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Interview

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道新幹線は青森~新函館札幌同時開通を目指せ トレイン・オン・トレインで津軽海峡を高速道路化し、物流革命 掲載号:2010年1月号

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上田 文雄 札幌市長

 札幌市の上田文雄市長が元気だ。北海道新幹線の札幌延伸を訴えて前原誠司国交大臣に面会したり、道内の首長との連携も深めている。最近の荳顔伐 市長のテーマは「北海道の中の札幌の役割」ではないだろうか。八面六臂の活躍を続ける上田市長を直撃した。

北海道は地理的な1つの島のままだ

――前原誠司国交大臣に、北海道新幹線の札幌延伸が必要だと訴えていますね。
上田  (政権が代わって北海道新幹線は)最初、「白紙だ」ということで、かなりマイナスなイメー ジでした。「やめる」という意味に感じたのが世間一般の受け止めだったと思います。ただ、僕は、それはちょっと違うのではないかと思いました。前政権が やったことについて、一度、ゼロベースで考えるということは、政権交代したのだから当然のことであると受け止めるのが、正解に近いのではないかと思いまし た。
i9  まったく一から考え直すというのであれば、いままで掲げてきた論理ではなく、新しい論理できちんと考えていくべきです。その答えは、オール日本として北海 道新幹線はどんな意味を持つのかということです。国費を投入するわけですから、そういう問題提起をしていきたいと考えました。それでメモを持参して、こう いう構造でわれわれは考えていると主張したのです。
いままでの陳情スタイル、つまり「『北海道の経済は困っているので何とかしてください』ということは、絶対に口が裂けても言わない」という決意で国交省に行きました。
「民主党政権ならではの政策として、この問題に取り組んでいただきたい。日本地図の中の時間地図の問題として、北海道をいびつな形で放置しておいてほしく ない。北海道はいまだに地理学上の原型を保ったままの完全な島だ。まだ、本州と一体になっていない。近代は時間地図で考えないといけないわけで、そういう 意味では、新幹線は絶対必要だということになる。閉塞した日本経済の危機状況を打破するためには、2割の国土を持ち560万人の人間が生産活動に携わって いる北海道を、日本経済の中にちゃんと位置付けなければならない。これはいつまでも放置できない問題だということを認識していただきたい」
こういう論理立てで前原大臣のところに行き、「時間地図を塗り替えるのはあなただ」「政治だ」「せいじだ」「前原誠司だ」とやった(笑い)。
それで前原さんが「じゃあ、データが欲しい」と言うので、「それじゃあ」と2回目も行った。そういう話ですよ。
――少し光が見えてきましたか。
上田  前政権時代には、札幌延伸は新函館開業後にやればいいのではと言われたこともあります。僕 は「そんなバカバカしい公共事業はやめてくれ」と言ったんです。新青森から新函館まで5000億円投資しても、十数年先まで本来の投資効果が得られないと いう話はおかしい。20年後、30年後、40年後に完成するダム工事を見直すべきだと言っているときに、十数年先に事業目的と投資効果が出てくるような公 共事業のやりかたはおかしい。やるなら札幌も函館と同時開業です。そうでないと税金が生きてこない。

借金をしてでも札幌延伸をすべき

借金をしてでも何をしてでもいいから、札幌延伸を早くやって北海道新幹線の事業効果を出す。それが北海道を活性化させる道です。北海道・東北経済圏を構築していくという大きなプロジェクトで、ものを見るべきだと主張しています。
いままで新幹線は人口の多いところを走っていましたから、人の輸送機関として大事だと言われていました。しかし、北海道の場合は東北も含めて人口密度が低い。ですから新幹線を使った物流革命を起こすべきだと考えています。
トレイン・オン・トレインといって、新幹線の車両の中に在来線で使っているコンテナ車両をそのまま積み込んでしまう、こういう技術をいま、JR北海道が 開発しています。この技術を利用した自動車を積み込むカートレインは「津軽海峡の高速道路化」につながります。物流革命を引き起こす大きな手段として、札 幌延伸は極めて急がなければなりません。 「釧路まで延ばすべきだ」「旭川までだ」「稚内までだ」と言わなくても、札幌なら札幌、大谷地なら大谷地にトラックの物流基地を置いて、そこにコンテナが 入ってくるということで、全然経済効果が違ってきます。北海道全体の経済の活性化に通じるのです。経済圏がきちんとできると思いますね。
いま、本州への人の移動手段は飛行機が86%を占めています。CO2削減を考えると全然おかしな話で、他都市間を1つの路線で結節させる新幹線が1運行 するのと同じ効用を確保すためには、飛行機を28便飛ばさないとダメだという計算があります。低炭素社会の実現には、鉄路がとても大事なのだということで す。  青函トンネルをいま、1日に列車が80本走っていますが、そのうち53本が貨物なのだそうです。そこに新幹線が時速360kmで走ると、トンネル内で貨 物列車に追いついてしまい、新幹線の機能が果たせないのだそうです。それで何とか高速で走らせようとして、トレイン・オン・トレインなどの新技術を開発し ようと頑張っているのです。
――丘珠空港はどうなっていくのか、HACのことも併せてお聞かせください。
上田  ANA傘下のエアーニッポンネットワーク(A―net)が新千歳に集約するということです が、北海道エアシステム(HAC)が逆に丘珠へ集約する形になれば、ある程度の路線、便数は確保できるだろうと思います。ただ、それでは事業採算性の観点 から足りないということになれば、どうやって機材や路線を確保していくかという議論になります。リースやレンタルなど、機体に関してはいろいろな方法があ るのだと思います。また、札幌市が考える観光やビジネスの拠点としての機能をしっかりと構築していき、空港所在都市との関係を強めていくことによって、路 線を維持・発展させていくことになると考えています。
国に対しても、航空会社にとって大きな負担となっている空港使用料と航空機燃料税の引き下げを求めていきたい。また、地域に密着したローカル航空路線の 廃止の動きが全国的に加速しています。航空事業者が一方的な理由で路線を廃止できる現行制度を改め、国を含めた形での協議体の基本枠組みを制度化するな ど、路線廃止における一定のルールづくりが必要です。
HACの経営問題による丘珠路線の維持については、北海道や経済界、就航先都市とも十分協議をしながら、札幌と道内各都市を結ぶ航空ネットワークを支えていくことができるような方策を模索していきたいと思っています。

