吉川元農水相在宅起訴のその日に…自民“不戦敗”で2区補選はどうなる?

 まさに、晴天の霹靂だった。

 きょう1月15日、自民党選挙対策委員長の山口泰明氏は、党本部での記者会見で、4月25日投開票の衆議院北海道2区補欠選挙への候補擁立を見送ると発表した。

山口泰明氏 ©財界さっぽろ

 同日、道2区の自民衆院議員(13日に離党)で元農林水産大臣の吉川貴盛氏が、鶏卵業界大手「アキタフーズ」(広島県)からの収賄容疑で在宅起訴された。

 吉川氏と当選同期という山口氏は、会見後の囲み取材で「(擁立の見送りは)最終的には昨日(14日)午後5時に(菅義偉)総理にお話をし、了解をいただき、その後(二階俊博)幹事長にも了解いただきました」と経緯を説明。

 その上で、吉川氏が党選挙対策委員長代行を務めていたことも踏まえ「選挙を司る責任ある者がこういうことをしたということに対し、しっかりけじめを付けないといけない」と語った。

吉川貴盛氏 ©財界さっぽろ

 吉川氏が衆院議員を辞職した12月22日以降、札幌市北区の大半と同東区からなる2区内の自民党関係者は、地元にゆかりのある候補の擁立を目指し、年末年始を挟んで協議を重ねていた。

 その中で白羽の矢が立ったのが、北区選出市議会議員で7期を数える高橋克朋氏。市議会議長などを歴任し、現在は自民2区支部幹事長を務めている。

高橋克朋氏 ©財界さっぽろ

「2区内で克朋さんのことを悪く言う人はいない。みんなで一致して応援できる候補」(高橋氏を推す地元自民関係者)として、2区内の自民支部幹部らが水面下で協議を重ね、1月9日の会合で高橋氏へ出馬を要請。高橋氏は自身の後援会などと協議した上で結論を出す、というのが本日までの経過だ。

 そしてきょう、高橋氏は東京都内を訪れていた。きのう14日に吉川氏の後を受けて自民党北海道支部連合会会長に就任した、東京五輪担当大臣の橋本聖子氏と面会するためだ。だが――。

「きょうの昼下がりに面会したその場で、橋本さんの口から『候補擁立を見送る』旨を伝えられたようだ」(自民道連関係者)

橋本聖子氏 ©財界さっぽろ

 面会の理由は定かではないが、別の自民2区関係者は「克朋さんを推す人たちは、地元経済界などにも根回しをして、時間がない中でも最大限戦えるよう根回しをしてきた。克朋さんもこの一両日中に“決意”を表明する見込みだった」と語る。

 前出の山口氏は囲み取材で地元の判断を待たずに決めたことについて問われ、こう語った。

「(地元の)動きというのは私なりには分かっておりましたけれども、私も熟慮に熟慮を重ね、色んなことを考えて、私の判断でさせていただきました」

 なお、自民党の不戦敗により、今後どのような展開が考えられるか。

 現時点で高橋氏が無所属で立起するという選択肢は「今のところ、党公認以外での出馬は考えられない」(前出の高橋氏を推す関係者)という。

 無所属で出馬する場合、大きなハードルの1つが選挙資金だ。

 2区は北海道内12の選挙区中でもっとも狭いが、それでも「選挙費用はもろもろ含めて5000万円はかかる」と前出関係者は明かす。毎年公表される市議会議員の資産公開を見る限り、高橋氏は大きな資産があるわけではない。無所属なら自民党からの公認料などの支援は受けられず、コロナ禍で政治資金パーティーの開催も難しい。

 そもそも補選で勝っても最大で半年後には任期満了にともなう衆院選がおこなわれる。半年で2度も選挙をしなくてはならない。要するに2倍の費用がかかる。

 その点、立憲民主党2区総支部代表で、次期立憲2区候補予定者の松木謙公氏は建設業界紙の発行や学校法人を経営する資産家で、そうした面の心配は少ない。

 前回は吉川氏の前に比例復活もできず完敗した松木氏にとって、ライバルが自滅し、その後継も立たない今回は返り咲きの願ってもないチャンスだ。

 だが松木氏にも、2区の旧民主党系関係者に根深い遺恨を残す“過去”が存在。その解消にずっと苦慮してきた。2月15日発売の月刊財界さっぽろ3月号では、ますます混沌としてきた2区補選の深層についてさらに詳報する予定だ。

 なお月刊財界さっぽろ2021年新年特大号では「吉川貴盛“鶏卵収賄”疑惑」と題した特集を組んだ。吉川氏の70年の半生に迫り、極貧の幼少時代、鳩山家との知られざる縁、妻との死別など、地元誌しか知り得ない貴重なエピソードを掲載。

吉川氏の知られざる一面を紹介 ©財界さっぽろ

 今回、この特集を特別編集する形で、特集部分を中心に12ページをデジタル版として販売する。価格は税込110円となっている。購入は下記のリンクから。

特別編集・吉川貴盛[元農水相]“鶏卵収賄”疑惑の全背景

 また月刊財界さっぽろ2021年2月号では、吉川氏の辞職以後も四分五裂する自民道連の“ていたらく”について「道連会長人事で四分五裂 “自滅の刃”が自民党道連を襲う!」と題した記事で紹介。橋本聖子氏や長谷川岳氏など、自民道連内の国会議員・主要道議会議員などがそれぞれどのように繋がっているのかを人物相関図で詳報している。

 財界さっぽろ2021年2月号は札幌市内など道内一部地域の道内書店・コンビニエンスストアで18日から発売。また以下の当社公式通販サイトなどからも購入可能だ。

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