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Interview

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「減税なくして行政改革は進まない」掲載号:2011年6月

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河村たかし 名古屋市長・減税日本代表

 増税で喜ぶのは役人と政治家だけ、苦しいときこそ減税だ―党是が減税の地域政党「減税日本」を率いる河村たかし名古屋市長。果たして減税の先には何があるのか。さらに家業化した議員のあり方、行政となれあう議会の現実を糾弾する。

財務省やマスコミがタレ流す嘘

――2月6日の愛知知事選、出直し名古屋市長選、同市議会解散の賛否を問う住民投票の「トリプル選」で圧勝、3月13日の名古屋市議選で「減税日本」は第1党の座を確保しました。4月10日の愛知県議選では一定の勢力を得たが、思うような結果ではなかった。
河村 名古屋市内では、ほとんど勝ちましたけどね。
――郡部が取れなかった。
河村 減税は人類の最も不変的な政策です。政治とは何かといったら、国王の増税に対する減税の歴史ですよ。減税こそが最も責任のある政策なんだけど、権力側が一番嫌がること。減税の勢力を広げるというのは、なかなか難しい。
――名古屋から減税の風を起こしていきたいと。
河村 2大政党というのは、どこの国でも減税対増税のせめぎ合いです。自然にできた政党であれば、必然的にそうなる。政党とは何かといったら、庶民の闘争がグループになって権力に立ち向かうということ。それは増税に対する減税です。日本の政党も「増税日本」対「減税日本」にしないといけない。形式的な2大政党で、政権交代すればよくなるなんて、そんなバカな話はあり得ないんです。
――日本にもようやく減税日本というまともな政党が出てきて、本来の2大政党制にしていきたいと。
河村 2大政党でなくてもいいんですが、日本中“増税大魔王”ばっかり。自民党もそうだし、民主党もいまやそうなってしまった。はっきり言えば社会主義ということです。
――河村さんの減税論は、いまの税制の中で言っているのか、税制そのものをもっと変えていこうということなのですか。
河村 もちろん、税制も変えないといけない。しかし、一番根底にある日本の間違いは、経済学者といわれる人もジャーナリズムもみんな、日本は財政危機で借金漬け、このままでは孫子の代に負担を残す、だからプライマリーバランスを回復しないといけない、増税やむなしという、経済学の不知というか無知にある。
――日本の国債のとらえ方を間違えていると。
i2河村 ギリシャの国債と同一視して財政危機だと言っていますが、それじゃ何で金利が安いんですか。経済学に貯蓄投資バランスというものがある。最初に出てきますよ。貯蓄イコール投資、ISバランスといわれます。預金は誰かに投資される。日本は預金の投資先がなくて、銀行にびっくりするほどお金が余っているんです。借り手がいないと銀行は潰れる。経済も萎縮する。じゃあ誰が借りるかというと国や地方。日本の国債や地方債はそういうお金で買われるんです。
金融統計を見てください。昨年の10-12月の第3四半期だけで、銀行には15兆円のお金が余っている。第3四半期だけで15兆円ですよ。4倍すると60兆円。いまの国債発行額は45兆円ですから、それでも15兆円余る。
この間の「TVタックル」という番組で、ある出演者が、地方は起債が多い、起債が多いって言うから、じゃあ銀行に聞いてこいと。民間の投資がない場合、地方債はあなたの預金の投資先ですよ。地方債の金利は低い。お金という商品の値段は金利なんです。金利が低いということは、お金が私を借りてくれと言っている。そんなときに起債を減らしたらどうなるか。銀行が困ってしまう。ただでさえ金余りなのに。どうするかというと全部国債にいくんです。
いまの最大の問題点は、財務省なりマスコミなどがタレ流す“地方の起債は悪だ”みたいなデマ。地方政府が起債しなくなると、その金は国債にいく。だから北海道の人の預金が道内で回らずに、いったん国に入ってしまう。そうなれば地方差別が出てくる。東京は豊かになり、地方はさらにお金が回らないから不景気になる。こういうデススパイラル下にあるわけです。いまこそ、貯蓄過剰の状況をはっきり言わないといけない。北海道で一番大きい銀行はどこですか。
――北洋銀行です。
河村 北海道庁や札幌市役所は、北洋銀行の金余りの状況をはっきり言って、堂々と起債して身近な公共事業をやるべきです。さらには中小企業の設備投資などを税制で応援する。そうやって地域でお金が回るようにする。
――みんな返せないと思っています。
河村 そんな起債だったら売れませんよ。金利だってとんでもなく上がっていく。だから、まったくの嘘なんです。もちろん、一番いい選択ではありません。ベストは民間で金が動くこと。しかし、借り手がないときには堂々と、できれば預金をした人がいるところで借りる人をつくらないといけない。

