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Interview

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目指すは「世界の北海道」掲載号:2018年11月

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水島徹治 北海道開発局長

北海道の人口減少は本州よりも10年以上速く進んでいる。高齢化も10年速い。地方の過疎化も急速に進んでいる。「地方が疲弊すれば食と観光で稼がなければならない北海道が立ちゆかなくなる」と語る水島徹治北海道開発局長にご登場願った。

災害時はできる限りの自治体支援を

水島徹治氏、58歳。旭川生まれの札幌育ち。札幌南高から北大工学部に進み、1985年北大大学院工学研究科修了後、旧北海道開発庁(現・国土交通省)に入庁。 開発局河川工事課長、同開発調整課長、関東地方整備局常陸河川国道事務所長、北海道局参事官、開発局事業振興部長などを歴任。7月31日付で開発局長に就任した。

   ◇    ◇

――胆振東部大地震で、国直轄の施設でも大きな被害が出たようですが。

水島 日高自動車道の路面段差、鵡川の堤防亀裂、厚真ダム余水吐への土砂流入などがありましたが、緊急復旧工事などの対応を速やかにおこないました。  

これらは道民生活に直接的にはほとんど影響を及ぼすようなものではありませんでした。しかし、勇払東部地区で進めてきた国営かんがい排水事業では、導水路のパイプラインがいたるところで破断、陥没、漏水するといった状況で、かなりの被害が発生しました。

この事業は01年度に開始して、もう90%以上できていたんですが、完成直前にこうした事態が発生しました。まだ調査中で何とも言えないのですが、復旧までには、ある程度の時間が必要かと思っています。

――被災地支援、自治体支援については。

水島 大昔は、国道とか国管理の河川とか、直轄の被災にだけ対応していましたが、近年は自治体支援にもかなり積極的に取り組んでいます。例えば、08年、国交省はTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)を創設しました。

それ以前も被災自治体への支援は実施していましたが、このことにより事前に人員や機材の派遣体制を確保し、平時より訓練もし、より迅速かつ効果的な対応が可能となりました。

今回もTEC-FORCEとして国交省の職員を、直ちに自治体等へ派遣し、被災状況調査や道路啓開、河川を埋めた土砂の除去、専門家派遣による技術的支援等をおこないました。

TEC-FORCEは全国規模のもので、今回は北海道開発局のほかに、東北・北陸・関東・中部地方整備局からも駆けつました。

災害対策用機械なども全国から集結。被災地へ給水車や照明車、衛星通信車などが派遣されました。

また、北陸地方整備局からは、大型の油の回収船「白山」が9月8日に苫小牧港に入港。入浴・洗濯・給水・重油支援を9日間にわたっておこないました。

さらに、厚真川は道庁が管理する河川ですが、その支流である日高幌内川で発生した河道閉塞への対応を開発局でおこなうこととしました。今はまだ、さし迫った危険はないのですが、大雨が降ったときに、中越地震のときのように、天然ダムになって洪水を起こす心配があります。こうした2次災害を防ぐための自治体支援も、しっかり進めていきたいと思っています。 

――地震の前日には台風21号で被害が出ているし、一昨年も豪雨で大きな被害が発生するなど、近年は災害が激甚化しています。

水島 首長とお話する機会がよくありますが、皆さん口々に、「最近は雨の降り方が変わった。治水対策をもっと進めてほしい」という趣旨の話をされます。

気候変動は、緯度が高くなるほど影響を受けやすいと言われており、日本の中では北海道が一番影響を受けるということになります。

気候変動が進むということは気候の極端化が進むということで、即ち、洪水が起こりやすくなっていくということです。開発局では、おととしの大雨を踏まえ、気候変動に対応した治水はどうあるべきか、いち早く検討を進めています。

具体的な動きとしては、ソフト面では、プッシュ型の情報配信、市町村のハザードマップの作成支援、タイムラインの作成支援など。

ハード面では今年度の新規事業で、雨竜川の北電のダムに治水機能を持たせるという雨竜川再生事業に着手したところであり、ハード・ソフト両面で必要な対策を進めていきたいと思っています。

北海道総合開発計画8つの数値目標

――第8期北海道総合開発計画がスタートして2年半たちました。

水島 第8期北海道総合開発計画を簡潔に言うと、北海道の強みである「食」と「観光」を戦略産業と位置づけ、「世界の北海道」を目指すというもので、同時に、強靱で持続可能な国土を形成していこうと。

計画が閣議決定されたのが16年3月で、私はその直後の4月に北海道局の参事官になりました。

その時期は、計画の推進方策を検討する時期で、具体的に言えば、数値目標をつくる必要がありました。そこで、「食」で3つ、「観光」で3つ、ほかに2つの、全部で8つの数値目標をつくりました。

北海道局は、このように計画をつくったり、推進方策をつくるなど、企画立案をする立場ですが、開発局は、現地でこれを実現する立場です。局長としてこの計画をしっかり進めていきたいと思っています。

――8つの数値目標を。

水島 「食」は3つです。まず「農業産出額」1兆1100億円(2014年)を、2025年には1兆2000億円にする。

農業人口はこの20年間で約40%も減りましたが、農地面積はほとんど変わっていない。人口はこれかもさらに減っていきますが、そうした中でも産出額を増やしていくために、農地の大区画化・汎用化を進め、ICTを活用したスマート農業などを推進していこうというものです。

