北星学園大学・北星学園大学短期大学部

(なかむら・かずひこ)1965年小樽市生まれ。87年北星学園大学文学部社会福祉学科卒業。同大大学院文学研究科社会福祉学専攻修士課程修了。龍谷大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。ソーシャルワーカーとして勤務後、道内外の大学・専門学校で助教授、教授を務める。17年から北星学園大学で学習サポートセンター長、学生部長、副学長を歴任。24年から現職。博士(社会福祉学)。
グローバルな視野に立ち、社会課題に働きかける力を育む
――〝福祉の北星〟といわれるほど福祉分野の国家試験に強く、公務員の就職実績も豊富です。
中村 伝統的に社会福祉分野の国家資格に強く、2024年度の社会福祉士と精神保健福祉士の合格者数は例年同様ですが、全道で一番多く、公務員試験合格者数は約190人で、過去最多でした。この増加要因については詳細な分析が必要ですが、喜ばしい結果でした。 就職率も大学全体で96%を越えてこちらも順調です。
――今年度は入学者も大変多かったですね。
中村 25年度の入学者数は、定員ベースで23年度や24年度と比べて110人以上増加しています。多くの新入生を迎えることができました。入試施策として、一般選抜で初めてⅡ期入試を実施したことが効果を発揮し、想定以上の受験者が集まりました。
Ⅰ期で不合格だった受験者の再入試や他大学の合格後に再チャレンジする人もいたようです。各学部や学科でもプロモーションを行ってきたことが奏功しました。全体的に前向きな評価を得ていると認識しています。
――貴学の独自性について教えて下さい。
中村 米国の女性宣教師サラ・C・スミス氏によって創設された学園に位置付く本学には、キリスト教精神に基づく人格教育を基礎として人間性や社会性、国際性を備えた人材育成を教育目標としており、現在でも入学式や卒業式などでは、讃美歌の演奏や斉唱、聖書朗読などが行われます。
また、真面目さや落ち着きといった雰囲気がある。そういったことで卒業生や保護者、高校の先生などからも評価されているようです。
さらに、大学の理想とする「社会に役立つ人材」の輩出に重きを置いています。個々の活動やゼミ活動を通じて社会貢献を目指し、教職員が一体となって、学生が社会で活躍できるようサポートもしています。
――来年度から新学部を設置します。
中村 26年度に「国際学部グローバル・イノベーション学科」を新設します。国際的な視野を持って、社会に貢献するイノベーションを生み出せる人材を育てます。そのため、課題解決型のPBL(プロジェクト型学習)を中心に現状を分析して価値を見いだし、あらゆる社会に変革をもたらす提案力や実践力を身につけます。
PBLはすでに本学既設学科のカリキュラムやゼミ活動にも、多く取り入れられていますが、同学部でも積極的に導入していきます。
また27年度から、すべての学科で新しいカリキュラムへと見直しすることが決定しているほか、理系学部の開設計画も進行中です。
今後も、伝統や文化を重視しつつ「未来の学生のため」に改革を進めていきます。
――学長2年目の展望を教えて下さい。
中村 「地域社会に貢献できる大学としてあり続けること」が重要な課題と考えています。インバウンド需要などに対応して、26年度からは日本語教員養成プログラムの導入を文学部で進めます。道内をはじめ国内・国外の生徒や保護者にとってもさらに魅力ある大学づくりを目指していきます。
具体的な一例をあげると少人数教育です。研究分野で実績のある教員も多く在籍しており、学生に丁寧に関わる少人数授業により、学生が自ら学び、気づきを得ることができるようになります。
また現代は、社会課題が複雑に絡み合っており、今後は学部と学科が横断的に交流、連携していくことが求められています。
――社会や地域との連携にも力を入れています。
中村 大学での学びを社会課題の解決に結びつけ、社会での実装につなげていくことを重視しており、各学部や学科、ゼミ単位で社会貢献活動が行われています。例えば、奥尻島の海岸に漂着したゴミを加工し、コースターなどを製作し販売したり、苫小牧市では海のゴミ掃除プロジェクトなども行いました。
また、今年5月に「北海道行政書士会」と包括的な協力連携協定を締結しました。道内の大学では初めての試みです。すでに経済学科・経済法学科のゼミでは、行政書士を招き、連携授業なども行われ、空き家対策などを継続的に研究しています。
このほか、毎年キャンパス内に道内の高校生を招いてイングリッシュキャンプを実施しています。公立、私立を問わず、英語教育に力を入れている高校から認知されており、大変な人気となっています。定員をオーバーしてお断りするケースもあるのですが、今後も地域社会への貢献として続けていきます。



