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Interview

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北海道をブロックチェーン先進地に掲載号:2018年10月

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坪井大輔 INDETAIL社長

近年あちこちで耳にする先進技術の「ブロックチェーン」。いち早くこの技術を使ったビジネスに取り組み、団体を立ち上げて普及活動を展開するのがITベンチャーのINDETAIL(札幌)だ。坪井大輔社長(41)に現状と展望を聞いた。

BCの在庫管理システムを実証実験

――ブロックチェーン(以下BC)に注力しているそうですが、ビットコインなど仮想通貨の事業に関わっているのですか。

坪井 いいえ。BCは仮想通貨だけではなく、いろいろな分野に活用できる技術で、私たちは一般企業や行政向けのシステム構築をやらせていただいています。一例を挙げると今、ホテルのインバウンド対応のために、多言語化・受け付け自動化などのシステムをBCでつくろうとしています。また、別の企業と一緒に調剤薬局向けの在庫管理システムも実証実験中です。

――仮想通貨以外にもBCは普及し始めていますか。

坪井 いろいろな産業の大手企業が業務システムをBCでつくろうと動き出しています。日本政府も積極導入する姿勢です。今年に入ってからは国が発注する事業にBC活用を条件とする例が増えてきました。募集要項に始めから明記されてるんですよ。

地方自治体だと、そこまで指定してしまうとやれる地元企業が少ないので国のようにはいかないですが、自治体もかなりBCの研究をされています。

――なぜ普及するのですか。コストが安いのでしょうか。

坪井 現時点ではBC技術者がすごく少ないため、一概に安いとは言えませんが、同じ機能を持つシステムをつくるのに仮に人件費などの単価が同じなら、BCだと既存技術の何分の一かのコストで完成できます。

私たちはBCのパッケージを持っており、もし実証実験を頼まれたらそれをベースに、お客さんの希望に合わせて部分的に変更するだけですから短期間で構築できます。かなり大掛かりな実験でも、数百万円のレベルで実現できますよ。

――BCは既存技術より信頼性が高いとも聞きます。

坪井 大手都市銀行のシステムが既存技術の典型です。頻繁に不具合を起こして、ATMが停まったりしていますよね。個人情報の流出もなくせていない。セキュリティに関して何度もトラブルが起こっているのが既存技術です。

一方、例えばビットコインはBCを使った、管理団体もないシステムですが、一度も停まったことはありません。今年、コインチェック社の事件があって世間的なイメージダウンがありましたが、これはBC自体とは関係のない不祥事です。ゼロからシステムをつくる際、停まらない信用のある技術を選ぶならBCということになります。

――インディテールは全社員160人だそうですが、BC技術の専門家がいるのですか。

坪井 非常にコアな部分まで触れる、日本でもまだ少ない専門エンジニアが今5、6人います。BC以外を含めて私たちのお客さんは9割が首都圏で、東京にお客さんとの窓口になる部隊がおり、システム構築作業そのものは札幌のエンジニアが担当するという役割分担でやっています。

――昨春、坪井社長が主導して「ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム」という団体を立ち上げました。

坪井 当初はバーナードソフトさん、SOCさんに協賛していただいて、まずは「ブロックチェーンとは何か」というところから、勉強会やエンジニア向けセミナーを始めました。狙いは、北海道がBC技術の先進地域だという全国的な評価を得て、関連の仕事が北海道に入りやすくすることにあります。

マスコミ報道もあり、イベントをやるたびに何社かずつメンバーが増えており、現在は約40社・団体で構成されています。これまでの経緯から団体とインディテールが一体のように見られることもあったものですから、きちんと独立させるという意味で、予定では9月中旬に一般社団法人化することにしています。

――メンバーを見ると地方自治体や銀行など、IT以外も目立ちます。どんな目的で参加しているのでしょうか。

坪井 やはり情報収集を念頭に置いているパターンが一番多いと思います。それから、システム会社さんがエンジニア教育の目的で加入されるパターンでしょうね。IT業界でも、BCをきちんと説明できる人は、今でもそんなに多くありません。

BCってどんな技術ですかという質問に簡潔に答えるなら、以前からあった4つの技術を足したもの、と説明しています。1つが暗号化技術で、これは普通のメールでも使われていますね。2つ目が、個人所有を含めたたくさんのパソコン間でネットワークを組む技術。それから、これが独特ですけどネットワーク内で合意を形成するための技術。最後は、分散した台帳すべてにデータを書き込む技術。この4つで構成している。こんな話を私自身あちこちで講演を含めて、説明させてもらっています。

