4期連続純損失も赤字大幅圧縮、鈴井貴之氏を社外取締役に起用…コンサドーレ22年1月期決算の深層

「サポーター、パートナーをはじめ応援してくれるみなさんのおかげで何とか…」

 4月27日、北海道コンサドーレ札幌運営会社「株式会社コンサドーレ」が第26回定時株主総会を開催した。

 昨年は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が断続的に実施され、入場者数を限定する期間があったほか、東京五輪の男女サッカー競技でホーム・札幌ドームが使用できない時期があるなど、観客動員はコロナ前と比較すると低調ながら前年より回復。だが大口枠であるユニフォームスポンサーの空きを埋めることができなかったこともあり、広告収入は伸び悩んだ。

 他方、グッズ販売や移籍金収入などが増額となったことから、2022年1月期の売上高は33億9268万円と、前年の30億9639万円から約3億3000万円増で着地した。一方、チーム強化費18億5000万円を含む売上原価は32億5076万円となり、販売費・一般管理費を含む営業損失は3億1362万円、経常損失は2億4657万円で、1919万円の当期純損失を計上した。

 コンサドーレの決算が純損失で着地するのは4年連続。一方で前年の純損失2億7000万円からは大きく圧縮された。代表取締役GMの三上大勝氏は、経営改善の道筋を一定程度つけられたことに対して、冒頭のように感謝の意を表した。

コンサドーレ代表取締役GMの三上大勝氏 ©財界さっぽろ

 決算資料を見ていくと、興行収入の柱である入場者数は、前年にJ2リーグ降格チームが出なかった影響で2試合増え、リーグ・カップ戦合わせてホーム24試合で15万1315人。前年の20試合・8万1029人から187%と大きく増加したが、19年シーズンの36万5402人から見れば5割以下で、収益源としては引き続き厳しい状況のままだ。

 興行収入は4億4016万円で、昨年の2億4442万円から2億円近くのプラスで、4億8000万円と見込んでいた予算にも到達しなかった。

 もっとも収入に占める割合が大きい広告料は14億7777万円で、前年の17億6912万円から2億9000万円と大きく減少したものの、19年1月期とほぼ同額を確保。グッズ販売などを含めた商品売上高は3億2865万円で、前年比5680万円増加。コンサ取締役でクリエイティブ・ディレクターを務める世界的デザイナー・相澤陽介氏が手がけたこともあり、レプリカユニフォームの販売が好調だったことが要因とする。

 またテレビ放映権料などを原資とするJリーグからの配分金収入について、リーグはDAZN加入者が各クラブの試合を視聴した実績などに基づいて、実績の高いクラブに傾斜配分する制度を導入。その結果、配分金収入が今期は4億5102万円と前年から3000万円近く増加した。

 さらに移籍金収入などその他収入も6億9508万円と、前年の3億8709万円から3億円余り増。このあたりが前年からの赤字削減に大きく寄与した。

 Jリーグは、2022年度末、つまり次の決算から、コロナ対応における財務基準の特例措置を終了し通常のリーグ参加基準(クラブライセンス判定)に戻ることが決まっている。基準とは(1)債務超過にならない(2)3期連続赤字にならない、の2つだ。

 コンサは今期まで4期連続赤字だが、今期までは(2)の3期連続赤字のカウント対象とはならない。純資産も2億3450万円プラスで債務超過でもないが、新型コロナウイルス感染症対策融資で総額8億4000万円あまりを借り入れており、その返済が2022年度から始まることから、財務体質の強化を図るため、昨年から第三者割当増資の引き受け先を検討してきたところ。

 三上氏は総会で「新パートナーなど4者に合わせて8億円程度の増資を想定している」と説明。今回の株主総会では、株式の発行可能数を倍増させる、定款の一部変更も議決した。

 一方、今シーズンの事業計画では興行収入6億5000万円、広告料収入13億7000万円、グッズ収入4億円など売上高を37億6900万円と過去最高水準に設定。強化費も19億7000万円と過去最大に増額した。

 最大の収入源である広告料収入については、今期から組織改編を行って広告・ライツ事業を司るパートナー事業本部を1部・2部に分けて人員を増員。収入の増大に向けた取り組みを拡大させるという。

 経営トップと強化部トップのGMを兼ねる三上氏にとって、今回が初めての株主総会。新年度は右肩上がりの成長路線を貫いてきた前社長・野々村芳和氏の後継として、新たなコンサの成長戦略を描いた結果がこの高い目標ということになる。

 なお、株主総会で新たな社外取締役として北海道の芸能事務所・クリエイティブオフィスキュー会長の鈴井貴之氏を選任した。

 鈴井氏の起用については三上氏たっての希望ということで、クラブ関係者は「(三上氏)自らがオフィスキューに出向き交渉、承諾を得た」と説明する。三上氏も総会後のオンライン取材で「数年前からの知人として交流があり、北海道から発信するという取り組みや言動に共感していた。既に週に1度ほどは事務所まで足を運んでいただいています」と話す。

 もともと試合観戦に足しげく通う大のコンサドーレサポーターとして知られており、今回のオファーについては「ものすごく喜んでいました」と事務所関係者。サポーター目線からのクラブ経営へのアドバイス、コンテンツビジネスに秀でた同事務所のノウハウなどにも期待が集まるところだ。