税収アップに向け動機づけが必要

――路面電車はどうしますか。
上田  基礎的な案をまとめ、遅くとも今年度中に市民に示します。そしてA案、B案、C案といくつかの案を立て、みんなで議論していただく。将来の札幌のまちづくりに路面電車をどのように活用するかという視点で、多くの市民に考えてもらいたいと思っています。
――札幌広域圏の首長懇談会や中核都市との意見交換会を行っています。この意図とは…
上田  北海道の中における札幌というものの考え方でいけば、この集積した企業だとか、あるいは情 報発信力だとか、情報処理能力などの札幌市の資源を、北海道のために活用していくというのが札幌市の生きる道と考えています。心情的に道内各地のみなさん に育てていただいているということもあるし、機能的にいっても、絶対そうあるべきだと確信しています。そういった意味で札幌広域圏の自治体や道内中核都市 と協議をし、連携していくのは当然のことです。  石狩管内の6市1町1村の首長とは07年から「札幌広域圏首長懇談会」(札幌圏G8)を開催し、酒を酌み交わしながらざっくばらんに語り合っています。 これが実に好評で、管内の首長ととても親しくさせていただいています。
09年8月には道内中核都市の市長に集まっていただき、意見交換をしました。都市の悩みを共有できたし、北海道全体の活力を生むために、各都市の機能を 生かしながら連携していくという方向性も確認できました。観光、食環境が連携していくのにふさわしいテーマだと思います。
また、札幌以外の市町村からの生産物をここで消費をしているわけですから、札幌でデザインアップをしたり、販路を獲得するなどの努力を他の市町村と一緒に行えれば、相当の効果が見込まれます。
――税収が減る一方で、生活保護などの社会保障関連予算が増えています。有効な処方箋はありますか。
上田  生活保護費ナンバーワン、ツー、スリーの大阪市長と京都市長と札幌市長とで議論している最 中ですが、本筋は憲法25条ですから国の責任ですよ。札幌市の場合、生活保護財政は1000億円を超えましたけれども、その4分の1は地方自治体の負担に なっています。これはやはり本来、全額国費でやるべきです。この点を国に強く働きかけていきたいと思います。そうしないと、ほかのことができなくなってし まいます。
財政再建の基本は収入を増やすことです。市民税、法人市民税、固定資産税がありますが、地方財政で大きいのは固定資産税です。土地が有効に活用されるこ と、高度な建物が建てられることなどによって、固定資産税の税収は上がるわけですよ。ですから、そういう動機づけをするために、例えば建物の建て替えなど が起こるような政策をとっていくことが大事です。駅前地下通路や創成川イーストの再整備などを、まちづくりの中にしっかり位置づけていくことによって達成 できる課題だと思います。そのためのインフラ整備をいまやっているわけです。
札幌のまちの魅力も高めていかなければなりません。札幌の場合、大型の工場を引っ張ってくるには難しい状況にあるので、臨海都市である石狩市と連携し、 人を呼んでくる、製造業を引っ張ってくることを一緒にやっていこうとしています。また、全道のビジネス拠点である札幌活用術を進めることで、生産性の高い まちにしていきます。  中国、韓国、台湾、この辺の観光戦略をしっかりとやっていきます。また、新千歳空港の旧共産圏の発着制限を取っ払ってもらいたい。資源大国でもあるロシ アとも、ビジネスパートナーになるようにしていきたいと思います。

=ききて/酒井雅広=