が多い重要エリアである。

 そのため地元自民勢力は当初から「手稲区でも中村に勝たせる」と意気込んでいた。

 前出の中村陣営関係者は「自民も立憲もコアな支持者はそんなに多くない。普段は政治に関心の薄い層が中村、大築のどちらに多く流れるかで手稲区の勝敗は決まる。現場を回っている感覚とすれば、自民で別にいいんじゃないか、というような雰囲気を感じている」と話す。


〈5区〉=札幌市厚別区、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村

大津 伸太郎(おおつ・しんたろう)56歳 新人
元警備会社社員、元清涼飲料メーカー社員
https://www.facebook.com/profile.php?id=100064818338814

和田 義明(わだ・よしあき)50歳 前職(2期)自民公認、公明推薦
元内閣府政務官、元衆院議員秘書
https://yoshiakiwada.com/

橋本 美香(はしもと・みか)51歳 新人 共産公認
共産札幌白石・厚別地区副委員長、元社会福祉法人職員
https://twitter.com/hashimika1026

池田 真紀(いけだ・まき)49歳 前職(1期)立民公認、社民道連合推薦
元東京都板橋区職員、社会福祉士
https://ikemaki.jp/

 1994年からの小選挙区制導入以降、5区は自民の大物政治家・町村信孝の絶対的テリトリーだった。ところが、2009年の政権交代では全国で民主党への追い風が吹き荒れた。そのあおりを受ける形で町村は過去3度も退けていた民主(当時)の小林千代美に初黒星を喫した。

 しかし、小林は自身の選対委員長代行の公職選挙法違反や北教組からの不正な政治献金問題が発覚し、10年6月に辞職した。

 比例で復活していた町村は、一度辞職して補選に出馬。他の候補者を圧倒し、あるじに返り咲いた。その後、2度(12年、14年)の防衛を果たすものの、病が町村を襲った。15年6月に町村は亡くなった。

 翌16年4月に補選が実施され、後継として町村の次女の夫である和田義明が立起した。

 和田は早稲田大学卒業後、三菱商事に入社。海外でのビジネス経験もあるエリートサラリーマンだったが、14年に退職。その後は町村事務所の秘書を務めていた。

 一方、野党各党はそれぞれ候補者擁立を目指していたが、前札幌市長の上田文雄らを中心とする市民団体が仲介役となり、無所属での野党統一候補を擁立する話がまとまった。協議の末、14年の衆院選で2区に出馬し、敗れた池田真紀に大役が巡ってきた。

 民進・共産・社民・生活の党と山本太郎のなかまたちが共闘したことから、池田は“野党共闘のジャンヌ・ダルク”と呼ばれた。

 池田はシングルマザーで社会福祉士や介護士などの資格を持つ福祉分野のスペシャリストだ。

 この補選は町村の弔い合戦であることと、野党共闘が初めて実現ということが相まって、全国的に注目を強めた。

 事前の世論調査では一時、池田優勢と報じられたが、約1万2000票差で和田に軍配が上がった。

 リターンマッチは17年9月。過去に2度同区から出馬して町村に敗れた幸福の森山佳則も立起したが、実質的には和田と池田の一騎打ち。ふたを開ければ和田が再選を果たしたものの、池田は約6700票差に詰めより、比例復活で初当選を果たした。

 今回の衆院選では和田と池田のほか、共産から橋本美香、無所属の大津伸太郎が立候補。道内最多の4人で議席を争う構図。現状では和田がリードしている。

 維新を除く野党は、全国289の小選挙区のうち、200以上で候補者を一本化できたと発表した。道5区は前述の通り、野党共闘の象徴区だったが、共産から橋本が立起したため、共闘とはならなかった。その理由について立憲、共産の両陣営は「本部が決定したこと」と同じ説明を口にしている。

