道警も関心を寄せる北大薬局“不可解”入札が一転白紙に……その背景は?

敷地内薬局の建設を予定する北海道大学病院 ©財界さっぽろ

 本日1月13日に地元紙で報じられた通り、北海道大学内に設置予定の敷地内薬局をめぐる入札で、選定結果の白紙撤回が検討されていることが明らかとなった。

 この入札は北大病院そばの大学所有地を民間事業者が借り受け、調剤薬局を新設・運営し、北大は地代収入を得るというもの。

 2018年4月に事業者の公募が始まって10以上の事業者が手を挙げ、事実上の最終審査となる二次審査にはツルハホールディングス傘下のツルハ(札幌市)、アインホールディングス(同)、に加え、メディカルシステムネットワーク(MSN)傘下のなの花北海道(同)と札幌市発祥の日本調剤(東京都)が進出した。

 もともとは18年9月に優先交渉権者を固め、実務交渉を経て19年4月から敷地貸し付けを始める予定だった審査は遅れに遅れた末、20年7月になの花北海道が優先交渉権を得た。

 この二次審査の公募要項には「自由提案」の項目があり、4社中3社が大学への「寄付金」案を盛り込んだとされる。

 一方で、落札したなの花北海道、つまりMSNは、寄付金のほかに他社にはない独自の提案をした。それが留学生寮の建設・運営だ。

 国際化を推進する北大は留学生の受け入れ拡大を図っており、かねて寮の建設が急務。そのため、入札と同時期の18年に、留学生寮に関する諮問委員会を総長直属の形で設置し、審議をしていた。

 この留学生寮建設の提案が、疑義の核心に触れる部分だ。一例をとると、公募要項に留学生寮の用地や金額やらの項目は一つもない。

 地元・北海道新聞が存在を明らかにした「内部文書」の存在も、学内の不信感を増幅させた。この文書は大学側が公募開始1年前の17年に事前調査をおこなった結果を記したものだが、この時点でMSNが留学生寮の建設や自社運営を盛り込んだ構想を提案していた。

 関係者の話を総合すると、留学生寮の諮問委員会は薬局同様、民間企業に寮を建設させ、北大が地代収入を得る仕組みを念頭に置いていた。

敷地内薬局の入札をめぐる時系列 ©財界さっぽろ

 時系列を見てわかる通り、入札が18年4月の公募から2年以上もかかったこと自体が、この留学生寮とリンクした動きだった可能性は否めない。

 不可解な点はまだある。前出の通り、二次審査に参加した4社中3社が大学への寄付金を提案したが、そのうちの1社は年間1億5000万円の寄付を20年間継続する、つまり30億円を支払う内容だった。一方のMSNの寄付金は総額8億円だったという。

 寄付金は全額が大学の収入というわけではなく、新設された薬局の一部フロアを有償で北大病院が借りるため、運営企業へ賃料の支払いが生じる。それでも20年間にわたり、年に約1億円が収入として入る見込みだったようだ。フトコロ事情の厳しい大学にとっては相当な魅力のはずだが、それを捨ててまでMSNの提案を選んだ根拠は何だったのか。そこを訝る向きは多い。

 もう一つ、本誌のつかんだ事実に第三者委員会の設置がある。19年4月に弁護士で構成される第三者委員会が立てられ、入札参加企業や審査委員、大学関係者を聴取した。この際は北大病院や薬学部関連の審査委員などが、MSNとは違う参加企業に他社より高い得点をつけたという。それが疑われたのだ。

左から北大新総長の寶金清博氏、薬局入札審査委員会委員長の笠原正典氏、解任された名和豊春前総長 ©財界さっぽろ

 この第三者委員会は、名和豊春前総長の解任騒動とも連動している。名和前総長のパワハラ疑惑と解任に対し、その追及の急先鋒と目される人物が、名和氏とある入札参加企業との癒着を主張していたからだ。

 こうした内容について、本誌の取材依頼に対し、北大はほぼゼロ回答を繰り返している。だがコトは学内だけの問題ではなくなっているかもしれない。

 昨年秋、北海道警察刑事部捜査第二課、つまり詐欺や横領、公的入札に関する不正を捜査する部署が「入札に関する資料の提出を要請した」という情報があるのだ。

 資料を取り寄せただけでは事件化するとは限らない。別件の捜査に関する資料だった可能性もある。だが、関係者の間では今回の疑惑に関心を示していると見る向きが大半という。

 昨年秋、北大は名和前総長の後任を選ぶ総長選がおこなわれ、寶金清博氏が選出された。

 実は、総長選に名乗りをあげた3人中、寶金氏と笠原正典氏の2人は薬局入札と接点がある。医学部出身の寶金氏はかつて北大病院長を務め、笠原氏は薬局入札の審査委員長だった。

 ただし2人とも疑惑への関与は明確に否定している。寶金氏はさらに、総長就任後にこの件に関する内部調査の実施も決めている。

 いずれにしろ、万が一事件化すれば、知名度抜群の北大にとっては大変なスキャンダルだ。

 本稿の前段で紹介した通り、たとえ入札結果を白紙撤回したとしても、これだけの傍証に対してダンマリを決め込めば、北大ブランドを毀損することになりかねない。

 入札はMSNありきで進められたのは事実なのか。事実なら、そうなるよう誘導したのは誰なのか。2月15日発売の財界さっぽろ3月号では、その真相について詳報する予定だ。

 なお、今回の疑惑について掲載した財界さっぽろ2020年10月号、11月号は以下のオンラインショップからお買い求めください。

◎財界さっぽろ10月号掲載

「アイン、ツルハ、日本調剤、メディカルシステムネットワークが競合 30億円のキャッシュをふいに!?薬局入札で北大の不可解」

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◎財界さっぽろ11月号掲載

「道庁汚職の次は…事件化するのか 北大薬局入札に道警2課が関心!?」雑誌版 デジタル版

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