【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】コープさっぽろ理事長・大見英明氏と語る(前編)

 本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より記事を抜粋して紹介。立命館慶祥小学校の開校を目指す田中学園はコープさっぽろと包括的連携協定を結んだ。田中学園と民間企業との連携は初めて。大見英明理事長と食育カリキュラムの構想などについて語り合った。以下はその前編から。

コープさっぽろ職員はキッザニアで研修

 ――連携に至った経緯を教えてください。

 田中 数年前から田中家ではコープさっぽろの宅配システム「トドック」を利用させてもらっていました。

 食についてはもちろん安心安全ですし、子どもに対する支援も積極的で、「えほんがトドック」という子育て世帯を対象に無償で絵本を届けてくれたり社会貢献活動なども積極的におこなう企業ということは知っていました。

 そんな中、小学校開設を目指すにあたり、当学園の食を通じた教育の分野でご協力をしていただきたく、大見理事長にお会いさせていただきました。

 大見 田中理事長の現役時代の活躍はよく存じ上げていました。ただ、これまで面識はありませんでした。この度はコープの食育に対する取り組みをはじめ、教育プログラムを評価していただいて、ありがたいと思っています。

 ――コープでは2020年はコロナ禍で中止になりましたが、毎年、道内8カ所ほどで「食べる・たいせつフェスティバル」という食育の大イベントを開催しています。

 大見 来場者数は子育て世代を含め、3万5000人以上。さまざまな企業に参加していただき、ブースを設置して来場者に教育プログラムを体験してもらいます。

 この教育プログラムの教え方が結構、難しい。何を、どう、教えるか。対象が子どもだとなおさらのことです。

 コープも教え方のレベルを上げるために、8年ほど前から子ども向け職業体験施設「キッザニア東京」と連携し、社員研修を実施しています。これまで研修を受けた職員は500人。もちろん私も。今回、こうしたノウハウも田中学園との連携に活用できるのではないかと考えています。

 田中 コープでは食育に関して職員の海外派遣や、取引先と情報を共有する食育研究会なども実施していますね。

 大見 そういった見知からも小学校教育にお役立ちができればと思っています。

 ――両者は2020年11月27日に連携協定の調印式を行いました。

 田中 目的は「相互に密接な連携・協力を図り、食育や人材育成の推進に向けた協働事業を積極的に推進することにより、地域社会の抱える諸課題の解決及び地域社会の活性化に寄与する」です。

 協働事業としては(1)食育カリキュラムの共同開発・運営(2)人事交流(コープさっぽろ職員1人の田中学園への派遣)(3)給食運営(コープフーズとの連携)(4)食育コンテンツの共有(アフタースクール事業連携など)(5)本協定の目的を達成するために必要な事項――となります。

大見英明氏(左)と田中賢介氏 ©財界さっぽろ

 ――近年、食育がクローズアップされています。

 大見 思いのほか、取り組みは広がっていないというのが現状だと思います。

 田中 食育は通常の科目ではないですが、私どもの小学校では「LINK(リンク)」というカリキュラムがあります。例えば、「食」と「天気」をリンクすると、数学にも理科にも社会にもなります。

 そういった“食”をリンクすることでたくさんの学びにつながります。それがこれからの子供たちにとって必要なことだと考えています。

 大見 実践的な食育はこれからの時代、必要になってくるはずです。それを小さいときから学べるのは非常に価値があることだと思います。

 また、田中学園は私立学校ですから独自性を出せる。カリキュラムの自由度の高さもあります。コープも、新しい形の食育のお手伝いができるのではないかと感じています。

 田中 一方で、これまでの教育現場での食育は、収穫体験など、単発授業で終わってしまいがちといわれています。当学園では生産から流通までを手がけるコープに協力していただきながら、6年間の長いスパンでしっかりと腰を据えて、取り組んできたいと考えています。

 そして、今回の連携を通じた食育の取り組みが当学園とコープだけのものではなく、これが発端となって教育界や企業に広がっていく。その第一歩になればいいなと思っています。

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