【今月号特選記事】冬季五輪開催、地下鉄延伸案とも連動?スポーツパーク構想(札幌市)の“空虚な青写真”
「つくりたい、つくりたいとの思いが前のめりになっている印象を受ける。現時点で、市のスポーツパーク構想の“中身がない”ように感じてしまう」と札幌市の関係者は語る。
この構想が浮上したのは2019年ごろ。豊平区羊ケ丘の札幌ドーム周辺にスポーツ施設などを集約させるというものだ。予定地は国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」の「北海道農業研究センター」一部敷地。敷地面積は60ヘクタール弱だ。
想定される青写真の1つが、冬季競技の強化拠点・ハイパフォーマンスセンター(HPC)の設置だ。この施設はナショナルトレーニングセンターに医学的なサポート機能を加えたもの。アスリートが練習に集中できる環境を整え、ジュニア育成なども行っていく。
市内の老朽化した施設の再配置も検討している。同じ豊平区にはスケートリンクなどがある月寒体育館がある。1972年札幌冬季五輪ではアイスホッケー会場として使用された。敷地内にこの後継施設を配置する。合わせて、隣接する月寒屋外競技場のラグビー場も移転させる。アリーナを新設する可能性もある。
市は現在、2030年冬季五輪の招致を進めている。仮に五輪開催が決まったら、敷地内の施設でも競技が行われる予定だ。スポンサー企業のパビリオンなどが並ぶオリンピックパークに活用できる公園の整備を進める。メダル授与式の会場が設置される可能性もある。
市は年明け、市議会の各会派にスポーツ構想の説明を行った。所管する市スポーツ局の担当者は「冬季五輪開催、今後の札幌ドームの活用案などと連動します」と話すが、具体的な中身などについては、どうも歯切れが悪い。
市スポーツ局担当者はこう続ける。
「基本構想を内部検討している段階です。青写真については、いろいろな施設の設置が一部で報道されていますが、あくまでも候補の1つに過ぎません。まだ確定はしていません。整備する方針ではありますが、必ずしも五輪ありきというわけではありません」
構想予定の隣にある札幌ドームでは日本ハムファイターズの北広島市への本拠地移転が迫る。23年度以降、札幌ドームは大幅な減収が見込まれている。市スポーツ局では現在、本拠地移転後の活用案を検討しているが、スポーツパークとの連動について、担当者は「札幌ドームを核とした、一体的なものにしていきたいですが、ドームの収益面とは連動させて考えてはいません」と語る。
なぜ、市スポーツはここまで情報の開示に後ろ向きなのか。8月15日発売の月刊財界さっぽろ8月号でその背景を探った。また、予定地周辺でくすぶる地下鉄延伸案とスポーツパーク構想を連動させたい向きもあるようだが、果たして……。
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