【今月号特選記事】酪農家には死活問題でも……厚岸の“野犬銃殺”を問う

 犬猫の「殺処分ゼロ」を掲げる自治体が増える中、道東では「畜犬管理及び野犬掃討条例」にもとづき、現在も野犬(ノイヌ)の銃殺や薬殺をおこなっている。

 2020年度の1月時点で、同町役場に寄せられた野犬の苦情は23件。その多くは酪農家からで「子牛を襲われた」「(人間を)威嚇してくる」といったもの。昨年は5頭が薬殺、11頭が銃殺によって処分された。

群れで暮らす釧路管内の野犬 ©財界さっぽろ

 現地関係者は野犬の実態と処遇について「数字に前後はあるものの、釧路管内全域において、状況はほぼ変わらない」と話す。

 通常、犬猫の処分はガス室などでおこなうのが一般的だが「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」には野犬も対象に含まれており、銃殺も認められている。

 群れで暮らす野犬は、ときに人を威嚇したり、家畜を襲うため“害獣”とみなされる。経済動物である牛が被害に遭うのは、酪農家にとって死活問題。また、ヒグマの扱い同様、人命第一として考えられる。通報を受けた役場はハンターに要請し、野犬は駆除される。

 野犬を生み出したのも人間、駆除するのも人間。

 現地で〝野犬の生きる道〟を探す女性獣医師は「批判しても解決にはならない。全道民で、命の問題として考えていきたい」と話す。

 動物愛護と、必要悪の視点。対処療法ではなく、根本的解決のためにできることとは――

 発売中の月刊財界さっぽろ4月号では、野犬の被害に頭を悩ませる酪農家、葛藤する役場やハンター、愛犬を撃たれた過去をもつ女性など、さまざまな立場のコメントを掲載。命の在り方を問う。

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