前名古屋市長の年収は2750万円

――いまは減税だと。
河村 不景気のときに減税しなくてどうしますか。商売が不振のときに値段を上げるバカはいません。値段を下げて倍働いて売り上げを増やす。当たり前のことです。再販維持制度を持つジャーナリズムも、そのへんの感覚が鈍い。自由競争がないから。新聞は記事が悪くなると言って値段を上げるでしょ。逆なんですよ。新聞は値段を下げないといけない。するとどうなるか。社内改革が起こって、ろくでもない社員が辞めざるを得ないようになる。そうすれば若くて、若干給料の安い優秀な記者が採れる。記事はよくなるんです。その論理がまったくわかっていない。社会主義ですよ。
減税せずにどうやって税金のムダ遣いをなくすんですか。そんな当たり前の話ですが、結局そういうことをやるために政治があるわけです。そして、税金で身分保障されている議員。これこそが、まさに社会主義ではないですか。何代も税金で食うから増税になる。まずは議員の非家業化です。税金の世界だけで食っていることが不安定で辞めざるを得ないというふうにしないと、政治は新しい提案をしないですよ。
――鋭い指摘です。
河村 それは日本が戦後、焼け野原になってしまった特殊事情で、GHQのマッカーサーがわざわざ国会法35条というとんでもない法律をつくったんです。国会議員はあらゆる一般職の国家公務員よりも少なくない給料を受ける。世界で日本にしかない条文です。ボランティアで議員になれと言っても、あのころは食うので精一杯で、なり手がいなかった。戦前の地方議員は名誉職だと地方自治法に書いてあったんですが、国会法の趣旨が地方でも踏襲された。ある時点でこの条文は変えるべきでした。
――いまや議員はニートやフリーターの就職先になっている感があります。
河村 こんないい仕事はないですよ。何の経験もない連中が突然出てきて、大した考えもなしに国家をどうするとか言っていればいいんだから。ボンボンばっかりじゃないですか。こんな国、日本しかないですよ。いまの国会議員もマスコミも、政権交代でいいわけです。政権交代は議員交代しないということだから。
市長だって、減税とか議員の市民並み給与とか、選挙による地域委員会とか、そんなことを言わなければ楽なもんですよ。この3つ、議会が否決したからしょうがないと言えば、それで終わりなんです。ほかの首長さんはみんなそうでしょう。いっぺんに仲よくなりますよ。両方で、たくさん給料もらって。ある評論家が「市長が議会を変えようとするのは独裁だ」と言った。これだって逆でしょう。いつも議会となれ合いでやりますよと、そちらのほうが市民に対する独裁です。
――市民税10%減税などをめぐって市議会と対立した昨年8月の場面ではリコールしかないと。
河村 あきらめるかリコールか。減税はやらないと言っていた対立候補に、私はほぼダブルスコアで勝った。減税は公約の1丁目1番地。私としてはやらなければいけない。しかし、それを議会が否決した。どうすりゃいいんですか。その問いに答える人がいない。考え方とすれば、議会が最高議決機関だから、あきらめますというのが1つ。
もう1つは解散です。衆議院であれば、そういう時は解散しないといけない。民主主義というのは、最後は解散して民意を問うんです。でも地方議会に解散はない。ただし、地方自治法76条に議会のリコールという条文がある。市民によるリコールです。普通はそんなことやらないですよ。ものすごい労力がかかるから。でも、名古屋市民はやった。織田信長を生んだ土地柄かどうか知りませんが、市民の反骨精神というか、正義感には敬意を表します。46万5000人もの署名が集まるなんて誰も思っていなかった。
議員や首長はボランティアでないといけないですよ。前の名古屋市長は年収2750万円、4年ごとに退職金が4220万円。世界中で知事や市長に退職金が出る国って日本だけですよ。だから私は廃止した。
私は市長就任後の議会で、市民並み給料ということで市長の年収800万円を提案。議会はこれだけは全員一致で認めました。何で800万円かというと、厚生労働省が出している平均給与の統計からです。日本国民と同じ給料になると、そんなに長くやろうと思わない。もともと贅沢はしないけど、一切蓄財もできない。蓄財どころか政治活動をしなければならないから大変です。寄付も集めますけど、そうそう集まらない。何でアメリカは寄付が集まるかというとボランティアだから。日本で集まらないのは当然ですよ。税金で身分保障されているんだから。前市長と私とでは、4年で1億2000万円も収入が違う。ある意味、私はこれだけ市民にお返しした。
外国の政治で立派なのは、議員の給料が市民並みだからですよ。長いことをよしとしないんです。よく議員をボランティアにしたら、ど素人ばかりが出てきてチェック機能を果たせないなどと言いますが、これだって逆です。ボランティアで出てくるのは専門家ばかりですよ。やる気がないと意味がない。そんな人は行政の言いなりにはなりません。

1兆5000億円上納する名古屋市

――首長も議会も住民から直接選ばれ、ともに民意を代表する「二元代表制」自体まやかしでしょうね。実際は裏で議会と行政が握手しているんですから。
河村 市民に対して、首長・議員連合で独裁政治をやっているわけです。両方でいい給料をもらって。首長もそれをわかっているから議会で否決されるような公約は出さない。これまでと同じにしようとすると増税になるわけです。議員と役人、一番大きい利害は増税ですから。税金が多いほうが利権も増える。
――いま名古屋市の借金はどれくらいですか。
河村 一般会計で1兆8500億円。政令指定都市で真ん中くらい。
――予算規模は。
河村 一般会計で1兆円。全会計で2兆6000億円。厳密に重複部分を消すと1兆6000億円くらいでしょうか。名古屋の市債は金利が低くても売れて売れて仕方ない。それは信用力があるということです。
みなさん誤解しているんです。地方というのは全額上納システムで、名古屋市は国税を1兆6000億円くらい納めている。逆に国からもらっているのは1000億円。そもそも1兆5000億円上納している。それが北海道や沖縄やイージス艦の修理代とかにいっているわけです。仮に1兆8500億円借金していたとしても、1兆5000億円上納しているんですよ。まったく問題ありません。そもそも大阪や名古屋が赤字会社だったら、日本なんか即刻潰れていますよ。

=ききて/鈴木正紀=