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Interview

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生産性向上を推進
地方創生支援を強化
掲載号:2018年5月

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安田光春 北洋銀行頭取

創業101年目を迎えた北洋銀行が、4月から新体制となった。頭取を務めるのは、プロパーとしては初めてとなる安田光春氏。間もなく2020年代を迎える道内トップバンクをどう牽引するのか。4月3日、頭取就任直後の安田氏を直撃した。

マスコミ志望から金融機関へ

4月1日付けで北洋銀行頭取に就任した安田光春氏は1959年10月5日生まれ、札幌市出身。札幌北高校から慶應義塾大学商学部に進み、83年の卒業後北洋相互銀行(当時)に入行。宮の沢支店長を務めた後、2007年8月から09年3月まで石屋製菓に出向。13年執行役員融資第一部長、14年取締役経営企画部長、16年に常務を経て現任。以下、安田氏との一問一答。

   ◇    ◇

――学生時代はどのような生活でしたか。

安田 父を5歳のころに亡くしていて、母と姉との3人家族でした。札幌北高から一浪して慶大へ進みましたが、一度は東京へ出てみたい、という思いから。自分で生活費を稼がなくてはいけなかったので、アルバイトをしていました。当時流行っていた、学習塾の講師が実入りもよく、札幌市の奨学金と合わせて、何とか生活できたというところです。

――就職活動はどのようなものでしたか。

安田 もともとマスコミを志望していましたが、最後に残っていた会社の最終面接に落ちてしまいまして。もう10月のはじめだったと思います。東京の金融機関も受けていて、地元の友人ともそちらへ行く話をしていたら、ちょうど「北洋相互銀行にまだ欠員がある」と聞いて。それで翌日、北洋を訪ねていったら、その次の日には役員面接へ呼ばれ、帰りにはもう内定が出ました。すごいスピードで本当にびっくりしました(笑)

私を採用していただいた人事部の方とは後に同じ部署へ配属になりまして、その当時の話をしたら「あの時は、かき集める必要があって大変だった」と。

ただ就職活動の最中は、姉から母の体調のこともあって、札幌へ帰ってきてほしいという要望がありました。ですから、私としては助かりました。

――行歴の中で、印象に残っている業務は。

安田 一番は拓銀から営業譲受をした際、店舗の統廃合にかかわりましたが、そこでの人の融合です。これができている店とそうでない店では、明らかに業績が違う。同じ業務を指す用語自体が違いますから、これを共通化するところからやりました。

――2007年に、当時常務だった島田俊平氏の抜擢を受け、不祥事が発覚した石屋製菓へ島田氏とともに出向されました。

安田 私が出向となったのは、石屋さんの担当支店の支店長だったからだと思いますが、創業家のみなさんをよく存じ上げていたということもあります。賞味期限の改ざんというコンプライアンス違反を受けての出向でしたが、私も法務コンプライアンス室を北洋内で立ち上げたことがあって、その経験も生かせるだろうと。

1年7カ月ほどの出向期間でしたが、あらためて銀行という組織の堅牢さを感じましたね。石屋さんも大きな企業ですが、当時はガバナンスが不足していたところもあった。今まで言われてこなかったようなルールを新たに設定するわけですから、従業員の方々にもご理解をいただく必要があります。そのあたりは苦労もありましたし、大変な仕事だったと実感しています。

石井頭取に続投を願い出ました

――50代での頭取就任、それも末席の常務取締役からトップへの飛び級ということになりました。

安田 年齢についての意識は正直ありません。メガバンクや上位地銀の頭取もほぼ同年代ですから。ただ率直に言って私たち役職員は、頭取交代が思いがけないタイミングでしたので、とにかく驚きました。

われわれは17年度に中期経営計画を策定して、今はその道半ば。金融情勢の変化も激しい中、それを乗り切る上で、役職員は全員が「石井純二頭取続投」を強く望んでいたはずです。

――石井氏は代表権を持たない会長に就任しました。

安田 会長が代表権を持たないのは、当行始まって以来だと思います。これは最近のコーポレートガバナンスの考え方を取り入れたものですが、当行の発表後、みずほフィナンシャルグループも会長が代表権を持たない人事をおこないました。

石井会長は09年に受けた1000億円の公的資金注入を、当初予定の24年3月期から大幅に前倒しして14年3月期に完済を果たしました。これは石井会長にしかできないことと思いましたので、私たちはもうしばらく続投をとお願い申し上げました。せめて、交代するにしても代表権を持った形で助けていただきたいと。その点では、頭取就任を躊躇したというのが正直な気持ちです。

