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天使大学

二宮 信一学長
(にのみや・しんいち)1954年生まれ。2011年北海道大学大学院教育学研究院博士後期課程単位取得満期退学。北海道教育大学教育学部釧路校教授、特任教授を経て、23年4月天使大学看護栄養学部教養教育科教授、25年4月から現職。

カトリック精神を深め、次の時代を見据えた職業人を育成

 ――今年度から学長に就任されました。

 二宮 18歳人口の減少など加速度的に社会構造が変化する中、これまでの延長線上で大学運営を行うことは厳しい。こうした中でも本学の使命は、看護師や管理栄養士といった〝職業人を養成する〟ことです。この事実を改めて認識した上で、次の時代を見据えた人材育成と大学運営をしていきたい。

 ――具体的には。

 二宮 職業人になることは前提の上、自身が実際にどう活躍できるか、社会のニーズをくみ取れる人材になってほしいと考えています。

 また、少子高齢化による人口減少や、北海道特有の広大な土地面積に伴う医療格差も課題です。予防医学の観点からも栄養学の普及や、へき地での支援体制の構築などが求められます。

 ――時代の変化への適応を見据えた人材を輩出していく。

 二宮 これまでの慣例通りにはいかないと考えています。終身雇用が崩壊し人材が流動化している現代においては、専門職としてのキャリア形成が重要です。社会の変化や多様なニーズに応えていける視野の広さと多職種連携などの力量の形成が必要で、それに対応する科目の設定も現代の大学教育には求められているのではないでしょうか。

 ――多職種連携の授業が特徴的です。

 二宮 「看護」と「栄養」は、学習内容も医療現場でも非常に結びつきが強い分野です。保健・医療・福祉をめぐる社会的状況が大きな転換期にある今、これらがチームの中で、看護師と管理栄養士が連携・協働する能力は不可欠といえます。

 こうした観点から本学では、3~4年次に学科混成チームを編成した授業を展開しています。これにより〝栄養に強い看護師〟と〝医療に強い管理栄養士〟を育成します。

 ――貴学の独自性とは。

 二宮 カトリック大学としての「人間愛」を育めることです。看護師や管理栄養士は、病気を患った人や高齢者、障がい者など多様な人と接するわけですから、常に相手に寄り添う必要があります。心と心の触れ合いが求められるからこそ、他者を受け入れていく精神が必要です。その精神をしっかりと学んだ学生を育てていきたいですね。

 ――国家試験の合格率が毎年好調です。

 二宮 昨年度は看護師97・9%、管理栄養士が80・2%と、どちらも全国平均を上回りました。目的意識を持って入学する学生がいることはもちろん、その意識が周りに波及し、自主的に勉学に励む学生も多数見られます。

 ――就職も順調です。

 二宮 就職担当職員の尽力もあり、看護学科、栄養学科ともに100%を達成しました。また、大学院への進学率も高く、学びに対する意欲が高い学生が多いのも本学の特徴です。

 ――今後のビジョンは。

 二宮 私は40年以上にわたり、教育現場に携わってきましたが、本学に来たのは2年前です。学生への教育や指導は教員が一番知っているため、そこは先生方に委ねています。

 私の役割は大学運営における〝組織力の向上〟です。キリスト教の精神を教職員たちと共有することや教育はもちろん、現場の意見をしっかり把握し改善につなげることで、健全な組織をつくり上げていきたい。それが長期的に見ても教育の質の高さにつながると考えています。組織構造に例えると、逆ピラミッド図です。現場に最も近い教職員たちを組織の最上位に位置して、それを支えるために、最下層に私がいる。私の役割は一番下に構えて学生・教職員の声に耳を傾けることでしょう。

 ――そのための施策は。

 二宮 本学が抱える課題や改善点に対して、教職員との議論を重ねています。志が高く優秀な教職員が多いことから、さまざまなテーマが上がってきています。これら一つひとつに優先順位をつけていき、行動に移します。

 ――学校法人「藤天使学園」が発足し、1年が経過しました。

 二宮 カトリック教育のさらなる普及をはじめ、姉妹校である藤女子中学校・高等学校、藤女子大学の職員同士との交流を活発にしていきたい。互いが協同することで、さまざまなアイデアが生まれ効率化が図れると考えています。本学からも積極的に提案し、アプローチしていきます。

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