【財界さっぽろ編集部総力取材】10/31投開票・衆院選北海道内“最深”情勢(1)1区・2区・3区

 財界さっぽろオンラインでは、公示中の第49回衆議院総選挙について、本日から4回に分け、北海道内12の小選挙区の終盤情勢をお届けする。今回は道1区、2区、3区について。

 以下、文中すべて敬称略。顔写真や各候補の訴えは公式WebサイトやSNSなども確認のこと。現在行われている期日前投票、31日の投票日に向けてぜひとも参考にされたい。

(文中の政党略称=自民→自由民主党、立民→立憲民主党、公明→公明党、共産→日本共産党、国民→国民民主党、社民→社民党、れいわ→れいわ新選組、N党→NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)

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〈1区〉=札幌市中央区・南区・北区および西区の一部

小林 悟(こばやし・さとる)57歳 新人 維新公認、大地推薦
医師、医療法人理事長
https://o-ishin.jp/member/detail/post_173.html

道下 大樹(みちした・だいき)45歳 前職(1期) 立民公認、社民道連合支持
元道議会議員、元衆院議員秘書
https://www.michishita-daiki.jp/2021/

船橋 利実(ふなはし・としみつ)60歳 前職(2期) 自民公認、公明推薦
元財務政務官、元道議会議員
https://funahashi-toshimitsu.jp/

「2017年の前回選挙では区割りの見直しがあり、道議からの地盤であった西区の一部を失ってしまった。それでも勝てたことは自信につながった」と、2期目を目指す、立民の道下大樹の支援者はこう口にする。

 前回、元衆院副議長で民主党の重鎮・横路孝弘が勇退し、後継として、元秘書の道下が出馬した。道下は元道議(3期・札幌市西区)の45歳。

 道下の連合後援会顧問には横路、同会長には元道議の西本美嗣が就いている。横路の支援者の多くが、そのまま、道下を熱心に応援している。しかし、その応援団も高齢化が懸念される。

「選対が立ち上がって以降、常に事務所に横路、西本らがいるわけでない。ただ、横路がたまに事務所に顔を出すと、やっぱり陣営は引き締まる。緩まないように重しになっている」(立民道連関係者)

 一方で、道下陣営は若い層の支持拡大を狙う。「横路応援団との両輪で戦いに望みたい」(地元立憲関係者)

 道下陣営も3人の子どもを持つ子育て世代だ。

 地元共産との関係も悪くない。前回に続き、野党統一候補として立起した。

「本人の爽やかなルックスを含め、敵をつくるタイプではない。とくにおじいちゃん、おばあちゃん層からのウケがいい」と地元野党関係者は語る。

 反対に「女性・若者票の支持に苦心している」(地元与党関係者)のが、自民の船橋利実だ。

 前回の選挙戦は、道下との一騎打ちの構図となった。結果は1万8000票差で敗れたものの、船橋は比例ブロックで復活当選(2期目)を果たした。

 船橋は元道議(5期・北見市)の60歳。12年の衆院選では、自民サイドには横路との戦いに“尻込み”する者が多い中、公募に応じ、1区の候補となった。選挙戦では民主党(当時)への逆風もあり、横路に唯一、小選挙区で黒星をつけた。14年の選挙では比例復活もならなかった。

「船橋は切れるタイプで、政治家としては、実績も経験も道下より上だ」(地元自民関係者)

 船橋は自民党内では麻生派に所属。直近では永田町で財務大臣政務官を務めていた。

「安倍、菅政権下で、派閥の領袖である麻生太郎が長らく財務大臣に就いてきた。船橋は衆院選で苦戦が予想されるため、親分・麻生さんの計らいで大臣政務官に起用されたと聞く」と地元自民関係者は語る。

 ただ、船橋本人には一昨年発覚したIR事業を巡る汚職事件で、当時の後援会幹部から受領した政治献金の説明不足を指摘する声がいまも残る。

 一方、「首相が安倍さん、菅さんから岸田文雄さんに変わったことは間違いなくプラスだ。街宣をしていても有権者の反応・反響がよくなった」(船橋陣営)

 1022日には岸田が選挙区入り。25日には麻生のほか、同じ派閥の河野太郎も応援に入った。

 道下陣営と船橋陣営の双方が気にかけているのが、日本維新の会の新人・小林悟の存在だ。

 道下、船橋には到底及ばないが、この小林が思いのほか、支持を集めている。

 小林は今年4月の道2区補選で無所属新人で立候補。5人が乱立した選挙戦で、5552票の5番手で落選した。

「医師である小林は、コロナの感染対策の拡充を訴えている。それが無党派層の多い1区の有権者に支持が広がっている。もし、維新が比例1議席を獲得できたら、小林が復活当選するだろうとの話があるくらいだ」(地元政治関係者)

 小林が道下、船橋のどちらの層を多く取り込むのか不透明だ。

 地元自民関係者の話。

「小林の獲得票のうち、6割は道下の票を削ることになるとみられている。船橋は候補が乱立することを期待していた。船橋陣営は水面下で、維新の会北海道総支部代表で、新党大地代表である鈴木宗男に『候補を出してほしい』と打診続けていた。そこで鈴木が当初、白羽の矢を立てたのが、2区補選に無所属新人で出馬した鶴羽佳子だったとされる。しかし、鶴羽は自民の道ブロック比例候補(14位)となった。船橋陣営からは『小林よりも得票を期待できる鶴羽のほうがよかった』との声もあったが、結果として小林擁立は功を奏した」

 船橋陣営は「苦戦は続くが、前回選挙では自民党本部の最後の世論調査では8ポイント負けていたが、比例で救われた。今回、現地点での調査結果は同程度。小選挙区での勝利はもちろんだが、とにかく、引き続き船橋を国会に送り込もうと気合が入っている」としている。