 立憲関係者は「10月の調査では共産党員でありながら池田を支持する声も一定数ある。過去2回、統一候補として戦ってきた評価では」と話す。

 一方、共産関係者はこう語る。

「党として前回失った比例の1議席の奪還が最優先ということではないか。なんとしても有権者数が多い札幌市内に候補を立てたかったということだろう。札幌市内の選挙区でいうと5区は厚別区だけ。本当であれば3区か4区に出したかったはずだが、両区とも立憲の候補者が新人であることを考慮して出馬を取りやめたと思う。池田は前回小選挙区では敗れたものの、和田に約6700票差と善戦。今回も小選挙区で勝てなかったとしても比例復活の公算が高いことも共闘が実現しなかった理由だろう」

 池田陣営は「誰もおいてきぼりにしない社会」の実現をモットーに、コロナ対策や社会福祉の向上などを訴える。

 橋本は16年補選、17年衆院選で5区の共産候補となるも、いずれも池田が統一候補となったため、今回が初の国政選挙挑戦。社会的格差や貧困の是正などを呼びかける。

 必然的に池田と橋本で票を食い合うため、和田優勢の追い風がさらに強くなった。

 選挙区内すべての自治体で後援会事務所を開設。若手経営者らとの結びつきを強化するなど、地固めに余念がない。支援者は「町村もフロンティアのメンバーらと地盤を強固なものにしてきた。直言居士なところも似てきた」と評する。

 大津は元会社員。13年の参院選で三重選挙区から無所属で出馬するも落選。今回は2度目の国政選挙挑戦だ。SNSの活用やポスター掲示に注力しながら「利権が集中する政党政治を終わらせたい」と訴える。


〈6区〉=旭川市、士別市、名寄市、富良野市、鷹栖町、東神楽町、当麻町、比布町、愛別町、上川町、東川町、美瑛町、上富良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村、和寒町、剣淵町、下川町、美深町、音威子府村、中川町、幌加内町

齊藤 忠行(さいとう・ただゆき)30歳 新人 N党公認
政治団体代表、元メディア運営会社社員
https://twitter.com/GoooonYukiyuki

西川 将人(にしかわ・まさひと)52歳 新人 立民公認、社民道連合支持
元旭川市長、元日本航空パイロット
https://nishikawa-masahito.jp/

東 国幹(あずま・くによし)53歳 新人 自民公認、公明・大地推薦
元道議会議員、元旭川市議会議員
https://www.azumajapan.com/

 6区に出馬するのは、届け出順にNHK党・斉藤忠行、立憲民主党・西川将人、自民党・東国幹の3人。

 西川は旭川市長を辞め、衆院選に立起。市政トップを4期15年務め、抜群の知名度を誇る。佐々木隆博から後継指名を受けた段階では、陣営に楽観ムードが漂っていた。

 ところが、9月の旭川市長選で自民推薦候補に、自身の後継候補が大敗。このあたりから雲行きが怪しくなってきた。

「昨秋、コロナの大規模クラスターが市内の医療機関で発生した。今春には市内の中学生がいじめを受けた疑いがある問題が浮上。市の対応が批判された。先の市長選は、その影響をモロに受けた格好だ。衆院選も猛烈な逆風の中、戦っている」(地元立憲幹部)

 一気呵成にいきたい元道議の東は、市政批判層を味方につける。連合後援会長に上川地区農協組合長会会長・植崎博行を据え、郡部を中心とした農業票の切り崩しを狙う。郡部をどぶ板でまわり、支持拡大を図ってきた。

 実は自民党本部は10月に入り3回、情勢調査を実施している。10月7日から同10日にかけては、全国すべての小選挙区が対象となった。その後、10月15日~同17日、22日~同24日の追加調査では、6区は対象外となった。自民関係者によれば、勝敗がある程度読める選挙区は、追加調査はおこなわない方針だという。

 自民6区支部幹部は「最初の調査で、東が西川に対し、約11ポイントリードしていた。これで党本部は勝敗は決したと判断したとみられる。しかし、メディアの情勢調査の中には、西川が上回っているものもある。選挙区をまわっていても、肌感覚でここまでの大きな差がない印象だ。優勢か伝えられているが、最後まで油断できない」と気を引き締める。

 斉藤は独自の戦いだが、支持はなかなか広がっていない。