2つめは「食料品製造業出荷額」1兆9800億円を、25年までに2兆2000億円にする。北海道は食の付加価値率が他の圏域に比べ、最も小さいんです。極端な話、北海道は作物は作るが、加工は道外で行われている。付加価値をつけるようにすれば、もっと稼げるということです。

3つめは「道産食品輸出額」660億円を、25年には1500億円にする。

日本は今後、人口が減少し市場は縮小するが、海外は人口が増加します。これからはさらに、海外に目を向けるべきということです。

「観光」についても目標は3つで、こちらはいずれも20年までの目標です。

まず、「来道外国人旅行者数」190万人を500万人まで増やし、政府の目標(訪日外国人旅行者4000万人)の達成に貢献しようということです。

それから「外国人宿泊客延数の地方部割合」27%を36%にする。観光の恩恵を、道央圏だけでなく、地方にも行き渡るようにしようと。

3つめは、「客室稼働率の季節較差」を1・7倍から1・4倍にする。北海道の端境期の旅行需要を創出し、一年を通して観光客を呼び込もうというものです。

このほか「防災体制を強化し、住民の意識向上に取り組んだ市町村の割合」を20年度に100%にする。 また「世界の北海道」選定件数を25年度に100件にする、を加えた8つを数値目標として設定しました。

なお、数値目標については社会情勢等を踏まえながら、柔軟に見直していくこととしました。

「生産空間」のサバイバルを進める

――ハードルはかなり高いのでは。

水島 最大の問題は、これから本格的な人口減少社会を迎えるということです。ある推計では、30年後には人口が半数になってしまう自治体も見受けられます。

札幌は地方から人が集まって来るので、ダム機能で、あまり極端には減らないでしょう。やはり地方部をどうしていくかということが大きな課題です。

農業、水産、観光を担っているのは地方の市町村です。そこを今、われわれは「生産空間」と呼んでいます。地方が疲弊すると「食」と「観光」で稼いでいる北海道が立ちゆかなくなる。

そこで、われわれは、北海道型地域構造の保持・形成ということで、名寄周辺と十勝南部をモデル圏域として、生産空間を守る取り組みを進めています。

――どのような形で。

水島 全国的には人口減少社会に対応するため、まずは市町村単位でコンパクト・プラス・ネットワークの街づくりを進めていますが、北海道の場合は広域分散型社会を形成しているため、はじめから、それよりも広い圏域単位で街づくりを考える必要があり、われわれはこれを北海道版コンパクト・プラス・ネットワークと呼んでいます。

圏域単位で、重層的な機能分担とネットワークによる連携を通じ、北海道型地域構造の保持・形成が図られるようにすると。

いまは生産空間のサバイバル、地域の生き残りのために非常に重要な時期です。

本来は地域が、これから何で稼いでいくのか、あるいは、どういうサービスをどの町に頼るのか等々、自身で考え、実行していかなければなりませんが、新たな発想であり、かつ圏域単位で物事を考える必要もあることから、その“場づくり”、あるいは“きっかけづくり”のために、現在、開発局がコーディネーターとしての役割を担って、将来も安心して暮らしていける地域づくりに向け、取り組みを進めて行きます。

建設業界に「働き方改革」の波が…

――開発計画を進める上で、建設業の果たす役割は非常に大きいと思いますが。

水島 私、前職は事業振興部長であり、建設業の皆様とは良く意見交換をさせていただきました。建設業の皆様は北海道総合開発計画を進めていく上で、その一翼を担っているとともに、地域の担い手、あるいは守り手でもあり、極めて重要な役割を果たしています。

今回の胆振東部地震でもそうでしたが、災害のときに真っ先に出動して、現場で復旧作業をおこなうのは建設業の皆様です。建設業なくしては、生産空間を守ることは出来ません。

――その建設業界もいま担い手の確保が悩みです。

水島 業界の一番の課題は働き方改革と、担い手の確保ではないかと思います。

今年、働き方改革関連法が成立しましたが、5年の猶予期間をおいて建設業にも時間外労働の上限規制が適用されることになりました。建設業についても残業時間が厳しく規制されるようになるということです。

北海道は冬があるので、夏場の良い時期にどんどん仕事をやりたい、冬に入る前に仕事を終わらせたい、ということで、夏場にかなり残業をしています。冬がなければ平準化しやすいのですが、冬があるので頭が痛いところです。 

それともうひとつは、高齢化が進んでいることです。ここ数年、建設業に携わる人の数はほとんど変化しておらず、まだ人手不足にはなっていませんが、平均年齢は上昇しています。

新しい人が入ってこないので、年齢の高い人が辞められない状態になっているということです。将来は確実に人手不足が生じます。

このため建設業をさらに魅力のある職場にして、新たに人が入ってくる業界にしなければなりません。

高校生や大学生が職場を選ぶ前提条件は、まずは週休2日だということをよく聞きます。働き方改革の取り組みは、魅力ある職場をつくっていき、そして、担い手を確保していくための取り組みでもあります。

例えば週休2日をきちんと取れるようにしよう、あるいは残業の少ない職場にしていこう、ということですが、そのためには、受・発注者双方が、しっかり取り組まなければなりません。

われわれ発注者として、例えば、週休2日を取れるような工期の設定をするとか、発注時期を平準化して集中させないとか、あるいは書類を簡素化するなどの取り組みを進めますので、是非、受注者側も積極的に取り組みを進めていただきたい、と思っています。

建設業がより魅力ある産業となるよう、お互いしっかり取り組んで行かなければならないと考えています。

――ありがとうございました。

=ききて/干場一之=