ただ、当行には3000人以上の職員が勤めていますし、多くのお客さまがいらっしゃいます。すでに、腹を据えて取り組む覚悟はできています。

手数料収入増加と生産性向上に注力

――現在の金融情勢を踏まえた、基本的な方向性は。

安田 日本銀行総裁の黒田東彦氏が続投されますから、現在の金融政策は当面変わらないだろうと思います。企業としてどこで稼ぐかを考えた時に、現在の金利が変わらないうちは融資と預金の利ざやで稼ぐことは難しい状況です。

国策として、貯蓄から投資へという流れがありますから、そこで的確にニーズをとらえて手数料収入の増加を目指すのがまず1つ。それと、個人向けのローンについては、多重債務の誘発に注意した上で、お客さまの収入に合わせた利便性の高い商品を取り扱っていく必要があります。

われわれは法人顧客数や個人の口座数、カード会員数などについて圧倒的な強みを持っていますから、総合的なお取り引きをいただく中で手数料収入を得ることが重要だと思います。

――他行では、口座管理手数料の徴収を検討する動きもあります。

安田 一部、手数料の引き上げを発表させていただきましたが、そこは他行よりも低い水準であったものを、他行並みにさせていただいたということです。口座の管理手数料については現状では考えておりません。

それよりも、さらなるコストの削減について、できることがあると考えています。現在、業務プロセスの再設計を進めており、内部事務を4割ほど削減して集中させたり外部委託したりという実績があります。それをさらに進めて、生産性の向上を図ります。

――生産性向上は日本企業全般についての課題です。

安田 たとえばAIの導入は事務効率の向上に有効ですし、フィンテックは少ない人員で利便性の高いサービスを提供することにつながります。いずれ窓口業務の一部をAIにするといったことは考えられます。

全国の地銀7行で「TSUBASAアライアンス」という提携を組んでフィンテックの研究をしています。そこで得られた知見をもとに、どんどん取り組んでいきたいと思います。

――浮いた人員はどのように活用されますか。

安田 当行では資産運用や金融商品の相談を受ける「コンサルティングプラザ」を道内21カ所に設けていますが、そこに置く専門職は教育期間が相当かかる。人員を厚めに配置する必要があります。

また事業の強みや弱みを分析し、お客さまとともに課題共有・問題解決を図る「事業性評価」にも積極的に取り組まなければなりません。当然そういう部分にも人員を配置します。

――取引先企業への出向も人材活用の1つです。

安田 お客さまに対するお手伝いだけでなく、出向を経験した職員が、外部のノウハウを吸収して帰って来るのも出向のメリットです。出向職員の専門もシステム系の技術職や営業職など、多岐にわたっています。ご要望があれば、ぜひお手伝いをさせていただきます。

――地域密着型金融への取り組みについては。

安田 現在、各自治体でさまざまな地方創生への取り組みをされていますが、われわれの役割はそれを総合的な事業として価値を高めることができないか、ということ。お客さまのデータやその分析から、その活用方法を一緒に検討していく必要があると思います。

たとえば、15年から道内各地の道の駅を地域活性化の拠点として活用することを、北海道開発局などと連携して支援しています。その中でいま試行しているのが、道の駅を物流拠点に使えないかという試み。物流コストの削減につながることが期待されています。

また当行などが共同で開発した「ILO産業分析」は、自治体の税務データを活用し「インバウンド」「ローカル」「アウトバウンド」の3つに分類して特徴や傾向を分析します。こうした手法を活用しながら、各地域にある産業の成長戦略を立てるお手伝いをさせていただく。これも、地域密着型金融機関としての重要な役割だろうと思います。

――札幌市は26年の冬季五輪招致を目指しています。五輪開催に付随して、まちづくりの観点から市内での再開発の計画も多く検討されています。

安田 市内中心部の主な建物は、1972年の札幌五輪前後に建てられたもので、老朽化が進み、建て替えの時期に来ています。まちの賑わいや観光の面でもいい効果があるはずですので、資金面だけでなくさまざまな方法で参画、協力をしたいと考えています。

スポーツに関する支援については、特定の団体や競技への支援は今のところ考えておりません。当行の収益状況を考えると、やはり厳しい面もあるので。

ただ、昨年からお客さまが私募債をご利用される際に、その発行金額の0・2%相当額を、道内の障がい者スポーツ活動に取り組む団体などに寄付する「パラスポーツ応援債」を取り扱っています。20年東京五輪や札幌五輪に向けても、今後取り組みを進めます。

――2020年代を担う銀行マンとして、あるべき姿はどのようなものですか。

安田 われわれの中期経営計画では「北海道の新たな道標と価値の創造を担う銀行へ」と謳っています。お客さまの満足、地域貢献、従業員の満足で地銀ナンバーワンを目指します。お客さまに対してサービスを通じて、喜んでもらうことに職員がどれだけ情熱を燃やせるか。これが一番重要なことです。

=ききて/清水大輔=