 現時点で道下優位は変わらないが、道下陣営は「前回は立民発足直後だったということで、間違いなく追い風が吹いていた。今回は首相が変わった“ご祝儀”で、票の上積みの可能性は自民候補のほうがあるのではないか」と気を引き締める。


〈2区〉=札幌市北区の一部・東区

高橋 祐介(たかはし・ゆうすけ)41歳 新人 自民公認、公明推薦
元衆院議員秘書、元マーケティング会社社員
https://www.2ku-takahashi.net/

松木 謙公(まつき・けんこう)62歳 前職(5期) 立民公認、れいわ推薦、社民道連合支持
元農林水産政務官、元衆院議員秘書
https://kenko-matsuki.com/

山崎 泉(やまざき・いずみ)48歳 新人 維新公認、大地推薦
元道議会議員、元帯広市議会議員
https://www.yamazaki-izumi.com/

 元職の自民・吉川貴盛の議員辞職を受けて今年4月に行われた補欠選挙を勝ち上がり、3年半ぶりにバッジを付けた前職の松木謙公は、半年にわたり臨戦体勢を維持。大方の予想より早まった10月31日投開票の総選挙にも「スムーズに選挙戦へ移行できた」と陣営関係者は自信を見せる。

 懸念だった共産の候補擁立はなく、補選同様に野党共闘は“維持”された。「補選と違い、共同での街頭演説などもほぼ要請してこない」(前出関係者)と陣営が不思議がるほど、その存在感は薄い。

 かつて12区に国替えをしたこともある松木だが、補選を含め2区での選挙は6回目。生まれ育った北区新琴似を中心に知名度は候補者3人の中では断トツ。トレードマークの自転車や徒歩での街頭回りを精力的に行い、通行人や顔見知りと気さくに会話する姿も随所に見られる。

「演説が毎度“お茶懇”口調で緊張感が薄く、ハラハラする」(陣営幹部)といった声もあるが、各党の世論調査などでも安定してリードを保っている。

 前出幹部は「相手(自民・高橋祐介)は若く運動量もあるので、これから戦いを重ねて行くとすれば脅威になる。圧倒的な差を付けて勝ちたい」と手綱を引き締めている。

 一方、自民新人の高橋祐介は7月に道選挙区の党支部長となったが、地縁がほぼなく、全くゼロからの体制づくりとなって動き出しは遅れた。

 ある自民市議は「議員や2区内の自民支部関係者が三々五々、支援をお願いしている状況で、組織戦ができているとは言いがたい」と明かす。

 知名度不足は否めない高橋だが、それでもSNSなどを活用して巻き返しを図っている。

「毎日声が枯れるまで遊説を頑張っており、元気に走り回っている。選挙区内に市議8人、道議3人の地盤がそれぞれあり、遊説コースのアドバイスなどもいただいてきた。最後まで走り切る以外のことは考えていない」と陣営関係者は前を向いている。

 維新新人の山崎は、帯広市議や道議の経験を生かし、公示前から精力的に遊説を行ってきた。補選に出たことで知名度は上がってきたが、支持率自体は伸び悩む。「比例区の結果と惜敗率次第ではバッジの可能性も十分ある。最後まで諦めずに戦っていく」と語る。


〈3区〉=札幌市白石区・豊平区・清田区

高木 宏壽(たかぎ・ひろひさ)61歳 元職(2期) 自民公認、公明推薦
元内閣府政務官、元道議会議員
https://hirohisa-takagi.jp/

荒井 優(あらい・ゆたか)46歳 新人 立民公認、社民道連合支持
学校法人理事長、元ソフトバンク社員
https://araiyutaka.jp/

小和田 康文(こわだ・やすふみ)51歳 新人 維新公認、大地推薦
行政書士、建設会社社外取締役
https://o-ishin.jp/member/detail/post_128.html

 10月15日昼、札幌駅前近くの書店の前に、市内を選挙区に抱える立憲候補が党代表の枝野の街頭宣伝に合わせて集まった。5人の候補者の中、3区の新人候補・荒井優だけがスウェット姿。「TPOによってスーツも着る」(荒井)ものの、街頭宣伝などの時はもっぱらスウェットを着る。1975年生まれの40代という若さ、清新さを感じさせるスタイルだ。

 陣営の構成は、前衆院議員の父・荒井聰時代からの後援者、労働組合、政党の3本柱。ただ、候補者個人の人脈によるボランティアの存在は無視できない。

 荒井は今年春まで札幌新陽高校の校長を務めた。「卒業生やPTA関係者など、荒井さんを知る人たちがたくさん応援をしてくれている」(立憲3区関係者)

 実は、無党派層の荒井支持率が高いというデータが存在する。このボランティア人脈が、普段は政治と距離を置く無党派層に刺さっている可能性が大きい。

 一方、自民党の高木宏壽の陣営はプラスとマイナスの両方の材料が選挙戦で入り乱れる。

 不人気だった菅首相の退陣によって逆風は消え、岸田政権のハネムーン期間がまだ続く。コロナの感染者数も今のところ低水準だ。

 しかし、共産党が公示日直前になって候補を取り下げたのは痛手だ。

 3区内の共産票は前回参院選の全国比例票を参考にすると約3万票。前回並みの投票率なら得票率で約10%を占める。

 ただ、3区自民関係者は「共産が候補を降ろすのは想定内」と冷静。自民は接戦区である3区にテコ入れをしている。

 また、維新候補の小和田康文は情勢を微妙に変化させる可能性がある。改革を謳う維新の候補が非自民層の受け皿として機能すれば、立憲・荒井の得票を削る効果を生じる。逆に、小和田が保守票を自民・高木から奪うとの見方も根強い。