――団体を通じ、貴重な知識や情報を他社に与えることになるのでは。メリットはあるのですか。

坪井 BCは市場規模68兆円とも言われ、インディテールが独占しようとしても意味がない。北海道という地域がBCのブランドになり、仕事がたくさん取れ、そのうち当社が何パーセントかやる、という方がよほどメリットが大きいでしょう。ただ、牽引する存在がなかったので団体を設立して活動しているわけです。

――東京のお金を北海道に持ってくる発想ですね。

坪井 基本的な考え方の話になりますが、日本は東京一極集中ですから、地方は東京にお金を払って製品やサービスを買っている状態です。これを国内貿易だと考えれば、北海道経済は東京に対する輸出と輸入のバランスが悪く、東京はいつも貿易黒字。北海道は赤字続きなんです。

じゃあ北海道としてどうやって黒字に近づけていくか。やみくもに既存産業にお金を入れてもどうにもならなくて、北海道で新しい価値を生む発想が必要だというのが持論です。ですから付加価値の高い技術を北海道でやれば、その分野の仕事が東京よりも北海道に流れ、それが道内の雇用にもつながって経済に貢献する。2年前、BCがこの条件に適していると考え、団体をスタートしました。

ベンチャーがいて経済が発展する

――「北海道経済を支える」と会社のビジョンで掲げています。これは郷土愛からでしょうか。

坪井 ただ北海道が好きというより、この現状をどうにかしなきゃいけないでしょ!という感じです。 例えば、財界さっぽろには道内の社長さんたちが載ってますけど、顔ぶれがほとんど変わらないですよね。老舗企業も多い。決して二世を否定する気はありませんし、伝統を引き継ぐのはもちろん価値あることですが、老舗を脅かすベンチャーがいて経済全体が発展する。どんどん起業家の名前が出てこなきゃいけないと思うんです。

――坪井社長は大学生時代からITベンチャーを志していたのですか。

坪井 そうではありませんでした。専攻は応用電子といってソフトもハードも勉強しましたが、自分に向いてないと思って卒業後は畑を変え、横浜本社の外食チェーンに入り、経営企画の仕事をしていました。
 その後、Uターンして一時期は札幌のIT企業でエンジニアをやったんですがやはり向いてなかった(笑)。そこでエンジニアと企業を結びつける人材ビジネスに行ったんです。スタッフアイという会社で、発足した札幌支社の支社長に就きました。それが2005年でした。

――ではスタッフアイをやめて起業したのですか。

坪井 いいえ。インディテールの前身のアイテック北海道を設立したのは2009年で、スタッフアイの社員を続けながらでした。実はそれまで2年ほど、ITの会社をやらせてほしいと言い続けてたんです。最終的にスタッフアイの古田良三社長が理解を示してくれて、出資もしてもらいました。

――なぜ起業をしようと考えたのですか。

坪井 人材会社の支社長として北海道の経済界の方々とお会いする機会がたくさんありました。商工会議所をはじめ、いろいろな団体の会合に出させていただく中で、先輩経営者の方々が、よく「北海道を元気にしよう!」を合い言葉に乾杯するんです。でも、元気にするって具体的には何だろうか。自分のような若い人間は何をすべきなんだろうか。そう考え始めたのが、今に至るきっかけです。

会社を立ち上げて1、2年の頃はスマートフォンの本格的な普及に合わせ、スマホアプリの開発に注力し、それからeコマースもやりました。そして目下、全面に打ち出しているのがBCというわけです。

――BCで、今後大きなイベントなどはありますか。

坪井 当社としては、札幌のビジネスイベント「NoMaps」で10月10日、調剤薬局の在庫管理システム実験の第2フェーズを報告します。また、この日は東京からLINE(ライン)やモバイルファクトリーなどBCを打ち出している先端企業に来てもらって、私たちとのトークセッションをやります。

特にLINEさんは今年、BCへの注力を宣言されていますから、すごく面白いイベントになるでしょう。アレンジを担当したのは実は私で、とても苦労したので(笑)、ぜひ多くの方に聞いていただきたいです。

=ききて/ライター・吉村慎司=